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第5話(累計・第86話) クーリャ78:ライフル銃を開発するわたし。 軍拡は大事なの!

「ゲッツ、ゴットホルトさん。頼んでいた物、出来ましたか?」


「ああ、クーリャ姫様。こっちに出来上がっているぞ。姫様が旋盤と鍛造ハンマーに、プレス機を作ってくれていたので、思ったより楽だっだな」


「ゲッツ。お前、こんな事を毎回やっていたんだな。羨ましいぞ」


 今日、わたしは先生、ダニエラ、エル君と一緒に工房へ顔を出した。

 2人のドワーフ鍛冶師に、わたしはある武器の試作を頼んでいたからだ。


 …… もちろん警護と身の回り要員としてマスカー、カティ、アデーレさんも一緒なの!


「あら、まだまだですわよ、ゴットホルトさん。本当ならコレを沢山量産して欲しいのですから、将来的には型を押し付ける大型プレス機も作りますの」


 まだ蒸気機関も、わたくしが世界初になるべく開発中のこの世界。

 しかし、わたしは皆の協力で魔力モーターという動力を手に入れた。

 なれば、いろんなものを早く形にしていくべし。


「クーリャ、これは銃だよな? でも、今更じゃないか? 確かに魔法を使わなくても弓より威力のある攻撃ができるけど、単発じゃそれまでだよな」


「ダニエラちゃん。そこはクーリャちゃんだもん。普通の銃じゃないよね?」


「はい、これはライフル・ボルトアクション連発銃の試作品ですの。ゲッツ、試し撃ちはしましたか?」


 今回、作ってもらったのが後装填・薬莢式の銃。

 アタシの世界で標準的なライフル銃のコピー品だ。


 ……遊底(ボルト)の仕組み、趣味で覚えていたけど、何が役に立つのか本当に分からないの。前世世界だとモシン・ナガン風ね。


「ああ。俺の腕でもちゃんと、あそこの的に当たったぞ、姫様。しかし、この薬莢ってのは面白いな。これで、いちいち銃口から弾込めなくても撃てるのは良いし、7発も続けて撃てるぞ」


「薬莢が加工がしやすい真鍮製ってのも納得だ。そういえば、銃身の中にらせんを刻むってのは、どういう意味なのかい、クーリャ姫様? 思ったよりもまっすぐ弾が飛ぶのは驚いたけどな」


「でしたら、成功ですわね。ライフリングを刻んだのは、ジャイロ効果で弾を真っ直ぐ飛ばす為ですの、ゴットホルトさん。では、今回作ったのを標準サイズとしましょう。これから作る銃の規格は、これに決めます。量産の暁には、領内兵士の標準武器にしますの!」


 今回作ったのは、口径が大体7ミリメートルくらいの銃。

 弾丸は、今までの先込め銃の丸い弾じゃなくて椎の実型、そう「アタシ」の世界での銃弾の形をしている。

 そして旋盤器を使って、銃身にらせん、ライフリングを刻んだ。

 ちなみに給弾はクリップ式、まだ弾倉方式は研究中だ


 ……幕末ドラマでも使われたスペンサー銃と米軍M1ライフルの合体かな?


 わたし達は、実際にゲッツが射撃するのを見た。

 ぱぁぁんという軽い音で弾が飛び、30メートルは離れた的の中央に着弾する。


 ……火薬をコルダイトにしておいて正解ね。口径大きくないけど、威力抜群なの! あと、雷酸水銀による雷管が上手くできたの!


「え! 7発も連続して撃てて、あんな遠くの的にゲッツで当てられるの? それに、これを量産って?? クーリャ、アンタは戦争する気!?」


「いえ、わたくしは戦争は嫌いですの。この銃を使うのは、わたくしの愛する人々を傷つけるモノを倒すため。向こうから攻めてこない限りは、誰も撃ちませんですわ」


「それで安心したよ。ボクの国の戦乱を止めてくれるって話だけど、これでどんどん撃たれたら皆死んじゃうもん」


 わたしは、エル君の国の戦乱を止めると決めた。

 そして、それを実行する為に武力を欲した。


「そこは大丈夫ですの。まずはお話合い。そのあとは武力を見せつけてからの威圧。実力行使は最終手段ですの。力なき正義は無力ですからね。第一、わたくしは人を殺しに行くつもりは全くありません、助けに行くのですから」


 ……じゃあ、次はアレね。今回は間に合わないけど、将来にはアレを車載銃にしちゃおう。


 わたしは、今後開発する秘密兵器を想像する。


「では、ゲッツ、ゴットホルトさん。同じ銃を3つ程お願いします。薬莢も300個はお願いしますね。完成次第、先生、マスカーには射撃練習してもらいます。わたくしは、重くて持てないですから、テストゥード号に車載したのを練習しますね」


「クーリャ、アタイは辞めておくね。ちょっと怖くなったもん」


「ボクも辞めておくよ。この身体じゃ銃が重すぎて持てないや」


「クーリャ姫様の命とあれば、わたくし頑張ります。この銃なら、先日のイゴーリなぞも遠くから倒せますし」


「私は騎士ではありますが、姫様の命ですので銃も使えるようになります」


 ダニエラとエル君は遠慮したけれども、先生とマスカーはやる気満々。

 その後は、皆で代わる代わる銃を撃つ練習をした。


 ……わたし、絶対にどんな相手でも科学チートで勝つの!


  ◆ ◇ ◆ ◇


 森林の中に立てられた豪華な屋敷の中。

 壮年に見えるエルフが、息子からの手紙を見ながら呟く。


「エルロンド、今度は只人族の男爵令嬢と仲良くなったのか。お前は本当に友達作りが上手だな。父さんは、なかなかそんな風にできないよ」


 自虐気味に呟く大公、エルウェ・マイアール。

 現在、彼が治める西方フレイヤ・ヴァナヘイム大公国では、国内が2派閥に分かれ、争いが起こっている。

 一つは、同じエルフ族が治める東方フレイヤ・ヴァナヘイム・精霊王国との合流を目指す一派。

 そして、もうひとつが大公も参加する周囲の異種族国家との友好を重視する一派。


「同じエルフ族でも、古代よりのハイエルフの血が濃い者たちと一般のエルフでは寿命が大きく違う。これが異種族なら、尚更。古来からの考えに固執するのもしょうがあるまいて」


 いつまでも首脳部が変わらないのに我慢ならなくなった精霊王国内の改革派が、ロマノヴィッチ王国などの助けを借りて建国したのが大公国。

 しかし、大公国でも首脳部が建国以来、ずっと長期間政権を行うのは長寿なエルフ族なら当然。

 再び不平感が国内に広まり、逆に本家精霊王国との合併話も生まれている。


「更に昨今は純粋なエルフの出生率も下がっている。このままではハイエルフの血を継ぐ者も絶えよう」


 大公自身、建国時からずっと大公である。

 彼は、ハイエルフの血を濃く遺伝しており、壮年期ではあるが既に五百年を現世で過ごしている。


 古代、神話の時代から生きる者すら存在するハイエルフ。

 しかし、その千年を楽に超える長寿ゆえに繁殖力は低い。

 数年に一度の繁殖期以外は、妊娠が起きない。

 そして通常のエルフ、寿命が五百年を超えるものであっても、年一回程度の繁殖期以外の妊娠は困難。


 現在、純粋なエルフの国民は増加もしないが、ハーフエルフやクォーターエルフの国民が徐々に増えつつある。

 繁殖力が強く、力に長けた只人族とのハーフであれば、只人のように年中繁殖期である。

 もちろん寿命はハーフでは約半分の三百年程度、クオーターとなれば二百年程にはなってしまう。


「エルフの血にこだわるつもりはないが、寿命が大きく違う者が増えれば、政治が難しくなるな。それこそ、エルフ国分裂再びだ」


 どうすれば、国内を纏められるのか、大公は悩む。


「エルロンドみたいに、誰とも友達になってしまえば楽なのかもな」


 かつて、共に戦った英雄王やドワーフの戦士ら、仲間達を思う大公。

 彼らの大半が鬼籍に入り、幾百年。


 残る身内や友は、ただ三人。

 今はロマノヴィッチ王国の魔法学院に居るハイエルフと、魔族帝国の魔族皇帝夫妻。

 エルウェは、どんどん世界に残されてゆく寂しさを味わっていた。


「長期政権は、施政者がちゃんとしておれば安定するが、ワガママな独裁者が上に立てばあっという間に国内が荒れ、粛清の嵐が吹き荒れるのじゃ」


 古来より現実社会でもよく見られる事案ですね。

 こと、王政や大統領、党委員長などが独裁を行って破滅へと進むのは、歴史が証明しています。


「何が良いのか、政治は難しいのじゃ。ベストを選ぶのは困難、ベターを選ぶしかないのじゃ。選挙もそうじゃな」


 ええ、チエちゃん。

 民主立憲政治も完璧では無いですが、まだマシな部類。

 国民が賢い選択をすれば、よりよいものになる筈です。


「作者殿は公僕じゃから、うかつな政治発言は出来ぬのじゃな。まあ政治に関心を持つのは大事なのじゃ!」


 では、皆様。

 賢い選択をしましょうね。

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