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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その16 ソンタク罪

作者: 天城冴

マスコミや政権トップと癒着する検察トップのグロカワ。今日も秘密裏に記者たちと賭博に興じようと、とあるマンションの入り口まできたのだが…

「ふう、まだ暑いな」

タクシーから降りたグロカワは上着を脱いだ。

五月も終わり近く、22時近いのに、まだ気温が高いようだ。

「まあ、いいか、どうせすぐエアコンの効いた密室のマンションに入るんだ。終わるころには涼しくなっている。懐は温かくなるかな」

少しでも情報を引き出したいと焦る記者たちを手玉にとっていくら儲けるか、想像するだけで笑いがこみあげてくる。もっとも

「ばれたら不味いか、でも私には」

この国のトップの庇護がある、そのためにいろいろ表裏で便宜を図ったのだから、賭博行為を見逃してもらうぐらいは

「当然のことだろう、私のバッグにはソーリが」

と、いいかけたグロカワは両腕をがっちりとつかまれた。帽子を目深にかぶりマスクをした二人の人物にわきに挟まれ身動きが取れない。

「な、なんだ、私は検察トップの…」

「ソーリに忖度グロカワさんですよね。いやはや天下りに、定年延長エトセトラ、いい御身分のようで」

黒いマスクに眼鏡の小太りの男が不意に前に立った。

「ど、どういうことだ、君は」

グロカワは拘束から逃れようともがくが、どうにも動けない。

「いえねえ、この国のトップとお仲間が多くの罪を犯しても捕まらないよう、起訴されないよう、ずいぶんと働かれたようですねえ」

「き、君、な、何を」

「いやはや国民の多くが知っていますよ。トップのお友達の準強姦罪だの、公職選挙法違反だの、贈収賄だの」

「あ、あれはマスコミが」

「そのマスコミと仲良く賭けマージャンですか。まったく正義を行使するはずの検察の人が正義を踏みにじるとはねえ」

「き、君、いい加減にしろ!私は知人を訪ねてきただけだ!」

「こんな夜更けにですか。一体どういう御用事なんでしょうねえ」

とニヤニヤしながら男が手で合図すると、車が止まった。ワゴン車のドアが開き、グロカワは両脇から抱えられ中に押し込められた。

「な、何をする!」

喚きながら、車内を見回すと

「き、君たちは!」

後部座席にぐったりとした様子の二人の男。顔なじみの記者だ、それもグロカワがこれから会いにいこうとした二人だった。猿轡をかまされた顔はところどころ腫れて、あちこちに痣ができている。

「き、君、な、なんてことを、暴行罪だぞ!」

「それをいうなら、賭博罪ってのも、あったと思うんですがねえ。それに貴方方はもっと重い罪ですよ、ソンタク罪」

「ソンタク罪?そ、そんなものはないぞ、法律にも!」

「だってねえ、国のトップが自分を縛る法をいいように手を突っ込むような国ですよ。国民も新たな法律作って運用しないと自衛できないじゃないですか」

呆気にとられるグロカワも二人の男に縛り上げられた。

「だいたいウイルスが蔓延して国全体が危ないのに貴方、ソーリのお友達やソーリご自身の救済のために不要不急の法案を決めようとして、国民救済は疎かにされているんですよ。一般庶民は金もない、給付金だの申請してもなかなかお金が入らない。だいたい、あの給付金の額じゃあ、全然たりないですよ、半年分の生活費になるかならないか」

「そ、それは国だって予算が」

「トップが自分のために使わなきゃよかったんですよ。変なマスク配ったり、記者さんたちと会食したり、花見会なんぞで支援者招いたり、他にもいろいろお仲間に回してる金を少しでもきちんとつかってくれりゃあねえ、私らもこんなことしなくてもすむんですが」

「ひいいい、や、やめ…」

喚くクロガワにも猿轡がかまされた。

「気が付いたんですよねえ、国の言うとおりに自粛だの、休業だのしたってなんにもなりゃしない。結果じわじわ殺されるだけだって。自分の国にね。国のいうこときかない自粛破りを取り締まる警察気取るより、自分たちを苦しめてきた悪の政府、その巨悪を陰で裁くほうがいいって」

もごもごするグロカワも記者たちと一緒に後部座席につめた。その両側に黒ずくめの男たちが窮屈そうに座る。

「定員オーバーですね。まあ、いいか。どうせ、法なんてあってなきがごとし。法律を決めて取り締まる、起訴する側が法を破りまくっているんですからね、この国は」

男はつぶやくように言って助手席に座った。

“ど、どこへ行くんだ”

グロカワの声にならない声を聞き取ったのか男が答える。

「あなた方を刑に処するんですよ。バッドや木刀で滅多打ちにされるのか、包丁で切り刻まれるのか、わかりませんけどね。今日のお客は飲食店関係者が多いから包丁かな。トップのおバカなウイルス対策のおかげで店をたたまざるをえない、下手すりゃ首をくくらなきゃいけないって人達で」

“な、なんで、そんな奴に”

「商売やめたり、死ぬつもりで残ったなけなしのお金をかき集めて私らを雇ったわけですよ。私らは自粛警察から仕事人?に転身したわけでして。まあ、経験はまだまだですがね」

“さ、最近、芸人だのが死亡したとかは”

「ウイルス騒ぎでテレビだのに出られないのが当たり前になってますから、安否もなかなか確認されないんですよね。こっちも楽ですけど。ああ、医療関係者の中にも協力者がいますし、葬式だのもロクにやれないから、偽装はしやすいんです。大丈夫ですよ、表向きはキレイな死体でご家族のもとに帰れますから」

恐怖で叫びそうになるグロカワだが、口がふさがれている。

“だ、だがマンションの防犯カメラが、家族も”

「貴方が来る前に記者さんたちが防犯カメラ切ってたみたいですよ。検察トップがこんなところに来るのがバレたら、それこそお互い身の破滅なんでしょう。グロカワさんだって、ご家族に伝えたんですか、あのマンションにいること」

グロカワの顔に絶望が浮かんだ。

「伝えてるわけないですよねえ。ま、何日か留守にするなんてしょっちゅうだったんでしょ、大丈夫、心配するころには帰れますよ、生きてないけど」

許しを請うつもりなのか、グロカワが何度も頭を下げるが、

「駄目ですよ、ソンタク罪は死刑しかないんです。それぐらい重大な罪だ。なにしろバカな権力者の横暴を許して全国民の生命、財産もこの国の資産も国土もすべて危険にさらしたんですよ。実質大量殺人に匹敵する、いや、それ以上の罪なんですから」

穏やかだが冷徹な口調の男。グロカワや記者たちが何とか逃れようとするが、両脇の男に頭を強く殴られた。

「あんまり乱暴にしちゃだめですよ。お客さんが楽しめなくなる。まあ、楽しむというより怒りをぶつけるというほうが正しいか。今まで耐えてきた分、内に秘めた怒りは相当なものですから」

私もですけど、男は小声でいって口を閉じた。ソンタク罪人たちをのせ、車は夜の闇に消えていった。


どこぞの国では三権分立はどこへやら、政府と検察とかがお仲間づきあい、癒着しまくりが常態化しているようですねえ。真実を追及の理想も投げ出し、お身内の井戸端会議のような取材の仕方でジャーナリストを名乗れるマスコミのぬるま湯体質も加担して、酷いことになっているようです。そのうち、ホントに仕事人モドキが出てくるのではないかと不安と期待をもって眺めております。

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