第18話(累計・第99話) クーリャ91:ゴブリンのアジトを討伐するわたし。絶対、女の子たちを助けるの!
「こちら、マスカー。CP姫様どうぞ。遺跡内部を進行中。随時、倒れていますゴブリンを殲滅中。足跡や声から人質の方角を確認しました。オーバー」
「はい、CPクーリャです。今から追加のカプサイシンを送りますので、アデーレさんと一緒に気を付けて下さいませ」
わたしは、魔法通信札で随時遺跡にに侵入したマスカーからの連絡を受けながら、作戦を練る。
「先生、もう一回カプサイシンを遺跡内部へ送ってくださいませ」
「はい! <風よ!>」
わたしは遺跡入り口に陣取り、そこから作戦指揮をしている。
討伐隊の方々は、貴族令嬢が指揮をするということで、話半分に見ていたけれども、わたし達がテキパキと動くのを見て、今は大人しく従って待機をしてくれている。
……こういう時に貴族の肩書は強いよね。幼子の意見とはいえ、平民の方は聞かなきゃならないし。
「クーリャ様。こちらの兵はどう動きましょうか?」
「そうですわね、隊長さん。今は遺跡内部は催涙剤で充満しておりますので防毒マスク無しでは危険です。当方の騎士が内部を確認していますので、今しばらくはお待ちくださいませ」
遺跡内部には、どれだけの敵がいるか分からない上に全ての地図があるはずもないので、隠し部屋などから奇襲を受けやすい。
何の手も無しに大人数で突撃しても犠牲者が多く出るだけ、最悪人質を使われる場合もある。
今回はマスクを着けた2人に先行で威力偵察をしてもらいながら、催涙剤で苦しんでいるゴブリンを各個撃破をしている。
……ゴブリンも、人質を使うくらいの悪知恵はあると思うし。でも、防毒マスク準備しておいて良かったの。
寝物語や寓話にも、ゴブリンの醜悪さは沢山語られている。
背後からの奇襲、人質を使う、仲間達すら視線ふさぎの囮に使うなどなど。
……だったら、もっと悪質な手でゴブリンを倒すの。相手は女の子に酷い事をするモンスター。手加減なんて一切しないの!
「CPクーリャ様、こちらアデーレです。女性たちが閉じ込められています部屋を発見。周囲のゴブリンは殲滅しました。ですが、人質の人数が多すぎます。おそらく20人近くで、動けない人も多いです。わたくし達2人では回収は不可能です。ご判断宜しくです、オーバー」
予想よりも生存者が多かったのは、良かった。
しかし、これでは助けにもいけない。
間違いなく足手まといを連れているわたし達を、ゴブリンは襲うだろう。
「こちらCP。マスカー、アデーレさん。どのくらいゴブリンを殺しましたか? オーバー」
「こちら、マスカー。2人で12匹は殺しました。うちホブは1匹。依然シャーマンやキング等は未発見です、オーバー」
2人が倒したゴブリンの数が少ない。
討伐隊などの情報からの想定では50匹以上、ホブが少なくとも4体、そしてそれ以上が数体いる計算。
「クーリャ様。我々が突入し救出を致します」
討伐隊隊長は、今にも飛び出しそうにしている。
「うーん。あ! 隊長さん、この遺跡はどういうものだったのでしょうか? 見た感じでは、大昔の砦に見えますが?」
「地域出身の者によると、太古の王国創立時の戦争に使われた砦跡だそうです。元はドワーフ族による鉱山跡を改造していて、子供たちの遊び場にもなっていたそうですが、近年はゴブリンがいるとかで危険な場所として警戒はされていました」
……じゃあ、遺跡の奥は深いよね。奥にゴブリンがいっぱい待ち構えてそう。多分、人質を連れだしたら、襲い掛かってくるよね。それじゃ、奥に籠ったままにしてもらおうかな。
「マスカー、こちらCP。人質の場所までは一本道でしたか? そこから奥に道はありますか? それと壁の様子はどうでしょうか? 崩れやすそうですか?」
「CP姫様。道ですが、途中複数の四つ角がありました。一応全部行き止まりまで確認、殲滅してはいます。壁に関しては、坑道を補強していまして、崩れやすい感じはないです。オーバー」
「分かりましたの。では、今から作戦をお伝えしますの!」
わたしはニヤリと悪い顔をする。
「クーリャ姫様、またそのお顔ですか?」
「クーリャの悪知恵、楽しみだなぁ」
「こりゃ、ゴブリンが可愛そうかもね」
先生、ダニエラ、エル君が酷い事を言うけど、今更。
完全勝利が最優先なのだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「ぐるぅぎゅ?」
「ぐぅ!」
遺跡の奥深くにゴブリンキング、そしてシャーマンがホブや他のゴブリン達を隠している。
先ほど、急に刺激臭を放つ煙が遺跡内に入ってきた。
それを感知したシャーマンは、一旦兵力を奥に潜ませる事を提案、キングはそれを了承した。
無駄に兵士を使いつぶすのでは、ヒト達に勝てない。
女たちを沢山捕まえてきたのも兵力を増やすため。
「アノ者」は気に食わないが、自分たちに武器や食料を提供してくれた。
ならば、それを利用するに限る。
アノ者の助力により、キングが支配する兵力は増加し、今では周辺の村々を制圧することができた。
おそらく、今回の敵は目立ってきた自分たちを討伐する部隊。
外で戦っても、非力な通常ゴブリンではヒト族には勝てない。
だったら、自らが有利になる洞窟におびき寄せて叩けばよい。
好都合にも足手まといの人質になる女たちは多い。
女たちを救い出したところを後ろから襲えば、ゴブリンに負けはない。
ゴブリンキングは、討伐隊が入ってきて女たちを救いに来るのを待っていた。
しかし、一向にその時は来ない。
2人ほどのヒトが入ってきて各個撃破しながら進んでいるだけ。
「ぐ??」
自らの思い通りに敵が動かないのをゴブリンキングは不思議に思った。
◆ ◇ ◆ ◇
「ゲッツ、準備出来ましたか、オーバー?」
「CP姫様、こちらゲッツ。爆弾設置完了だぜ、オーバー」
「では、お願いします。爆破!」
どーん。
遺跡内部に大きな衝撃が広がった。
「クーリャ殿の作戦、楽しみなのじゃ! おそらくは、アレじゃな」
うふふです、チエちゃん。
詳細は明日以降をお楽しみにです。
「待っておるのじゃ! 読者の皆の衆はブックマークなぞして待つのじゃぞ!」




