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第16話(累計・第55話) クーリャ48:王様が心配なダニエラ様、そして空気を読まないエルロンド君!

「アタイ、お父ちゃんの事が心配でならないのに、お姉ちゃんやお母ちゃんは離宮から出してくれないんだ。王女らしくないアタイが反省するまでダメだって」


「その上、王族内で相続争いもあるとの事。そこでボクはダニエラちゃんを虐めたらエルフ王に言いつけるって言ったら、父上にも怒られて、しばらく頭を冷やせって言われて、同じく幽閉中。でも、ボクがいたらダニエラちゃんは飽きないだろうし、命の危険性も低いと思うんだ。お! このゼリーって美味しいね、クーリャちゃん」


 わたしは、ダニエラ様とようやく会えた。

 今は、彼女が幽閉中の離宮に来て、ゼリーをご馳走している。


 ……ダニエラ様の話はまあ分かるけど、エル君の行動は意味不明なの。ダニエラ様に惚れたんだと思うけど、この世界のドワーフ族とエルフ族って混血可能だったっけ? どっちも只人族とは混血可能だったけど。


 行動力がありすぎるエル君のおかげで、ダニエラ様の危険性が低くなったのは確かだけど、何か納得できない。

 わたしが言うのも何だが、エル君の行動力は少し落ち着いて欲しい。


 ……『ゲーム』でも変な事に首突っ込みすぎて、毎回わたしやダニエラ様、カトリーヌ様に助けを求めるのが毎度のパターンだったっけ。妙にわたしやダニエラ様にくっつこうとしてたんだよね。


「もっとボクに力があれば、美しい我が女神、ダニエラちゃんをここから救うことも可能なのに……。僕には美しい顔と豊富な魔力しか取り柄がないですから……。あ! 痛い! 蹴らないで、ダニエラちゃん!」


「おい、エル。アタイは、アンタとどつき漫才しているんじゃねぇ。全くこいつは……」


 頬を染めてエル君を蹴るダニエラ様。

 このコンビ、ゲームでもこんな感じだったが、幼いころでも同じなのは、微笑ましい……のか?


「と、とりあえず、ダニエラ様。今はわたくしにお話をして下さいませんか?」


「クーリャ、アタイの事も呼び捨てにしていいぜ。アンタの事はずっと気になっていたんだ。ゲッツ、オマエが魔法銀(ミスリル)の鎧を切れる剣を作ったらしいけど、どうやったんだ? ゴットホルトも知らない方法だとしたら、どこからその方法を手に入れたのかい? アタイ、クーリャが知っていたって思うんだけど?」


「ダニエラ様、あの刀は俺が一人で考えたものです。クーリャ姫様には出資をしてもらっただけです!」


 ゲッツは、わたしを庇う様に話すも、


「ゴットホルトから喧嘩別れして逃げるゲッツには無理だろ? 最近、男爵領で新事業が急に始まりすぎてる。剣の事と言い、それは不自然なんだよ」


 と、ダニエラ様は簡単に嘘を見破る。


 ……う! この子、見た目は野生児っぽい女の子だけど、案外切れ者なのかもぉ。


「ど、どうしてそう思われるのですか、ダニエラ様?」


「だ・か・ら、様はいらねーって。友達どーしに『様』なんて不要じゃねぇか? 言えない事情でもあるのかい? なら、事情なんて聞かねぇ。その代わり、アタイにも色々教えて欲しいんだ。このゼリーとかも、クーリャが考えたのかい?」


 わたしに、ぐいぐいと迫るダニエラ様。


 ……そういえば、ダニエラ様とは『ゲーム』では技術談義で盛り上がって、周囲をヒカせたよね。小っちゃくてもダニエラ様はダニエラ様だね。


 わたしは、大きく息を吸って勝負に出た。


「はぁ。わかりましたの、ダニエラ。これはナイショですが、わたくし、ある所から技術知識を得ています。なので、ダニエラが知りたいことは大抵分かると思いますよ」


「クーリャ姫様! お口を……」


 先生がわたしの発言を止めようとするも、わたしは首を振る。


「先生。こちらが真実を言わない限り、相手も真実を言いません。ドワーフ王やダニエラを救うには、こちらから誠意を見せて信用してもらうのも必要ですわ」


「ほ、ホント? じゃあ、お父ちゃんがどうして倒れたのか、分かるの、クーリャ? アタイ、お父ちゃんが心配でたまらないんだ。クーリャは、お父ちゃんを助けに来てくれたの?」


「ええ、そのつもりで来てます。もちろんダニエラ、エル君もね」


 わたしはウインクをして、2人の「ともだち」に合図を送る。

 「大丈夫だよ」って。


「クーリャ、お父ちゃんを助けてよ。お父ちゃんが元気になったら、きょうだい同士で喧嘩しなくてもいいよね。王様の奪い合いで家族で殺し合いなんてアタイ、嫌だよぉ」


 涙をぼろぼろと零すダニエラ。

 今まで辛抱していたのが、こらえきれなくなったのだろう。


「大丈夫ですの。絶対に皆助けます。わたくし、クーリャにお任せ下さいませ」


 わたしは、泣き止まないダニエラをそっと抱いた。


「あー、いいなぁ、可愛い女の子同士の抱擁なんて。ボクもダニエラちゃんやクーリャちゃんをダッコしたいよ」


 残念なエル君には、わたしもひとつ蹴りをかました。


「痛いよ! クーリャちゃんまでボクを蹴らないでぇ!」


 ……空気を読まないエル君が全て悪いの!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ダニエラ、あなたはどうしてお兄様やお姉さまが王様の心配をしていないって思うの?」


「あのね、アタイ城を抜け出してゴットホルトの所に遊びに行ってたよね? その時、下働きが使っている通用門からそっと出ているんだけど、そこで聞いたんだ。お兄ちゃん達が相続争いでお父ちゃんやお兄ちゃん達の間で毒を盛っているって。で、気になってお父ちゃんの部屋にこっそり行ったら、只人のローブ着た怪しい人が変な薬を作っていたの。赤い砂みたいなのを炎にくべて銀色の変な薬を作って、それを煎じてお父ちゃんに飲ませていたんだ」


 ……え! 赤い砂に銀色の液体って!


「怖くなったアタイは、薬師をお姉ちゃんが雇っているって聞いてたから、お姉ちゃんに文句言いに行ったんだ。そしたら、凄く怒ってお母ちゃんにも言いつけられて、今まで城を抜け出していた罰も兼ねてここに放り込まれたの」


「なんと! 辰砂(しんしゃ)なのかや? 確かに中国古代では不老不死の妙薬や漢方薬として、西洋でも『賢者の石』として使われており、近代まで薬扱いじゃったが、猛毒なのじゃ! 重金属障害がドワーフ王の体調不良の原因なのかや?」


 チエちゃん、先にネタばらしはご勘弁を。

 意図的な毒としての使用なのか、薬としての使用なのか。

 明日以降のお話を待ってくださいませ。


「了解したのじゃ。では、皆の衆。ブックマークをして待つのじゃ!」


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