第6話・過去
暴力的な表現あります
――あれは中学生の頃。
「雛姫、今日ちょっと付き合ってほしいところがあるんだけどっ!!」
私の男子の幼なじみからの要求だった。
その頃私には彼氏がいた。
中学2年の冬だった。
「別にいいけど…なんで?」
――彼氏がいた。
だけど私はオッケーした。
彼氏は私にあんまり関心がないのか
この頃は私のことなんて構ってくれないし…。
「彼女が誕生日だからさ♪どんなんがいいかなぁて」
別に幼なじみと一緒に出かけたりしたって
関心を抱かない。
そう、思っていた。
◇ ◆ ◇
「コレは?可愛い!」
「えー?!」
ずっとこんな会話の繰り返しをしていた。
そんなとき―――……
「…雛姫?」
「あ…隼人」
私の彼氏。
青山隼人
が私たちの前に現れた。
「…なにやってんの」
隼人はいかにも不機嫌そうな口調で言った。
なに怒ってんの?
意味わかんない。
「幼なじみと買い物」
私はさらっと答えた。
「…ふざけてんのか?テメェ」
――――は…?
隼人は低い声でそう言うと私の胸ぐらを掴んだ。
「…っ、ちょ…何?!!」
痛い……!!!
なにいきなりっ…!!
息が、できな……!!
「…お前さぁ、彼氏いんのによくんなことできんなぁ。ケンカ売ってんの?」
「…ち…がっ、」
助けて…!!
そう思って幼なじみの方を見た。
助けてくれるって思ってた。
だけど
幼なじみは私の前から走り逃げた。
「……ちょ、!!」
ひどいよ。
――――ひどい。
「…こっちこいよ」
隼人はパッと手を離すと、歩き出した。
ついて行きたくない。
「こなかったらどうなるかわかってるよな?」
こんな人だったっけ…?
隼人ってこんな人だったっけ?
確かにヤキモチ妬きだった。
だけど
ここまでされたのは初めてだった。
――――怖いよ……。
つれてこられたのは薄暗い、誰も通らないようなところだった。
「…は、隼人…?」
逃げたい。
「…ざっけんなよ!!」
いきなり私に向かって怒鳴りつけた。
私の体はビクッと跳ねた。
その瞬間、隼人は私の頭を思い切り叩いた。
「いった…ぁ!!!」
痛いなんてもんじゃない。頭が割れてしまうのではないかというほどの痛み。
「何で他の男と一緒にいんだよ。あ?嫌だっつったよな?わかんねーのかよ?!」
また怒鳴りつけた。
そして次は私の髪の毛を掴んで壁に押し付けた。
「……ッ!!」
背中に鈍い衝撃が走る。
「…言ってわかんないなら体で教えてやるよ。バカな女だな」
そう言うと隼人は私のお腹をグーで思い切り殴った。
「………、!!!」
声にならない、痛み。
経験したことのない、痛み。
しかも彼氏から。
――そうだった。
隼人はヤキモチ妬きだから、他のヤツに近づくなって……
あたし束縛…されてたんだ。
すっかり…忘れてた。
隼人は口で優しく言ってくれてたから…。
暴力なんて
されたことなかったのに……。
「…っ…う!!」
隼人の勢いは止まらなかった。
次々に私を
蹴って
殴って
叩いて
「は…っ…!!」
痛みがひどい。
意識がなくなりそう。
私が悪いの…?
「はや…とっ…!!」
なんでこんなヤツのこと好きだったんだろ?
「…んだよ」
「違うよ!!ねぇ、違う…さっきのは幼なじ…」
――パシンッ
「黙れ。言い訳すんな」
隼人は私の頬に思い切りびんたをした。
「っ…別れる……!!!!」
私はそう言って、うまく動かない体で隼人から逃げようとした。
「逆ギレかよ…!!クソ女…っ!!」
隼人は私の頭を殴りつけた。
私は地面に倒れ込んだ。
すると隼人は上に乗ってきた。
――待ってよ。
ねぇ、待ってよ…!!!
この状況じゃ私…襲われるよね………?
予想は
的中だった。
「…い…やぁぁぁっ…!!!」
信じない。
もう私は誰も信じれない。
信じたらまた
きっと同じことの繰り返し。
男なんてたいていみんな一緒の生き物。
きっと他の男子も…
コイツと 一緒
もう
誰も好きになれない。
――汚れた私。
誰も
信じない。
男なんて
絶対 信じない。
みんながみんなそうじゃない、誰かがそう言ってた。
そうかもね。
でも私の気持ちにもなってみなよ。
体験してみなよ。あの恐怖を。
そんなこと
もう軽く言わないって思えるから。
男なんて みんな同じ。
あいつだって逃げた。
助けてくれるって
思ってたのに。
結局
自分が一番なんじゃん。
もう
信じない。絶対に。




