第40話 (累計・第383話) クーリャ368 一旦の休憩。 わたし、再び戦場に飛び出すの!
「はぁはぁ。カティ、大丈夫? エル君もどう?」
「姫様ぁ。アタシ、まだまだ行けますよぉ!」
「正直、ボクは一杯いっぱいだけど、可愛い女の子二人に戦わさせて自分だけ蚊帳の外は嫌だからね」
わたし達は、天使型試作有人操縦型ゴーレム、「ペルーン」を駆り、子爵領内で暴れていた化け物共を一掃した。
そして、実際に戦う中で色々と問題点も見つかった。
……ビームライフルの威力あり過ぎなの。大型敵でも複数体を貫通した上に更にぶち抜いちゃう。取り回しと使い勝手が悪いし、まだガトリング砲の方が使いやすいわ。
「二人とも、くれぐれも無理はしないでね」
「「それは姫様「クーリャちゃん」の方です!」」
見事にハモる二人の声。
しかし、カティの息は荒いし、エル君も肩で息をしている。
二人とも、かなり無理をしているのは間違いない。
……そういうわたしも、指が痛いよぉ。
爪を失った指には包帯を巻いているものの、キーボードやスティックを操るときに指先が痛い。
それに、魔力はポーションで回復させたとはいえ、無理やり。
激しい機動Gで血液まじりの胃液も口元から漏れたりする。
「とりあえず周囲には敵影も無いですし、一旦基地に帰りましょう」
「だね、レーダーにもボクの感覚でも敵はいないしね」
「はいですぅ!」
カティは機体を飛行モードにさせて羽を開いた。
「では、帰還!」
銀色のゴーレム「ペルーン」は空へと舞い上がった。
◆ ◇ ◆ ◇
「では、ルカ君のところとエカテリーナ様のところは無事なのですね、お父様」
「ああ。先程、双方とも連絡があった。どちらも兵数に余裕があったので勝てた様だ」
わたし達はコクピットからは降りずに補給を受けつつ、情報収集をしている。
ルカ君の辺境伯領には単于様と匈奴の騎馬軍団、そしてエカテリーナ様のところには王都から逃げてきた騎士団らが多数居たために、対処が出来たらしい。
……一緒に迷宮探検に出てた人達の大半は、今は医務室に縛りつけられているの。そうしないと、直ぐに戦場に飛び出しそうなんだって。まあ、わたしもロボでとはいえ、戦っちゃったんだけどね。
「では、アントニー様のところ、公爵領は?」
「それが、まだ連絡がつかんのだ。あそこにはアナスタシヤ様やナターリャ先生、マスカーも居るから簡単には敗れるとは思わぬが……」
魂の劣化コピペ装置を調査するために、先日からナターリャ先生とアナスタシヤ様が公爵領に赴いており、その警護にマスカーを付けていた。
「あそこ、兵の総数は少ないですね。戦えるのは、わたくし直属の特殊部隊くらいですし。嫌な予感がしますの」
わたし直下の部隊、未来技術での攻撃を得意としているが基本は少数精鋭。
今回のような命知らずの兵を使い、面で押しつぶしてくる敵、それも榴弾砲の間合いに踏み込むような相手では不利だ。
「うーん……。エル君、カティ。申し訳ないのですが、もう一戦お願いできますか?」
「もちろん! アントニー様を助けに行くんだね」
「はいですぅ、姫様!!」
わたしは、飲み物を飲み一休みしていた二人に、心苦しいながら頼んでみる。
「クーリャ! お前たちは十分戦った。これ以上、無理をする必要は……」
「お父様! わたくしに助けられる命を助けない選択肢はございません!! この手から命がこぼれるのを、もう見たくないのです!」
お父様は無理と言うが、アントニー様やアナスタシヤ様、更には先生とマスカーの命が失われる方が嫌だ。
たとえ、わたしが一時的に寝込む事になろうとも、今行動せずに誰か見知った人達が、いや知らない誰かの命が失われたと聞く方が嫌、わたしのアイデンティティに係わる問題なのだ。
「そ、そうか……。ゴットホルト殿、機体はまだ大丈夫か?」
「ざっと見た感じでは、対して攻撃を受けていませんですし、フルチャージの魔結晶を交換すれば駆動には問題無し。スラスターも良い感じで焼けてますし、武装関係も問題無し。あと、一戦は問題無く行けますぜ! あ、クーリャ姫様。ガトリング砲も準備してます」
お父様は尚も心配で機体状態をゴットホルトさんに聞くが、問題はない。
実際、接近戦を挑まずに遠距離から一方的に攻撃をしているので、機動負荷以外は機体を痛めてはいない。
……機体は構造強化魔法を常時かけているし、機体表面にはバリアも張っているの! 骨格をミスリル、装甲を超々ジュラルミンで作っているから、普通のアイアンゴーレムよりも軽いよ。
「お父様、飛行機が使えない以上、一番早く公爵領に向かえるのは飛行可能な『ペルーン』のみ。更には、当地の防衛戦力をこれ以上他領へ割くのは悪手でございますわ」
子爵領も他所よりは兵士数は少ない。
他領へ支援に行ける程、戦力の余裕などあるはずも無い。
「クーリャ。確かにお前の言う通りだが、あまりにお前やエルロンド様達に負担をかけすぎる。お前が血まで吐きながらも戦っているのは、既に知っているのだが……」
「マクシミリアン様。申し訳ないのですが、クーリャちゃんは意外と頑固。こと他者の命がかかった場面では絶対に引き下がりません。こうなったら、梃子でも動きませんです。なので、ボクやカティちゃんでフォローしますね」
「そうなの、エル様! 旦那様。アタシ、絶対に姫様やエル様と、後は先生方も一緒に連れて帰ってきますね」
お父様、そしてはっきりとした声を出しもしないがお母様達は心配そうな声で話しかけてくれる。
その思いは十分理解しているが、ここで動かないのはわたし、「爆裂令嬢」では絶対に無い。
「お父様、わたくし二人の言う事をよく聞いて、絶対に皆で帰ってきます。なので、お願いします!!」
「はぁぁぁ。動き出したら止まらないのは、誰に似たのかなぁ。ニーナも昔は暴走癖あったって、先日辺境伯領の爺やさん達から聞いたけどね」
「貴方! こんな時にわたくしの恥ずかしい昔話は止めてくださいませ。クーリャ、絶対に無事に帰ってきてね。エルロンド様、そしてカティ。貴方方もわたくしの大事な子達。怪我なんてしちゃダメよ」
「はい! お父様、お母様」
「マクシミリアン様、御義父様と呼ぶのは……、あ、痛い! こんな時に蹴らないでよ、クーリャちゃん」
「旦那様、奥様。ありがとう存じますぅ。アタシ、必ず皆で『ただいま』って言いますね」
そして、わたし達の駆る『ペルーン』は再度、公爵領に向けて発進したのだった。
「『爆裂令嬢』、クーリャ。『ペルーン』、行きますぅ!」
「皆はボロボロなのじゃが、なおも戦いが続くのじゃ。クーリャ殿は、命が失われるのは嫌。なれば、戦場に再び舞い降りるのも当たり前じゃな」
我が「娘」ながら、クーリャちゃんは頑固者。
言い出したら止まりませんです。
「ここまで来たのじゃ。とことん頑張るのじゃ! ワシもクーリャ殿を応援しているのじゃぁ!!」
では、明日の更新を皆様、お楽しみに。




