第28話(累計・第109話) クーリャ101:異国より訪れる魔族少女。西方エルフ大公国、動乱の気配あり!
西方エルフ大公国の最北に存在する港町キーアダン。
氷河に削られた入り組んだ地形の入り江が、良好な自然の港として存在している。
元々エルフは海洋に関しては知識も多くは無かったが、北方にある魔族帝国からの船が入港する様になり、今では帆船も作れるようになっている。
「はぁぁ! 疲れたのじゃぁ。もう揺れる船の上は嫌なのじゃぁ!」
今また帝国から到着した大型帆船、いや軍艦から少数のお付きの者と一緒に下船してくる少女がいた。
編み上げた黒髪、身長120センチそこそこの少女には小さな巻き角がこめかみ上に生えていた。
また背中にはピコピコ動く小さなコウモリの羽、お尻からは細くて小さなしっぽ。
耳はエルフの様に長く、瞳は紅玉色の竜眼をしている。
「クラーラ様。ここは帝国ではございません。あまりお燥ぎになりませぬように」
「今まで狭い船内で苦しかったのじゃ。少しくらいは羽を伸ばしてもよかろうて。それに大公国は、わらわの母上の母国なのじゃ」
お付きの魔族女性から叱責を受けながらも、気にせず小さな身体を思いきり背伸びをするクラーラ。
「では、しばらくはお身体をお安めくださいませ。明朝には首都、西ヴァナヘイムへ向かう馬車が参りますので」
「うみゅぅ。わらわは、馬車も好かんのじゃぁ!」
まるで幼子の様にダダをこねるクラーラだった。
◆ ◇ ◆ ◇
「このような方法で民意をくみ上げる方法もありますのです。ただ、識字率が高くないと難しいのですが……」
「ふむ、一考の余地はありますね、クーリャちゃん。改革派には画期的な朗報、保守派にしても現在の貴族を議会議員にして報酬を出すということにすれば、嫌とも言うまい」
今は夕食後の晩餐。
わたしは、大公様に民主的議会制や選挙について説明をしている。
「父さん。もちろん今すぐにとはまいりませんが、今後の方針としてばら撒く両派への『餌』としては効果があると思います。どちらも父さん、いえ大公の主権が減るのを喜ぶでしょうし」
「エルや。こんな面倒な仕事、問題が無いのなら今すぐにでも投げ出したいぞ。だが、誰も文句は言うけれども、打開案を言わずに己の利権ばかり言う馬鹿どもだから、渡せないだけさ」
気高く高貴な種族、エルフといえど、経済活動をする以上、生きていれば生臭いことも増えてくる。
こと、今まで利権を握っていた者は、手放すはずもあるまい。
「大公様。議員になるためには、また利権が絡むのはどうしようもないですね。権力と利権は一体ですし……」
「大昔の戦乱明け暮れた時代であれば、個人武力が権力の象徴であったが、今の比較的平穏な時代であれば、資金力こそが権力でもあるのはしょうがあるまいて」
わたしの補足説明にも渋い顔をする大公様。
現在のこの世界は中世から近代への移行期、武力も一人の英雄の個人芸から軍隊によるものへと移りつつある。
おそらく、わたしが作るであろう武器や科学技術が世界に広まれば、前世世界でいう第一次世界大戦が発生するかもしれない。
……できれば、そうなってほしくないなぁ。でも、わたしが生き残るには武力は必須だし。アントニーのばかぁ。
「まあ、ここ100年程の難問がクーリャちゃんの一言で一発解決なんてのは無理さ。それでも、今後への『一条の光』になったとは思うよ。どうもありがとう」
「いえいえでございます。エルロンド様が安心して帰国できる国になって欲しいものですし、隣国の政情不安はわたくしにとっても不利益ですから」
「と言っているけど、クーリャちゃんは『大馬鹿』が付くお人好し。泣いている人を見たくないだけなんだって。だから、いつも自分の身を危険に晒してまでも動いちゃう。こんな子だから、ボクは信用しているし、大好きなんだ」
「もー、エル君のばかぁ。良い事言いながら、さりげなくタッチは駄目ですぅ」
感謝している大公様に対して、エル君はわたしを持ち上げるが、そんな時でもエッチな事をするので、容赦なく蹴る。
「痛いなぁ。もう、照れ隠しに蹴るのはやめてね、あ、痛い! ダニエラちゃんまで蹴らないでぇ!」
「この、エロフ! いい加減空気読めって」
結局、いつもどおりの漫才になってしまう3人、それを見て大公様は微笑む。
「ダニエラちゃん、クーリャちゃん。これからもウチのバカ息子を宜しくね」
「はい!」
笑いが巻き起こる食堂だった。
「歓談中、申し訳ありません。キーアダンから魔法通信が、帝国の姫様から大公様宛に来ております」
「うむ、分かった。ここの方々は既に事情も知っておろうから、この場で通信を受けよう」
「はっ」
そんな折、背後に控えていた側仕えのお兄さんが、こそっと大公様にエルフ語で耳打ちする。
大公様はエル君やわたしの視線に気が付き、只人語で通信を公開する旨を、側仕えのお兄さんに伝えた。
……わたしがエルフ語聞き取れるのを、大公様は知っているみたいだね。エル君には話した事あるし。
「こちら、エルウェ・マイアール。聞こえますでしょうか?」
「うむ、聞こえるのじゃ! 大公様には始めてご挨拶致す。わらわ、魔族皇帝 ゴロヴァトフ朝アリヴィアン一世が庶子、クラーラ・アリヴィアーノヴナ・ゴロヴァトヴァなのじゃ! わらわが赤子の頃に会うたそうじゃが、健勝であられたのかなのじゃ!」
大公様が受け取った魔力通信札から、可愛い女の子の声が聞こえる。
……ちっちゃい女の子だったよね、クラーラちゃんって。
エルフ族並みに長寿な魔族種のクラーラちゃん。
もう100歳近くくらいにはなる筈なのに、まだ今のわたしより小さい姿であったと前世『ゲーム』での記憶を思い出した。
「作者殿や。またワシやリーヤ殿のコピペしたのではあるまいな? またまた『のじゃ』姫とはのぉ」
えっとぉ、チエちゃん。
意識はしてキャラを生み出してはいるのですが、完全に同一というものでも無いので……。
「まあ、そこは、今後の展開を待つのじゃ。何やらきな臭い感じがするしのぉ」
では、明日正午の更新をお楽しみに!




