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第7話 クーリャ5:涙ながらの説得、未来への一歩!


「それと時間が無いのは、どう繋がるのですか?」


「前世の『アタシ』の姉は、ある物語を作っていました。そこには多くの人々が生きていて、その中にわたくし、クーリャがいましたの」


 わたしは、バージョヴァ先生の問いに答える。

 一番信じてもらえないだろう「真実」を。


「それはどういう事なのですか? ただの偶然では、ありませんか?」


「いえ、その物語、『ゲーム』は世界の端々まで作られていて、その中には先生やカティもいました。もちろんお父様もお母様達も……」


 先生は、信じられないという顔付きをしている。

 カティに到れば、何がなにやらという表情だ。


「それでは、わたくし達は物語の中の登場人物なのですか?」


「ある意味では、そうですわ。でもわたくし達は、この世界で生きています。ですから、この世界がどう作られたなんかは、あまり意味がありませんわ。卵が先か、鶏が先かと同じです。なぜなら、既にわたくしは『姉』の作ったシナリオから離れて動き出していますもの!」


 何処の世界にも創造主は存在する。

 アタシの世界だってビックバンの前に神様が居てもおかしくないし、多くの物理法則が世界の意味を示している。


 ……わたしの住む世界の創造主がお姉ちゃんなだけだものね。そしてアタシは、お姉ちゃんのシナリオどおりになんて進んであげないの!


「世界は神の手から離れたという意味ですか? 世界の創造主は、それ以降この世界に関与していないとでも?」


「姉が創造主であるのなら、大きくはその通りだと思います。配役と世界背景、今後の自然現象までは作られていましたが、中の人物が世界の意味を知ることは想定していませんでしたから」


 各キャラのフラグ次第で様々なシナリオに分岐するように「乙女革命戦記」は作られていたけど、そこにゲームシナリオを知っていたキャラは誰も居ない。

 そういう意味で、この先の運命を知るわたしは「異端」なのだ。


「では、姫様はこの先に起こる事をご存知になって、時間が無いと焦られたと?」


「はい。流石は先生、その通りです。誰が行うかはまだ言えませんが、約5年後にわたくし達は領地全体ごと貴族内の内乱に巻き込まれ、領内大半の方々は軍勢によって無残に殺されます。そしてただ1人生き延びたわたくしは、復讐鬼になって国を荒らす存在、悪役令嬢になるのです」


 ……今、アントニーの名前を出したら、先生は無理してでも暗殺に行きかねないもの。それではフラグ回収が難しくなるので却下ですわ。


「ま、まあ! では、坊ちゃまもマクシミリアン様も奥様も……」


「ええ、先生やカティも、誰も彼も……。わたくしはそれを、そんなバカな運命を阻止したいのです。幸いな事にわたくしは前世の記憶で、この先に起こる事件を全て知っています。それを先回り、フラグつぶしをし、力を付け、仲間を増やして皆で幸せになりたいんです!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


 姫様は泣きながら、でも力強く叫ぶ。

 「皆を救う」のだと。

 その黒檀(エボニー)な瞳には、悲しみと強い意志が見える。


 ……姫様、クーリャ様は本気だわ。わたくし(ナターリャ)達を襲う悲劇から皆を守りたい、その一心なのね。だから、信じてもらえないような話を怖がりながらも、わたくしに話してくださったのですね。


「わかりましたわ、クーリャ様。貴方様は本気でわたくし達を守りたいのですね。ですから、信じてもらえない荒唐無稽な事でも本当の事を話してくださったと」


「ひめざまぁぁぁぁ! アタシ達を守るって……!」


 メイドのカティは大泣きして、姫様に抱きつく。


「はいはい、カティ。貴方達はわたくしの大事な人たち。ぜーったいに皆をわたくしが守りますの!」


 自分よりも大きなカティを、涙を流しながらも背伸びしてヨシヨシと慰める姫様。

 その様子は、まるで幼子を慰める姉のように見えた。


「先生。ですから、わたくしは、もっと知識が欲しいのです。『アタシ』の記憶には世界を滅ぼせる力すらありますが、今のわたくしでは知識はあっても、それを形にする事は出来ません。それに実際に戦うことになる皆様をお助けするのも力不足です」


 そして姫様は涙をこらえ、わたくしに対して王族へするような礼をする。


「先生、わたくしの話す事は妄想や戯言と思って下さってもかまいません。ですが、是非ともわたくしにお力をお貸し下さいませ」


「姫様、お顔をお上げ下さい。わたくしのようなガヴァネス(女家庭教師)相手にする礼ではございませんわ。元々わたくしは姫様の教育係としてマクシミリアン様に雇われております。ですから、姫様が求める知識をお教えするのは、元よりの仕事。これからも姫様の教師として御仕えさせて頂きますわ」


 わたくしは、姫様に微笑んで礼を返した。


「せ、せんせー!」


 すると姫様は、わたくしに飛びかかる勢いで抱きついてきた。


「あ、ありがと――!! うわぁぁん」


 そして大きな声で再び泣き出した。


「怖かったし、苦しかったのですよね。本当の事を誰にも言えなくて。大丈夫ですわ。これからはわたくしが、姫様をお助けします」


 わたくしは、姫様の背中を撫でながら慰める。

 その小さな身体は、とても震えていた。


 ……この小さな身体で、どうしたら皆を守れるのか悩まれていたのですね。さあ、これからが大変ですわ。まずは、マクシミリアン様辺りをどう誤魔化すかですわね。姫様の知識、恐るべしですもの。


 わたくしは不幸な未来を知ったはずなのに、どこか楽しく思えた。

 この泣き虫で暴走癖があるけれど、とても優しい幼き主が巻き起こす事が絶対に面白いに決まっているからだ。


「では、まずは姫様。泣くのを終わらせましょうか。そうしないと、後からマクシミリアン様や奥様に言い訳できませんものね。目元が腫れそうになってますわ」

「まずは、第一歩。クーリャ殿は、味方を増やしたのじゃ! さあ、これからがクーリャ殿のターンじゃな。まずは内政じゃな?」


 流石は戦略家のチエちゃん。

 内政をして自らの足元を固めるのは、戦略ゲームでは基本。

 農地を肥やし、食糧生産量を増やす。


「次は情報媒体としての植物紙の量産や冶金じゃな。情報保存は勝利への一歩なのじゃ! そして金属加工は、今後の工業化に大事なのじゃ!」


 本好きの下剋上でマインちゃんが本の元になる紙生産に苦労してましたし、Dr.STONEの千空くんも紙生産とか金属加工に力を入れてました。

 内政ターンでどこまで自力を増やせるか。

 そこが勝利への一歩です!


「さて、作者殿なら千空殿の様に科学の力で話を進めると思うが、どうするのじゃ?」


 そこは、明日以降をお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここで先生を味方につけることが出来て良かった!! これから5年かけて、領地をどう成長させていくかという楽しみもある作品だなと思います(*'ω'*)
[一言] てっきり物語云々を証明するのに登場人しか知らない過去の話とかして信じさせるものだと思ってたけど、案外あっさりと受け入れられるんですね
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