第2話・ゲーム
学校に行きたくない。
行ったら、ヤツに会ってしまう…。
関わりたくない。
絶対にヤツに関わっちゃいけない気がする。
昨日…カラオケに行ってなかったら……。
今、こんな暗い気持ちじゃなかっただろうな…。
「……よし、」
でも過去のことをウダウダ言ってても仕方がない。
私は、あんなヤツには近づかない!!
そう、心に決め、私は学校に向かった。
学校に着くと、いつも通りの風景にホッとした。
「ひ、ひなき…ごめんね…?」
教室に入るなり、凛が私に謝ってきた。
あー…。昨日のことか。
気にしなくていいのに……。
「大丈夫。私こそ勝手に帰ってごめんね」
そうだ。私の方が謝らなければいけない立場だ。
「あ、うん!!私は大丈夫だったよ」
凛は、私に笑顔を向けた。
その笑顔にホッとする。
「そっか。良かった」
私は笑顔を向けてそう言うと、自分の席へついた。
「……っ!?!?」
私の席には人が座っていた。
しかも…………。
「あ。姫♪おはぁよ」
私を“姫”と呼ぶヤツ。
ひとりしかいない…。
「どいて」
私はあえてにっこりしながら言った。
「えー♪どおしよ」
………………。
やばい。
うざいって言葉じゃ足りないな。
「どけなさい」
私はイスを軽く蹴った。
すると、
「しょうがないなあ」
よっこらしょ、と言うと柳田奏太は立った。
「…おはぁよ♪」
…………は?
「おはよ♪姫」
な…なに…?
あいさつを私にしつこくしてくる。
…あのニコニコ笑顔で。
「…なに?」
私が尋ねてみると、
「ミッションだよ♪まずは挨拶からでしょー?」
み……ミッション?
「はい?私別にあんたと仲良くする気ないから」
軽くつっかかってやった。
これが本心。
すると、柳田奏太は一瞬顔を歪ませた。
「…あんた、じゃない」
「……は?」
「奏太だから♪」
そんなことかよ!!
「…知らないわよ!!そんなのっ。お願いだから私に近寄らないでっ…!!」
これ以上私に近寄らないで。
これ以上私にちょっかい出さないで。
これ以上私に
――関わらないで。
「あっそー♪俺は、ひかないからね?いくら姫が俺のこと嫌ってても」
…なんのこと?
意味わかんない。
「どういうこと?」
私は気になり、問いかけた。
「秘密だぁよ♪」
そう言うと、柳田奏太は自分の席に戻って、突っ伏して寝始めた。
なに…?
すごく気になるんだけど。
―――だけど
関わらないって決めた。
ていうか関わりたくないから。
別にあんなのどうでもいいや。
………柳田奏太って
しゃべり方が変だ。
今更だけど。
…あれがマジの性格?
私には信じれない。
あんなしゃべり方する人いないよね。
なんか…馴れ馴れしいってのとはまた違う。
まさに“軽い”にぴったりのしゃべり方って感じだ。
友達みんなは、かっこいいとか言ってるけど、私には理解できないな。
「…………」
私は柳田奏太を凝視した。
茶色の髪の毛。
サラサラのストレート。整った顔立ち。
長いまつげ。
少し細い目。
大きい手。
よく考えてみれば、周りからみればイケメンなんだらうな。
私は思わないけど。
死んでも思わないけど。
すると、突っ伏しながらこっちがわを見ていた柳田奏太は目を開けた。
わっ!!
目が合ってしまった!!
「姫こっち見てたね♪」
ニカッと笑った柳田奏太。
だけど私はそれを無視した。
普通、こういうところで普通の女の子はドキドキとかするんだろうな。
私はしない。
絶対にしない。
男なんて信じない。
私が信じるのは家族と友達だけ。
それだけで十分だ。
「…雛姫って、奏太の事好きだったりする?」
そんな質問を投げられたのは、昼休み。
もちろん、質問者は凛。
「…なんで?!」
好き?
いやいや。
大嫌いですよ?
「仲いいじゃん♪」
「嫌いだもん」
私はやはり、即答した。
そんな私を見て、凛はしゅんとした。
う゛……。
そんな凛に心をうたれた私。
だけど、嫌いなものは嫌いだ。
「奏太のイメージってさ、雛姫から見てどう?」
「軽い。しつこい。女好き」
またもや即答してしまった。
「あはは。やっぱりなぁ」
……え?
凛は笑って私を見た。
「実は、奏太ああ見えて付き合ってた人まだ2人なんだよ」
「…ふうん」
そうなんだ。
意外。すごく意外。
「ただね…奏太もいろいろあったらしくてさ。あんな性格作って……」
「……作ってるの?」
――性格を作ってるの?
「うん。私中学同じだったからねー。全然性格違うよ」
「そうなんだ」
……ま。
私には関係ないんだけどね。
私は手に持っていたイチゴミルクを一気に飲み干した。
あいつ、なにかツラい過去でもあったのだろうか。
―――はっ。
なに気にしてんだろう。
関係ないヤツなのに。
知らない。
男となんか
関わってもいいことなんかない――……
「雛姫はさぁ…やっぱ恋できない?」
メロンパンをちまちま食べながら私に笑顔を向けてきた凛。
恋……どころじゃない。
「うん。私一生独身でいるから」
絶対に、私の未来は独身に違いない。
「ぶっ…そんな先のことまで…」
凛は顔をくしゃっとして笑った。
私には友達がいればいいよ。
家族がいればいいよ。
「…凛がいればいいや」
「……へ?」
そうだ。
私は別に恋したいわけでもない。
「凛が一番大事」
そう言って私は凛に笑顔を向けた。
「…ひ…ひなぁ〜…!!」
すると、凛は私に涙目で抱きついてきた。
な、泣くほど!?
「姫♪迎えにきたよ」
…………ン?
なんか今嫌な声が……。
私はゆっくりと振り向いた。
「…………」
柳田奏太…。
まだしつこいのか。
へこたれてしまえばいいのに。
私は柳田奏太を無視し、凛に視線を戻した。
「無視ですかあ?」
コイツのしゃべり方イライラする。
語尾をのばすのが異様に多い。
「近づかないで」
私のいきなりの言葉にも動揺しないコイツ。
だけどそれでも私は続ける。
「言ったでしょ?!昨日。二度と近寄らないでって」
そう言って私は柳田奏太を睨んだ。
「そだっけ?」
ニコニコ笑顔のまま首を傾げた。
……腹が立つ。
なんか…話す気力なくなってきた。
「姫ー俺と付き合わない?」
「……は……い……?」
相変わらずバカだ。
なんで嫌われているということをわかっていて
“付き合って”
になるんだ?
「男嫌いを、なおしてあげる♪」
ニコニコ笑顔で私の長い髪の毛に触れた。
「…離して!!」
無理。無理。無理。
助けて。助けて。
「……んじゃ決定♪」
そう言って私を一瞬ちらりと見た。
その顔は笑顔ではなかった。
そう、まるで……欲しいものを手に入れたような満足感あふれた顔…。
なにが……目的?
「嫌よ。あんたとなんか付き合わない」
私は必死に訴える。
だけどそれはコイツにはきっと届かない。
「ンー…」
私が本気で言ったからだろうか。
珍しく、悩み始めた。
「じゃーぁ、こうしよう♪」
そう言って私に笑顔を向けた。
……どうすんのよ。
「俺が1ヶ月以内に姫のことを落とす」
柳田奏太は私に向かって意味のわからないことを言い出した。
「落とせたら…正式に付き合ってね♪」
そんなゲームみたいなこと、他でやれ。
「…はっ…。バカじゃない?私は絶対にあんたなんか好きにならない」
あんたなんか
好きになんてならない。
「落とせなかったら…俺は二度と姫とは関わらない」
そんなに…自信があるの?
でも…二度と関わらない…。
それって嬉しい。
「…………オッケー」
私は絶対にコイツなんか好きにならない。
絶対に男なんかとは関わらない。
男なんかもう、好きになれない。
「交渉成立♪じゃー今日から1ヶ月。ルール1。姫は俺には逆らわないこと」
「……はっ?!」
なにそれ…!!
「大丈夫。半径イチメートル以内には入んないよ♪」
な…なんで覚えてるんだ。
それから、このゲームの説明が始まった。
1・私はあいつに逆らわない。
2・途中棄権ナシ
3・私の半径イチメートル以内には入らない。
これだけのルール。
一番がすごく嫌だけど、関わらないようになるんなら、仕方ない。
しかも半径イチメートル以内には入ってこないし。
私はキッと柳田奏太を睨みつけた。
痛い目みなよ。
みんながかっこいいとかいうから
誰でも落とせると思ってんでしょ?
だけどね
私は絶対にあんたになんか落ちない。
このゲームに勝つのは
絶対に私。
奏太って、
つかみにくいですね。笑




