第4話・笑顔のウソ
私は朝5時に起床した。
そう。
“へた”なお弁当を作るため。
きっとアイツは
「姫これまずい」
とか言ってくるはず。
これで次の日からはお弁当を作らなくてよくなるはずっ……!!!
これで手間が減るわ。
そうして、私は
あえて焦がした卵焼きと
油をきっていない唐揚げと
タコの足がぐちゃぐちゃで焦げているウインナーを
お弁当箱に雑にいれた。
お米の上には
梅干しならぬ、マヨネーズをかけて。
…そして、試しに食べてみた。
卵焼きとウインナーは焦げがとてつもなく苦い。
唐揚げは油っこい。
「…すごいな、私」
こんなお弁当見たことない。
初心者でもこんなにひどくはならないと思う。
私はへたくそなお弁当を横目に、自分のお弁当を作った。
「姫、お弁当はっ?」
案の定、ニコニコ笑顔で私に問いかけてきた柳田奏太。
「作ったよ」
私はポン、と柳田奏太の前にお弁当を置いた。
「うわぁーい♪」
私の作戦も知らずに喜んでいる。
――柳田奏太はお弁当の箱を開けた。
「「…………」」
しばらくの沈黙があった。
……キレたりする?
「いただきます♪」
「?!」
なんで食べるのよ!!
お腹壊すんじゃないの?
柳田奏太は卵焼きを口の中にいれた。
もぐもぐと、口を動かしている。
そして、眉間にシワを寄せていた。
私はその光景にふきそうになった。
「……どう?」
けれどそれを我慢し、わざと問いかけた。
きっとまずいって言う。
そして私は明日から作らなくてよくなる。
「ん?おいしいよ♪」
…………は……いっ?!
「…な…なんでっ!?」
まずいならまずいって言いなさいよっ。
「なんでって言われてもー……。おいしいよ♪」
じゃぁ
じゃぁなんで眉間にシワ寄ってんのよ。
苦笑いじゃないの。
なんでそんなムチャするの?
――……なんで?
「ごちそうさま♪」
「…う、うん」
柳田奏太は全部食べていた。
焦げた卵焼きも
油っこい唐揚げも
変なウインナーも
マヨネーズご飯も
全部残さず食べていた。
「………、」
「明日も作ってね♪」
「…ぇ…」
なんで?なんでよ。
あんた頭おかしいんじゃないの?
心の中ではまずいって思ってるよね。
なのに
こんなまずいもの明日も食べたいの……?
「…………」
「姫?」
「…ごめん…ありがと」
わざとまずくしたのに。
食べてくれたのが
明日も作ってって言ってくれたのが
――少しだけ
少しだけ嬉しかった。
「うん?」
明日は…ちゃんと作ってあげようかな。
「まずかった?」
私は思わず聞いた。
「おいしかったよ♪」
「うそだ。まずかった」
「おいしかったって♪」
「なんでよ?!」
「姫が作ったから♪」
「わざとまずくしたんだってばっ……!!」
―――はっ…!!!!
つい勢いあまって言ってしまった……!!!
「…やっぱりねえ。姫ならやると思った♪」
ニコニコしながら私に接してくる。
――怒ればいいじゃん。
「…………」
「…なに黙ってんの〜?怒ってないよ?」
ニコニコしながら私に言う。
なんでいつも
ニコニコしてられんの?
まずいお弁当わざと作ったんだよ?
「…ばかじゃないの?柳田奏太…」
きっとどこかのネジが外れてしまったのだろう。
可哀想に。
「奏太って呼んでよ。フルネームやだ!」
「……」
……だって。
なんか…親しいみたいで嫌だ。
男嫌いなんだってば。
「…ルール1、姫は」
う゛。
「わーったわーった!!呼びますよ…」
呼べばいいんでしょ!?
「いい子♪」
なに。こいつ。
軽い雰囲気丸出しじゃない。
[奏太ってまだ2人しか付き合ったことないんだよ]
ふと、凛の言葉が私の頭に浮かんだ。
――……この軽い男が?
2人?
あの時は軽く流したけど、今思えばあんまり信用できた話ではない。
「あっ。姫!!」
いきなり何かを思い出したかのように、奏太は私を呼んだ。
「……なんでスか」
「ゆーえんちっ♪」
……………は?
なにこいつ。
ついに頭が本気でイかれたか?
「明日いきたいっ♪」
明日って…!
そんな急に?!
しかもこいつと?!
大事な休日を意味のわからないこいつと過ごせと?!
「じょー…だんっじゃない!!」
「…ルール1、姫は」
「うっ…さいわっ!!」
ついに私はキレた。
人間に向かって、初めてキレた。
「ルール1っ♪」
それでもまったく、きかない奏太。
しゃべる気失せるわ…。
私は奏太を睨みつけた。
「行こっ♪」
「……やだ」
「おごるから♪」
「行かないっ」
「アイス買ってあげるからぁ」
「へっ…!?」
あ゛……。
つられてしまった……。
「ぷっ。可愛い♪じゃ明日駅前に10時ねン」
「は!?行くなんて言ってな……」
「じゃぁね〜♪」
私が否定する前に、教室をでていった。
サボリ?!
なんなの?!
ていうか!!!
ぜってー行かねえっ!!!
こらこら!!
女の子なのに
なんて口調・・・。汗




