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第10話 クーリャ8:鉄とコンクリート! 要塞作りにも水路作りにも役に立つの!

「やっぱり、足らないモノばかりなのぉ!」


 わたしは、メモしたノートを見ながら頭を抱えた。

 因みにこの世界の言語は日本語、なぜか皆漢字まじりの文章を横書きで書いている。

 おそらく「アタシ」の姉が世界設定をしている途中で、言語を考えるのがメンドクサクなって日本語にしたのだろう。


「楽チンで良いけど、風情が無いかもぉ」


 なお、ネーミングに関しては真面目に考えていて、貴族や魔族はロシア風、庶民はフランス、ドワーフはドイツ、獣族はフィンランド語由来らしい。

 貴族が魔法を使えるのは、遠い昔に魔族との混血があったからとも聞く。


「やっぱり鉄とコンクリートが欲しいのぉ!」


 肥料、空気からのアンモニア精製をするには高圧に耐える容器、その素材たる鋼鉄が欲しい。


 また、灌漑(かんがい)用の水路や溜め池を作るのは、コンクリートがあると便利だ。

 

 そして、鉄とコンクリートが合わさった鉄筋コンクリートは、この世界の兵器ではまず破壊できない。

 それこそ大規模破壊魔法が必要になる。


「うーん、まずは鉄からかな? ゲッツに聞いてみようっと!」


「姫様、今は楽器演奏のお時間です。やられたい事があるなら、先に課題をこなしてくださいませ」


 今は、バージョヴァ先生から音楽を習っているところ。

 貴族たるもの、ダンスに音楽は必須なのだ。

 これが女性ともなると裁縫も追加で含まれる。


 もちろん、どれもこれもわたしは苦手。

 ピアノ風の鍵盤楽器を練習しているのだけど、指先が上手く動かない。


「姫様の手はまだ小さいですから、あわてずにいきましょうね」


「はい、先生!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「計画を前倒しにするには、やっぱり鋼鉄が最優先ですわ」


「その計画とは、姫様が化学肥料とやらを作るお話しでしたわよね」


「ええ。本来の『シナリオ』では、飢饉が起こる年の春にアンモニアの製造が出来るはずなのです。でも、それでは兵器開発が間に合いませんの」


 ゲームでの本来の「歴史」では、わたしが14歳になった春に化学肥料の材料として、アンモニアの空気からの製造法、ハーバー・ボッシュ法を実現する。


 それには高温高圧を作り上げるポンプと動力、そして高圧高熱に耐えうる容器が必要だ。

 そして容器を作るには、この世界の今までの冶金技術なら魔法金属ミスリルを使うしかなかった。


 なので、「前回」は国外、ドワーフ王国から密輸まがいで入手したミスリルで機材を作った。

 この「密輸」が、後にお父様が違法武器製造を目論んでいたという、アントニーの言いがかりの理由にも使われたのだ。


「アンモニア作りが兵器に繋がるってのは良い『読み』だったけど、高圧釜に使うとは(アントニー)も後々まで気が付いていなかったそうだけど……」


「つまり、『前回』はミスリルを使ったのが失敗だったのですね」


「ええ。なので、今回は鉄を使います。『アタシ』の世界では鉄でなんでも作っていましたし」


 楽器練習後、わたしはカティに用意してもらったお菓子とお茶で休憩を行いながら、先生と相談をしている。


「でしたら、専門家に聞くのが一番ですね。まずは、ゲッツさんに聞くのですか?」


「はい。そこからですね」


 わたしの記憶を「アタシ」知識で見れば、この世界の製鉄はまだまだ。

 やっと銑鉄(せんてつ)鋳鉄(ちゅうてつ)(はがね)の区別が突き出した程度。

 これらは、鉄の中の炭素量の違いによる。


 まず鉱石から鉄になったばかりの銑鉄。

 炭素量がとても多くて(もろ)い。


 次が鋳造(ちゅぞう)、完全に溶かして鋳型(いがた)に流すのに使う鋳鉄。

 銑鉄ほどでは無いものの、強度的には剣とかにはあまり向かない。


 そして鋼、刃金とも言う炭素量が少ない鉄で、硬くて武器の刃先に向く。


「では、早速ゲッツのところに行きますわ」


「姫様、今日はまだ昨日の宿題がありますの。昨日引けなかった曲のおさらいです」


「あーん、先生、見逃してぇ!」

「いいえ、これも姫様の為でございます」


「姫様、アタシ美味しいお菓子の追加頼んできますので、頑張ってください!」


 ……ぐすん。明日こそはゲッツに鍛冶仕事の事聞きに行くの!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「こんにちは。ゲッツ、今お話宜しいですか?」


 わたしは、昨日随分と頑張って今日の課題分まで片付けた。

 こうやって専門家の話を聞くために。

 いつもの2人、先生・カティと共に、わたしは農園側にある鍛冶場に来ている。


「いいぜ、姫様。こんな暑いところに何の様だい?」


 上半身裸で、塩を舐めつつ水を飲んで一休みをしているゲッツ。

 彼の向こうには鍛冶用の炉が見える。

 彼の筋肉に溢れた身体は汗で濡れ、それをタオルで拭っていた。


「ゲッツに聞きたい事があるのです。(はがね)の事に付いて」


「鋼? どういう事だ? 姫様は、また変わったイタズラでも計画しているのかい?」


 えらくフランク、言い方が悪ければ不敬とも思える態度のゲッツ。

 当家の鍛冶仕事を一手に引き受けてくれている凄腕の鍛冶師だ。


 専門は武器職人らしいけれど当家では殆ど需要が無いため、鋳掛(いかけ)(金物の修理)や農機具、ちょっとした小物を作るのが仕事だ。


 ヒゲもじゃで一見高齢に見えるが、ドワーフ族としては成人を少し超えたくらいの若手。

 なので、わたしが変った「イタズラ」、先日の製紙業などをするのを、楽しんで手伝ってくれている。


「ええ、イタズラでもあり、今後の為でもあるのです」


「偉く真剣な話のようですね。はい、俺が分かる範囲でなら、何でも姫様にお話し致します」


 わたしが真剣な表情で話すのを見て、ゲッツも態度を改めた。


「わたくしが聞きたいのは、鉄鉱石から鋼までの製造方法なのです!」

「いよいよ、クーリャ殿は冶金(やきん)、製鉄に脚を踏み入れるのじゃな。鋼作りは武器作り。鍛造、鋳造。どちらも使えれば武器に工具にプラント。何でも出来るのじゃ!」


 そういう事です、チエちゃん。

 作者も冶金、金属化学は専門では無いので、今回沢山勉強しました。

 そして、とある漫画の科学チートキャラの凄さを実感しました。


「千空殿じゃな。作者殿は環境分析科学と有機合成は専門じゃったが、全部は覚えてはおらぬよのぉ? いかな知恵の魔神たるワシでも全部は覚えきれないのじゃ!」


 彼のことは科学チートの先輩として、今後とも参考にさせて頂きますです。


「うむなのじゃ! さあ、クーリャ殿は鋼の秘密に近付くのか? 明日の更新を待つのじゃ!」

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