煮える女編③
「神のみ心に従いなさい」から煮える女編③
「性ならいとなる」とは今の西太后を見れば解る。生まれ持った性格が、衣を一枚また一枚と着る様に習慣となり膨れ上がっていく。衣はやがて鎧となり皮膚に同化していく。皮膚に同化すれば自分を守る鎧はもう脱ぐことは出来ない。人の姿をした妖怪になるしか無いのだ。
出会うひと全てを傷つけ、怨みを買い、やがて誰も相手にしてくれない孤独という無限地獄に落ちて行く。それが彼女の運命である。唯一救われているのが電話の相手をしている人物だが、もしも自分の来たるべき運命に気づかないなら、いつか彼女は見捨てられるだろう。最後の時は刻一刻と近づいているが、今日も何処やらに電話している。
「昨日はごめんなさい、私の話しを聞いてくれてありがとう。私もいつ締め出しに会うか分からない。何も悪い事はしていない、それどころか人の助けになる事しかしてない。世間の悪口ってそういうもの、理不尽な理由を付けて追い出しにかかる。全く理解出来ないけど、そういう輩が居るんだ。」
「○○○○○」
電話の相手も相づちを打っているのだろう、女は静かに聞いている。