第32話(累計・第113話) クーリャ105:友達が出来て嬉しいクラーラちゃん。わたしも楽しいの!
まだ太陽が昇る前の早朝、無事に首都まで帰り着いたわたしは、大公様への報告を簡単にした後に、バタンキュゥでベットに潜り込んだ。
そして起きだした夕方に、事態の大変さからお父様、大公様、ドワーフ王国お后様、学院長先生の4人に魔法通信札を使って同時に状況を説明した。
「またまたやってしまったのか、クーリャ。一体、君には落ち着くという言葉は無いのかい? まあ、無事にクラーラ様や襲われた村を救ったのは良かったけど」
「ごめんさい、お父様。事態は急を要しましたので、簡単な説明だけで突撃してしまい、事後報告になってしまいました」
「出発前に連絡をしただけ、以前よりはマシかな? こちらでも暗躍している者については色々と調べているところだよ。まさか暗黒神関係とは思わなかったけどね」
毎回、お父様に何も言わずに突撃していて、後から心配されるやら怒られるやらしたので、今回は出陣する事だけは出発前の早朝に知らせていたのだ。
「大公様、真に申し訳ございません。ウチの鉄砲玉娘が、またまたやらかしてしまいました」
「いえいえ、男爵殿。幼子の身なのに、我が姪を無事に帰してくれました上に、敵の撃破・情報収集までして頂き感謝しても感謝しきれませぬ。また、愚息がクーリャ殿に毎回セクハラしているのは、申し訳ない」
「ボク、少しくらいは空気読むよ。戦闘中とか運転中にはクーリャちゃんやダニエラちゃん、触らないし。あ、痛い! 当たり前って言うけど、ボクだってタッチしたいの辛抱しているんだよぉ!」
「ダニエラ。今回はクーリャ様の言うことを聞いて大人しかったのですね。動く時と動かざる時を良く見るのです。まあ、クーリャ様は……。もう残念ながらしょうがないとしか……。クーリャ様の突撃にて王や国を救ってもらったので、もちろん当方では感謝はしておりますよ」
「おかーちゃん、アタイだって少しは考えるよ。アタイじゃ、まだまだ戦いは無理だもん。その代わりにクーリャからいっぱい教えてもらっているんだ。だから、あんまりクーリャの事、悪く言わないでよ」
「クーリャちゃんが大暴れするのは、もはやお約束じゃな。敵の集団を吹き飛ばしつつ、そのまま突破するなぞ痛快すぎるのじゃ! 幼き姫のすることでは無いというのは、まあその通りじゃが……」
なんか、わたしって身内にはボロクソに言われ、助けた側からは感謝はされど、ちょっと残念という評価なのは、色々と問題があるのではないか。
……うみゅぅ。もう少し令嬢らしく、落ち着いて行動しなきゃ。早く自分が動くのではなくて優秀な配下を揃えて、配下が気持ちよく動いてもらうようにしなきゃなの。
貴族令嬢、自らが毎度矢面で戦うのは、正直普通じゃない。
部下や配下に動いてもらうのが普通、まして女の子が戦うのは論外。
でも、結局自分で突撃してしまうのが、残念でオバカなわたし。
今後もやらかしてしまうのだろう。
……わたしのオバカに関しては考えてもしょうがないから、まずは対処すべき問題を優先に考えるの!
「さて、皆様。これからの事についてご相談がありますの。おそらく敵は、まだ動くと思われます。可能性としまして大公国・王国の国境付近に潜むゴブリン兵による移動中のクラーラ様や近隣の村々への襲撃。そして大公国内で民衆を騙しクーデターを企てる。更には大公様、もしくはエル君の暗殺等が考えられます」
わたしが敵なら、手の内がバレたと急いで撤退する、もしくは完全に動きを読まれる前に作戦を前倒しする。
ゆっくり動いていては、組織ごと根こそぎ撃破される。
こと、せっかく繁殖させたゴブリンを使わないのはもったいない。
「うみゅぅ。わらわには、話が良く掴めぬ。誰か、最初から話してたもれ」
大人達が、難しい話をしているのに自分だけ付いてゆけないクラーラちゃんが愚痴る。
「それでは、わたくしクーリャからクラーラ様にご説明いたしますの」
「クーリャや。もう、わらわと其方は友なのじゃ。その上、命の恩人。なれば、わらわを名前で呼び捨てにするのを許可するのじゃ! さあ、わらわをクラーラと呼ぶのじゃ!」
何故か、ワクワク顔のクラーラちゃん。
大公様がこそっと接触念話で説明してくれたのには、同年代の子供達と触れ合う機会が殆どなく、また大人達も自分に対しては恐れ多いと臣下としてでしか対応してくれないので、対等な友達という存在にずっとあこがれていたそうな。
「で、では、呼び捨ても何ですので、クラーラちゃんで宜しいですか?」
「ま、まあしょうがないのじゃ。わらわは、それで納得するのじゃ。クラーラちゃんとな。なんと可愛い響きなのじゃ!」
「じゃあ、従弟のボクもそう呼びますね、クラーラちゃん!」
「おい、クラーラに触るんじゃねぇ、エル! クラーラ、アタイの事もダニエラって呼びな。アタイはクーリャの友達。ダチのダチはダチさ! それに、皆春から学院に通う同級生。仲良くしようぜ!」
「うむなのじゃ。皆、宜しく頼むのじゃ!」
「これは、可愛い子達が沢山入学してくれるので、ワシ楽しみなのじゃぁ! 学院長として、皆を存分に可愛がるのじゃぁ!」
なんか、作戦会議のはずが、友達作りの場になってしまった。
この先、命の危険があるはずなのに、楽しそうにしている皆を見て、わたしも楽しくなってしまった。
「まずはひと段落なのじゃ。こちらも仲間同士情報共有をして、敵にあたるのじゃ!」
己を知り、敵を知る。
更に情報共有をして、油断をしない。
戦略の基本ですね、チエちゃん。
「クーリャ殿も戦略家としては、そこそこやるのじゃ! さて、アヤツらは、どう動くのかや?」
それは、明日以降の更新をお楽しみにです。
では、また!




