煮える女編①
吾輩は猫である。3000年生きた化け猫である。正確には「3000年の記憶を持った生身の」化け猫である。コロナ編を読んだ人はご存知と思いますが、一年前に、私をペットショップで買い、マンションで飼っていたが、突然姿を消し私を捨てた。そして再び私を見つけ、今はその女の家に居る。
「神のみ心に従いなさい」から煮える女編①
「煮え煮えなんだから!」
電話の相手は分からないが、激しい口調でまくし立てている。
不意を衝かれ捕獲されたが、今はコロナ感染騒ぎで夜の街の客も少なく、毎日あれほどあった飲食店の出物も、かつてのように選り取り見取りとはいかない。まァ仕方なく飼われてやる気になった、と言う訳だ。
しかし、自由気ままに生きる楽しさは何ものにも変え難い。いつかは脱出しようと思っている。
「それで、どうも私の噂を流しているらしい。たぶん、あいつ等だ!私が何をしたって言うの?チケットだってお金を出したのは私だよ。それを二人はデキてる、なんて噂を!」(煮える女)
「日本全国中周って、行く先々虐められて、死ぬ事まで考えて、東京に行けば仲間が出来るって、それで来たのに、もう10年弾かれてばっかり!」
「○○○」電話の相手が相づち。
「あの三人は、絶対に許さない。死ぬ前に殺す!煮え煮え!!」
「○○○○」相づちを打っているらしい。
「ごめんなさい。少し飲み過ぎた。おやすみ。」
難しい話は猫の私には分からない。寝たフリするに限る。彼女は天下の悪女、西太后の生まれ変わりだ。相変わらず「煮え」ているようだ。あの時もそうだが、全て他人の仕業で幸せになれない、と考えている。
人間は社会的存在と言われるが、居場所をつくれないこと程不幸は無い。イジメを受けるには、其れなりの理由が有る。暗い、性格が悪い、汚い、理由は様々である。しかし、生まれ持った性格を変えることは難しい。立場をイジメを受ける側に立つと、背筋が凍るという表現が最も相応しいだろう。私は煮える女編をイジメを受ける苦悩と解決の方策をいかに見出すか現在進行で試みたい。