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第5話(累計・第44話) クーリャ37:突撃! わたしは、ドワーフ王国へ行くの!

「お父様、ドワーフ王国からの回答はありましたか?」


「ああ、昨日ね。あまり歓迎という感じではなかったけど、見舞いに来るのを許可してくれたよ」


 毎度の夕食後、わたしの関係者集めての作戦会議。

 お父様によると、慇懃(いんぎん)な文章で今はドワーフ王は誰とも会える状況ではないけれども、王妃が代わりに会うなら見舞いを許可するとの事。


「でしたら、向こうに行く準備をしますね。同行メンバーは先生、マスカー、ゲッツ、カティの計5名で行きますわ。移動には、テストゥード号改を使いますね」


 ……うふふ、車輪にゴムタイヤを採用したし、サスペンションも油圧のを作るの成功したの! 潤滑油もいっぱい使ったから、乗り心地もスピードもパワーアップしたのぉ。


 去年の秋、カティに聞いていた話を元に、獣族の方々に尋ねたところ、やはり獣族が住む熱帯密林にゴムの木があることが判明。

 獣族の方々と高級石鹸と交換という形で、わたしは大量の生ゴムを手に入れた。

 後は、墨の粉と硫黄を混ぜてタイヤとして使える様にし、バルブ(逆止弁)作成に苦労したものの、冬には空気入りタイヤを作れた。


 また、オイルダンパーサスペンションも、なんとなく覚えていた形をゲッツに作ってもらい、それなりに出来た。

 これもゴムパッキンがあったからだ。


 ……グリスの原理とかも知っててよかったの。知識は身を助けるわ。ヒマシ油が潤滑油に使えるなんてね。


 石油が未開発なので、鉱物油は入手が難しい。

 しかし、交換頻度は高くなるものの、トウゴマから取れるヒマシ油は機械潤滑油として最適なのだ。


 ……ヒマシ油には猛毒のリシンも含まれるけどね。


「アレか。まあ足が速いから、朝早く出れば夜までにはドワーフ王国の王都イルヴァータルにも到着しよう。向こうでの宿は、どうする? 王宮に泊れと言われると思うけど? 別に準備も可能だが……」


 お父様は苦笑して、テストゥード号を「アレ」という。

 横に座るお母様、デボラもあまり良い表情ではない。


 ……『改』になる前に、お父様は試乗したし、お母様やデボラも車酔いしちゃったから、アレ呼ばわりになるのもしょうがないの。


「『虎穴』の方が面白そうですわ。外部よりは内部から探る方が楽ですものね」


 城内に潜入するのは通常困難だけれども、向こうからお誘いしてくれるなら、そこに乗っかかるのが楽。


「なら、そういう風に封書を送っておくよ。皆、くれぐれも、クーリャの暴走阻止の為に言動には注意させるように。このバカ娘、外に出すのは少々不安だが、事態改善の効果絶大のも本当だからな」


「御意!」


「えー! 皆、わたくしを信用しないのですか?」


「姫様の人格や知性は信用しますが、言動は正直信用ならないですわ」


「せんせー!」


 先生にすら信用されていないわたしは悲鳴を上げ、周囲の人たちは優しく笑った。


 ◆ ◇ ◆ ◇


「ゲッツ、準備はどうですか?」


「あ、姫様。テストゥード号の方は、座席も運転手込みで7人分までは準備したぞ。後部の荷物置きも整理して、使えそうなものや野営装備に保存食、水とかも準備済みだ」


「それはお見事です!」


 わたしは、整備を終えたテストゥード号改を見る。

 ピカピカに磨き上げられているトラック風な、この世界に一台の魔力自動車。

 改造と整備により、おそらく時速60キロメートルは出せるし、多くの人員、荷物を積める。


「しっかし、どんどんすげぇモノになるな、こいつ。作った俺が言うのも何だが、コイツが世界を変えそうな気がするぞ」


「さすがゲッツですね。これが広まれば流通・交通すべてが大きく変わります。だからこそ、情報開示はゆっくりですわ」


「姫様の前世では、このような物が物流をなさっているのですね。それは素晴らしいですわ。ただ、これが事故を起こしたら大変ですね」


 ゲッツは技術者として自動車の有能さを理解し、先生は「その先」を見通す。


「確かに自分はゴーレム馬から落馬しただけで、あのような大怪我をしました。それよりも重いコレがぶつかってきたらと思うと怖いです」


「ええ、先生、マスカー。『交通戦争』とも言われるくらいで亡くなったり大怪我をする人も多いですが、もはや自動車や他の交通機関無しには文明社会を維持できなくなっていたので、必要悪として見られていましたわ」


 この世界でも交通事故は発生する。

 しかし、馬車程度なので、まだ死者が多数ということも無い。

 いずれは、この世界でも産業革命がわたしを切っ掛けに発生するかもしれないと思った。


 ……わたしは、失敗例も知っているの! 同じ失敗をしなきゃいいのよね。


「姫様、座席にクッション準備しますの! 可愛いの準備しますね」


「ありがとうね、カティ。さあ、明後日早朝には出発しますの。それまでに各自準備おねがいします!」


「はい!」


 わたしは、冒険が始まるのを楽しく思った。


 ……絶対にダニエラ様も王様も、わたしが助けるの!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「お父ちゃん、大丈夫かなぁ。早く良くなるといいけど……」


 城内地下離宮でドワーフ族少女は、病身の父親の無事を祈る。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん達も喧嘩しちゃ嫌だぁ」


 そして兄・姉たちが争うのを悲しみ、一人ベットの中で泣いた。


「いよいよクーリャ殿が出陣なのじゃ! 誰が敵なのか、不明な中での戦い。今回はマクシミリアン殿も遠く、自分で戦うのじゃ。がんばれー、クーリャ殿!」


 ゲームシナリオから早期に派生した事件。

 ゲームではダニエラちゃんしか救えなかったのですが、今回はクーリャちゃんが直接事件に関与できます。

 これは吉と出るか凶と出るか。

 では、明日以降の話をお楽しみに!


「ブックマークなぞ、よろしくなのじゃ!」


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