第4話(累計・第85話) クーリャ77:わたし、自分の国の発祥を聞く。実に興味深いの!
「とりあえず、今はエルフの国に攻め入る為にも富国強兵なの!」
わたしは今、新たなる物を作るのに挑戦をしている。
昨晩、エルフの国で発生している動乱についての話をエル君に聞いた。
今後の国の方針を決めるうえで、同じエルフの国と協力を考える派閥、ウチの国、ロマノヴィッチ王国やドワーフ王国など他種族国家と協力する派閥の争いだとか。
……結局、軍事力も政治を行う上での力。力なき正義は、何もできやしないのね。
わたし個人は争いは大嫌いだけれども、自分や愛する人々を守るための力を持つ事は否定しない。
第一、最終的にわたしは、アントニーが操るゴーレムの軍勢と戦う運命にある。
なれば、圧倒的な軍事力で相手を叩き潰す、もしくは威力を見せつける事で抑止力とする。
「クーリャ、アタイ政治とか難しい事はわかんないけど、どうして皆仲良くできないのかなぁ」
「それは、わたくしも思いますの。共存共栄できるなら争う必要はありませんし、話し合えるなら尚更です。しかし、同じ経済的概念を持つ種族同士がぶつかり合えば、争いは発生します。誰も豊かな土地で楽して生きたいですものね。こと、寿命が大きく違うエルフ族と只人族では、考える事のペースが全く違うことでしょうし、お互いの『違い』を許容できない事が不幸の始まりですの」
ダニエラが、わたしの作業を横から見ながらぼそりと呟く。
それにわたしは、今思うことを話した。
「ボクも争いは嫌いだよ。ここの人達は皆は心がきれいでとっても過ごしやすいね。本国では、派閥争いが盛んでいやになるもん。あ、痛いよぉ!」
「真剣な話をしながら、さりげなくアタイに触るエルが悪いんだよ。まったく、この凸凹の薄い幼女相手に触って何が楽しいんだろうねぇ」
真面目な話をする時でも、セクハラしちゃうエル君。
彼が、場の空気とかいうものを理解するのは、いつの日だろうか?
ハイエルフの血が濃いエル君であれば、成人になるのはまだまだ100年は先であろう。
「そこが、考え方の違いですの、ダニエラ。エル君は、豊満な女性よりも、わ、わ、わたくしやダニエラのような『つるぺた』体形がお好み。個人的趣味はひとぞれぞれ。エル君や学院長先生みたいにセクハラしなきゃ、内心でどう思っていても良いのです」
……自分で言ってて恥ずかしいのぉ。わたし、前世含めて性的な好意って向けられたこと一度も無いもん!
「思うのは良いんだ、クーリャちゃん。じゃあ、頭の中で存分に楽しむね。あ、痛いよぉ!」
「その、嫌らしい眼は辞めて下さいませ。こういうのは、こそっと見て楽しむのです!」
懲りないエル君には、蹴りを入れるわたし達。
もはや、お約束になりつつあるのは、どうかと思う。
……わたしもBLとかロリコンの存在は、理解はするよ。好みはしないけどね。
「という風に相手に自分の考えを押し付けるのは問題ありですの、ダニエラ。もちろん世間一般の法や風紀は守るべきですけれども」
「よーく分かったよ、クーリャ。しかし、本当にクーリャは賢いんだねぇ。アタイ、もっと勉強させてもらうね」
わたしは、ダニエラにエル君を例にして説明する。
もしかしたら、エル君は分かっていて、ワザとこんな行動をしているのかもしれない。
喜んでダニエラに蹴られているエル君をみて、ふとそう思った。
……マゾっ気があるのは間違いないと思うけどね。
◆ ◇ ◆ ◇
「では、恥ずかしい事ですが我が国、西方フレイヤ・ヴァナヘイム大公国の発祥からお話致します」
昨晩、エル君の口から、エルフの国について説明がなされた。
超古代、元々私の住むここ、ロマノヴィッチ王国はエルフが住まう地だった。
その時代、只人族はまだ魔法を持たず、南方大陸と東方や北方で他種族との生存競争の中で小さな集落を作り生きていたらしい。
そんな折、東の大陸の端で立ち上がる只人、征服王が誕生した。
彼は、西の海が見たいと大陸を西へと武力進行、エルフ族が住まう地域も戦場と化した。
魔法力は強いものの、体格上武芸には弓術以外向かないエルフ族。
個別に戦うのでは、集団戦と馬術による機動戦を得意とする只人に勝てないと判断したエルフ達は、集団を作り対抗した。
そして征服王の進行を押しとどめ、征服王が寿命で亡くなるまでしのぎ切った。
……このあたりの設定はモンゴル帝国の真似だよね。お姉ちゃん設定借りるの好きだもん。
「この時に集団の長になったものが精霊王を名乗り、只人が作る国家というものを真似て作ったのが、フレイヤ・ヴァナヘイム・精霊王国です」
精霊王国は、現在のロマノヴィッチ王国より西方から、東は征服王の子孫が作った国、大匈奴帝国国境付近まで広がった。
国内には、戦乱を逃れてきた只人ら他種族も住み、最初の内は問題も起きなかった。
「しかし、一向に首脳部が代替わりしない政治形態に不満を持つ者が生じました。これが、エルフ族独特の長寿による問題です」
国家の維持システムは、基本只人が行う様に作られている。
つまり、ある程度の年月で上が引退して代替わりする。
しかし、寿命が数百年単位、神の時代から生きているハイエルフともなれば千年を超え、寿命がないとも言えるものが永遠に上に居れば、利権や権力はずっと同じ人が扱う事になる。
たとえ、只人よりも穏やかで善人が多いエルフ族でも、権力に溺れ私利私欲に走る愚か者が出てくる事にもなる。
「そして、クーデターが発生しました。しかし、改革を願う者たちは少数派、あっというまに追い詰められました。そんな時、彼らに味方をしてくれたのが只人の英雄。後のロマノヴィッチ王国初代王でした」
初代王様は、エルフ、ドワーフ、獣族、魔族、その他言葉を話す人型生物全部を一切差別せず、優秀な人材を集め、そして彼らを指揮して先頭で戦った。
その力は強く、精霊王も被害増大を嫌って停戦・和平に動いた。
そして、今のロマノヴィッチ王国が生まれた。
また、その時一緒に戦ったドワーフ族は北の山岳地帯に、魔族は更に北方の魔大陸とよばれる大きな島に国家を作った。
寿命が大きく違う種族が同じ国家に住むよりは、別の国家を作り友好関係を結んだ方が良いとの判断だったのだろう。
その際、王国の西方にある大きな森林地帯内に改革派エルフの国が生まれた。
改革派の旗頭が大公を名乗り作られた国が、西方フレイヤ・ヴァナヘイム大公国。
残るエルフの国は、東方フレイヤ・ヴァナヘイム精霊王国と国名を改め、大匈奴帝国の北西、森林山岳地帯を領土とした。
……確か、お母様の先祖の国が、この後に王国と帝国の境目、山岳地帯に建国されたんだよね。後に帝国に攻め滅ぼされたけど。
「つまり、ボクの母国が生まれたのは、こちらの国の初代王様の協力があったからなんだよ」
……一応、わたしも『ゲーム』設定の一部を作るのに協力したけど、近所の国が皆、只人族の言葉を話せるのも、こういう理由だったのね。お姉ちゃん、案外と考えていたんだ。
「今回は設定話じゃな。こういう国家話は、興味深いのじゃ。作者殿も、いっぱい勉強したのじゃろ?」
ええ、チエちゃん。
ローマ帝国の分裂や最後とか、モンゴル帝国の起り、西洋国家の隆盛を学びました。
「この設定、ちゃんと覚えておくのじゃぞ。地図も簡単なのを作っておくと、後から矛盾が起きないのじゃ!」
はい、参考にしますね。
では、明日の更新をお楽しみに!




