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第12話(累計・第51話) クーリャ44:仲間たちに生暖かい目で見られるわたし! しょうがないもん、わたしなんだから。

 わたし達は、鍛冶場から応接間に移動し、ゴットホルトさんにわたしの事情を説明した。


「つまり、ゲッツ。お前はクーリャ姫様の知識で、この『日本刀』とやらを作った。そして姫様の記憶は、こことは別の異世界での科学知識だというのか?」


「ああ、師匠。でも、これは知られると姫様が危なくなる知識なんだ。頼む、ダニエラ様は絶対救うから、姫様の秘密は……」


 ゲッツからの説明でゴットホルトさんは、あきれ顔をしつつも納得した様子。

 自分が授けた知識では日本刀を作れないのを、薄々は気が付いていたのだろうが、そこでわたしの一言がダメ押しになったらしい。


「そこは分かっている、絶対誰にも言わない。こっちとしてはダニエラ様を助けられる確率が上がったんだから、言うことなしさ。なるほど、この凄い剣なら魔法銀(ミスリル)を切れるのも納得だ。クーリャ姫様、あんたはすごいな」


「そうでもないですわ。わたくしにあるのは知識のみ。それを実現化したゲッツが凄いのです」


 マスカーから借りた日本刀を抜いて、その刃紋をじっくり見ているゴットホルトさん。


 ……わたしの指示で日本刀をしょうがなく渡したマスカー。ゴットホルトさんから一切眼を離さないの。まあ、武器が無いのだから心配しちゃうのもしょうがないよね。


 信用させるためにもと、わたしは見本としてゴットホルトさんにマスカーの剣を渡した。

 その懐あってか、ゴットホルトさんがわたしを見る目が先ほどよりも更に優しく、そして強くなる。


「ありがとう、クーリャ姫様。敵になるかもしれない相手に剣を預けるなんて、良い度胸だよ。良いものを見せてもらった。俺にも同じものを作れるかい?」


「そうですわね。基本的な事はゲッツに授けていますし、細かい工夫とかはゲッツの方が詳しいので、ゲッツにお聞きしたら可能だと思いますの」


 マスカーに日本刀を返して、わたしに質問をするゴットホルトさん。

 彼も一流の技術者、より凄いものを探求する修行者なのだ。


「では、わたくし達からのゴットホルトさんへの報酬は、わたくしが持つ製鉄等の技術。代わりにドワーフ王国内での情報収集、及び各種金属をわたくしへ送ってくださいませ。金属は、適正価格で買いますの!」


「その提案、乗った! ダニエラ様の件を抜きにして、今後ともひいきに頼む、クーリャ姫様」


「はぁ。結局、俺はまた師匠に追い越されるんだなぁ」


 日本刀制作で師匠を超えたと思ったゲッツ。

 ため息をしてしまうのは、少し可愛そうに思えた。


「何言ってんだ! お前は他にも姫様の知識で何か作っているんだろ? そっちの方がうらやましいぜ。ゲッツ、これからは師匠と弟子じゃない。ライバル同士、競い合おうじゃねぇか!」


 新たな知識を手に入れられると、まるで少年のように嬉しそうなゴットホルトさんだった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「もう姫様ったら。相手がゲッツさんの師匠で、今回の依頼者だったから大丈夫でしたが、くれぐれも情報の開示方法にはご注意くださいませ。凄腕の方なら姫様の一言で分かりますよ」


「ごめんなさい、先生。今後は、気を付けますぅ」


 わたしは城に帰って先生からお小言を頂いている。


 ……わたしの一言が悪いから、言い逃れもしないの。


「まあ、結果オーライにしておきます。こちらですが、先ほどイポリトさんのところの方が来て、封書を持ってきましたわ」


「では、中身を見ますね。え! これは助かりますの!」


 封書内には、ドワーフ王家の家系図、それぞれの派閥、そして城内の大体の見取り図が入っていた。


「凄い情報ですね。この短時間でここまで纏めてくれるなんて……」


「ああ、俺も知らない王家の話も多いな。これで有利に話を進められそうだな」


「アタシが聞いてきたことも一致しますの。後、離宮に調理場からお菓子を持って行く方が居たから、そこにダニエラ様がいると思うの」


 なんと、早速カティが大金星を取った様だ。


「カティ、もちろん持って行った場所は分かりますのね」


「ええ、姫様。最近、アタシも隠密技能増やしたもん。お菓子を運ぶキャリアーの後そっと付いて行って、離宮の警備門まで確認しましたぁ。地図だと、このあたりですぅ」


 カティは、植物紙に書かれた地図の一部を示す。


 ……この紙、ウチの製品よね。イポリトさん、分かっているの!


「では、これでダニエラ様を救出することも可能になりましたわ。しかし、ダニエラ様だけを救ってもその場限り。ドワーフ王国の騒乱は止まらない。いえ、最悪加速するかもしれません。外国からの介入があったと分かれば、より排他的になるかもしれませんですの。ダニエラ様には直接お会いしたいですが、まずは王妃様との今晩の晩さん会が勝負ですわ」


「ですわね、姫様。では、王妃様がお話そうな事に対しての回答集、既に作ってますので、姫様は眼をお通しください」


 わたしが立てた作戦に対する必要な仕事、それを先生は準備してくれていた。


「先生。これこそ、……」


「『こんなこともあろうかと』……でしたわね。姫様の行動はまだ掴み切れませんが、作戦方針は理解してますので、先回りしました」


「だな。姫様の作戦は、お人好しが基本方針だから、先読みしやすい。でも、相手にはしたくないよ。未知の知識を使って押しつぶすのが定番だからな」


「ええ。自分は姫様の策に押しつぶされましたから、敵に回した時の怖さは知ってます。我々が知らない方法で攻撃なさるのですものね」


「面白い事多いから、アタシ姫様と一緒にいるの大好き!」


 わたしをからかう皆。

 でもその言葉はとても暖かいから、わたしも一緒に笑ってしまう。


「もー、皆さま、わたくしのセリフ取らないでくださいませ。でも、これ今から晩さん会まで暗記は大変なのぉ!」


「姫様、いくら晩さん会で後ろにいても、それはアタシお手伝いできませんよぉ」


 ……はぁ。こういうのは、主たるわたしの仕事。頑張るしかないのぉ!


「続々と情報が入っているのじゃ。これもクーリャ殿の人徳のなせる業なのじゃ!」


 情けは人のためならず、クーリャちゃん自身は自分が気持ちいいから人助けしてますが、そこには損得無いので誰もが救われるのでしょうね。


「まあ、少しくらいは商売っけ出しても良いのじゃがな。商売人とは適正価格での商売を提案しているのは悪くないのじゃ。誰も最初は良いのじゃが、後半当然のように見返り無しで利益を要求されたら怒るのじゃ! 情報にはお金を支払うのも当然じゃしな」


 この情報こそが値千金なの、クーリャちゃんは前世の情報化社会で十分に理解してますからね。


「では、明日の展開が楽しみなのじゃ。皆の衆、ブックマーク、評価など頼むのじゃ!」


 毎度、宣伝ありがとね、チエちゃん。

 では、明日の正午をお楽しみに!


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