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第18話 カエデ3: 爆発事故の後……。事件には裏あり!

医者(せんせい)! カ、カエデは、妹は大丈夫なのですか!?」


 わたし、(くすのき)さくらは、妹、(カエデ)の事故を聞き、妹が担ぎこまれた総合病院へ飛び込んだ。


「今、彼女は手術中です。病状を説明しますので、手術室前の待合室でしばらくお待ちください」


 救急処置室にいた医者に話を聞いたわたしは、待合室へと走った。


「お姉さんですか? 私は担当教官の大西(オオニシ)と申します。今回は、私が付いていながら申し訳ないです」


「ご、ごめんなさい。わたしが逃げ遅れたのを助けようとして、先輩が爆発に巻き込まれてしまったんです」


 待合室には包帯やらガーゼで怪我を覆った壮年男性と、同じく怪我をしている、妹よりは歳下の可愛い女の子がいた。


「一体何があったのですか? どうしてカエデは爆発なんかに巻き込まれたのですか?」


「お姉さん、落ち着いてください。私から説明しますので」


 大西と名乗る教授から、わたしは妹が巻き込まれた爆発事故の話を聞いた。


「では、どうして爆発に到ったかは分からないのですか?」


「はい。本来であればそこまで反応が促進するはずは無いのですが。今は警察が入って調査中です」


 教授の話によれば、プラント実験中に反応が進みすぎて横にある液体酸素プラントを巻き込んで破裂、そのまま大爆発をしたらしい。

 プラント建物はバラバラになって全損、大学構内の窓ガラスもほとんどが割れたと、わたしは聞いた


「そんな大変な事故だったのですか?」


「はい。ですが楠くんのお陰で爆発前に全員逃げられました。逃げ方も楠くんが指示してくれたので、大怪我した人は楠くんだけ、他は軽症者のみです」


「本当なら先輩も無事に逃げられていたのに、腰を抜かして動けなくなったわたしを庇ってしまって……」


 (アカネ)という女の子は、涙をこぼす。


「そうだったのね。アカネちゃんだったっけ? 貴方は気にしなくて良いのよ。こういう時に動いちゃうのがウチの妹なの。賢いはずなのにバカだし、思ったら身体や口が動いちゃうのよね」


 わたしは、泣き止まないアカネちゃんを、そっと抱く。

 この可愛い子を守るのに、妹は命を張ったのだろう。


 ……ホント、不器用でバカなんだから。


 わたしの眼からも、涙がこぼれた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「お姉さんですよね。今回は緊急手術だったので、電話のみで手術許可を頂きましてすいませんでした。妹さんの状態ですが……」


 手術を終えた執刀医は、少し疲れた表情でわたし達の前に現れ説明を始めた。


「では、妹は……」


「はい、もう命の心配はありません。爆発時に伏せていたのと適切な対爆姿勢のおかげで炎も吸わず衝撃波も逃がせていたので、肺や気管支、内臓には問題はありませんでした。更に綺麗に爆発燃焼したのでしょうか。一酸化炭素中毒もありませんでした」


 カエデはミリタリー趣味があったのと、化学実験をする関係で爆破事故に対する事はよく調べていた。

 今回、それが役にたって命拾いした様だ。


「それでは、いつ頃妹の意識が戻りますか?」


「そこですが、頭部の怪我があります。硬膜外血腫と頭骨の一部に亀裂骨折がありましたので、処置をしました。脳自体には損傷が無かったのは幸いです。ですので、近日中には意識を戻されるとは思いますが、それがいつかは私共でも不明です。状況に変化がありましたら、直ぐにお知らせ致します」


 ヘルメットをしていてですら、硬膜外血腫、様は大きなタンコブを作ったのだから、準備無しにいたらカエデは死んでいたのかもしれない。


「そうですか。では、宜しく御願い致します」


 わたしは、集中治療室(ICU)を覗いた。

 そこには頭部を包帯に包まれ、沢山の管に繋がれた妹がいた。

 心電図は力強く動いていて、血圧等も安定している。

 顔色も問題なく顔に傷は無いので、酸素マスクさえなければ機嫌よく寝ている様にも見える。


 ……カエデ、絶対死なないでよ。まだ、アンタには言いたいこと沢山あるんだからね。それにお父さん、お母さんも、急いで帰国中なんだから。


  ◆ ◇ ◆ ◇

 

「まさか、あんなに大爆発になるなんて思わなかったぞ。オマエら、どうしてくれる? 俺は実験が失敗すりゃ良かっただけなんだよ。アイツの進めるプロジェクトを潰したかっただけだし。一応確認するが、証拠は残さなかっただろうな?」


 大手化学会社、そこの重役室で短い脚を机の上にあげて下品かつ無作法にしている四十路の男。

 彼は、眼の前で恐縮している男達を叱責している。


「も、申し訳ありません。触媒量を通常よりも増やすように仕掛けをしたのですが、想定よりも被害が大きくなってしまいました。証拠に関しては、まず大丈夫だと思います」


「あそこの女の子、結構可愛かったのに……。怪我して傷とか残ったらもったいないじゃないか。まあ、最悪俺が面倒見るとかで頂けば良いか」


 ぐふふと下品に笑う男。


「さあ、アイツはどういう顔をするかな? これで面目大潰れだろう。オヤジ達は、アイツを可愛がっているけど、俺は気に食わない。どうして優秀な、実の息子の俺をプロジェクトに採用しないんだぁ!!」


 下品な男の叫びが重役室に響いた。

「なんと! クーリャ殿、いやカエデ殿は、まだ死んではおらなかったのかや?」


 ええ、そうなんです、チエちゃん。

 実は、まだカエデちゃんは生きています。

 なので、厳密には転生ではなくて、異世界転移(意識・記憶だけ)なんです。

 まあ、ネタバレになるし、殆ど異世界転生なので問題なし!


「しかし、『チェーホフの銃』どおり、実験前に顔を出した男が爆発事故の犯人じゃったのかや? それも優秀な同僚に手柄を取られた逆恨みとはのぉ」


 こいつに関しては、まだまだ話は続きますので、本編クーリャちゃん編と同時にお楽しみくださいませ。


「うむ! 今回は長期戦の構えじゃな。無事にブックマークやPVが増えるのを楽しみにしているのじゃ!」


 はい、ありがとうね。

 では、明日の更新をお楽しみくださいませ!


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