第10話(累計・第49話) クーリャ42:ドワーフ王国のお城に入るわたし。いよいよ作戦開始なの!
ドワーフ王国の城へ到着したわたし達。
門番の方に、お父様が王妃様にもらった招待状を見せ、無事に中に入れててもらった。
……馬もいないのに進む『馬車』には不審な顔されちゃったけどね。
そして馬車、じゃないテストゥード号を馬車置き場に駐車したわたし達は、城内へと案内された。
この城、ドワーフの国の物なので、大きな山、たぶん元鉱山を利用していて、外見的には山の中に建物が半分以上埋まっているような感じに一見見える。
「すいません。このお城は山を削って作られたものでしょうか? 実に素晴らしい外見ですの」
「ええ。その通りです、クーリャ様。元は鉱石を採掘する鉱山でしたが、堀り尽くしましたのと内部空洞がかなり広いので、先々代の時代に体裁を整えて宮殿にしました。内部は地下迷宮にもなっていまして、離宮や外苑も複数ありますわ」
案内しているドワーフの女性、たぶんおばちゃんくらいの年齢の方に城の事を聞いてみると、褒められたのが嬉しいのか詳しく教えてくれた。
……ドワーフ族って只人族よりは倍くらい長命だし、女性はお姉ちゃん風なまま歳取るから年齢分からないの。男性も若いうちから髭もじゃだから逆な意味で年齢分からないけど。ウチのゲッツは案外若くて、只人族換算だったら先生より少し年上くらいなの。
ドワーフ族の独自言語はドイツ語ベース。
でも、この国は只人族の国々に隣接しており、他種族との交流に便利だからと、それなりの立場以上の人は、ちょっとなまっているけど王国語を話してくれる。
実に便利。
……お姉ちゃんが翻訳面倒くさがったとも言うの。
そして、わたし達は城の奥深く、多分貴賓室に案内された。
「それでは、この部屋をお使いくださいませ」
案内のおばちゃん?が去ったあと、わたしは部屋を見回した。
「主賓寝室に御付き用寝室が人数分用意ですか。お父様は随分と王様・王妃様と懇意になされていたのですね」
こちらからの急な見舞い押し付けをしたにも係らず、ここまでの接待をしてくれるということは、向こうも本気という証。
今晩も王妃様との簡単な晩さん会が準備されているそうな。
「クーリャ様、くれぐれもマクシミリアン様のお名前に傷を付けぬように、言動にはお気をつけてくださいませ」
「はい。そこは分かっていますわ、先生。では、ここから夕食会までは自由時間。それぞれお仕事をお願いしますの!」
先生に「釘」を刺されたわたし。
それでもわたしは、いつも通りに行動する。
「カティは、晩さん会のお手伝いやわたくしの身の周りの世話をするのに必要だという名目で、城内で情報収集をお願いしますの。狙い目は、おば様、おじ様達。可愛い女の子が一生懸命に仕事している姿に絆されて、色々と話してくださいますわ」
「はいなの、姫様!」
「ゲッツ。貴方には御師匠のゴットホルトさんのところへ、わたくしを案内してください。色々とお話しを聞きたいですの。マスカーは、警護でわたくしに同行お願い致しますの」
「あいよ!」
「御意!」
「先生ですが、こちらの部屋に残って何かありましたら、わたくし宛に魔法連絡をお願い致しますの」
「承りました。マスカー様、ゲッツさん。姫様を宜しくお願い致します」
「では、作戦開始ですの!」
「はい!」
◆ ◇ ◆ ◇
わたしは、ゲッツにより城近くにある大きな鍛冶屋、いや金属加工工場へと案内された。
「態々、遠方から無理言って来てもらって、すまねぇ。ゲッツ、こちらのお嬢様が……」
「ああ、師匠。この方が俺の今の主、クーリャ様だ」
ゲッツは師匠のゴットホルトさんに、わたしを主として紹介してくれた。
……元々ゲッツってお父様の鍛冶師だよね? まあ、最近はゲッツのお給金はわたしが払っているけど。
最近、植物紙や高級石鹸、更には農地で使う肥料や栽培方法などの商品のパテント代が、わたし個人の収入になっている。
もちろん商品販売収入の半分はお父様が領主として、そして残り四割を実際に働いてくださる方々に。
わたしは一割をパテント代として貰い、材料購入費やわたしの為に働いてくれるマスカー、ゲッツ、カティの給与を支払っている。
……先生のお給料は、お父様管轄ね。
この収入のおかげで、以前はお小遣い枠でしか出来なかった研究開発が進んでいて、たぶん年末までには夢の「ハーバー・ボッシュ法」やコンクリートプラントの作成ができる可能性が出てきた。
……水力発電と鉛蓄電池には成功したの!
収入で硫酸や鉛、銅を買えたわたしは、マスカーの治療に使った水力「発魔」の魔力モーターの代わりに、原始的な発電機を作り、蓄電をした。
この遠征が終わったら、塩水を電気分解して、水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムを作り、紙加工の材料にする予定だ。
……磁石はお父様の雷撃魔法で作れたし、生ゴム買えたのも良かったの。銅配線の被覆材、紙じゃ不安だものね。強力アルカリでパルプ作って、次亜で漂白して白い紙を作るの。
アタシ世界の第二次大戦中、日本軍は資源を求めて戦争をしたため、資源不足で戦う事になった。
南方のゴムが手に入らない為、通信機電線の被覆に紙を使っていたので、漏電などで問題が多かったとも聞く。
……科学漫画じゃ被覆材に漆を使っていたけど、こっちじゃ漆無いもん。今度は漆に竹が欲しいなぁ。お米も食べたいけど。イポリトさんに探してもらおーっと。
「続々と仲間や技術を手に入れているクーリャ殿なのじゃ! もう少しで硝酸、つまりは爆薬を手に入れられるのじゃ。これで名実ともに爆裂令嬢になるのじゃ!」
本来、爆薬はついで。
化学肥料の入手が主目的なんですけどね。
ただ、敵がいる以上、軍備をするのも必要なだけです、チエちゃん。
「この先、クーリャ殿がどこに向かうのか。ワシも見守るのじゃ! 読者殿も応援よろしくなのじゃ。ブックマークや評価で応援してくれると嬉しいのじゃ。ファンアートやレビューもろうたら空を飛ぶのじゃ!」
ということで、明日の更新をお楽しみに!




