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干天の慈雨  作者: ゆうま
41/57

和咲と安成美咲⑥

「こいつにいじめられてたんだよ。やり返さないわけ」

「復讐、報復、因果応報、どんな言葉でも良い」


女子トイレ

端に追い詰められた安成さん

その前に水の入ったバケツを持つ僕

僕の背後には安成さんのかつての友人4人がいる


逃げられない

安成さんに少しも危害を加えず逃げる方法が思い付かない


「でもここで水をかける理由にはならない」

「安成になめられたままで良いわけ」

「この状況の人間になめられたからってなにが起きるの」


このままじゃ不味い


「この状況の人間にすらやり返せないなんて随分と気弱なのね」


駄目だ

逃げられない


ここで水をかければそれに付け入られる

でも水をかけなければ決して放っておいてはくれない


「分かった。だけど条件がある」

「なにかしら」

「今後私に関わらないで」


ボスがくすりと笑う


「分かったわ」

「約束よ」

「ええ、必ず守るわ」


今はその言葉を信じるしかなかった

僕が関わっていなければ密かに助けることは可能だ

今のような状況が作られてしまえば不可能


安成さんの頭上までバケツを持ち上げる

それをひっくり返すと中身の水が一気に落ちる


「安成美咲、私だって不本意なの。言われてやった復讐なんて復讐じゃない」


歩き出すと4人は素直に道を開けた

入り口で立ち止まると振り返らずに言った


「復讐なんて意味のないことはしない。だから二度と関わらないで」


本当にこれで関わらないで済むならまだ良い

だけどなにか――

胸騒ぎのようなものがする

なにか見落としているのかもしれない

でも分からない


「ええ、必ず守るわ」


同じ台詞

いつもの不敵な笑顔を浮かべて言った言葉だとしても

どうしても嘘だとは思えない


だからなのか

僕も追い込まれていたのか

理由は分からない


ただ事実としてあるのは、そのままその場を立ち去ったということだけ




                     ***




「昼間はごめん」


放課後

屋上


いつもの時間のはずだった

でも今日は違う


いじめられている安成さん

それを手伝った僕


そして以後傍観することを宣言した

下手に手を出せば足元をすくわれる


「仕方がないよ。それに、嬉しかった」

「嬉しい?」

「うん。朝、守ろうとしてくれたでしょ」


守る…とは少し違う気もした

でもそういう気持ちだったのかもしれない


「それに昼間の約束だって、私を守るためでしょ?復讐に意味がないと思ってるのは本当だと思うけど」


こんな状況になったというのに随分呑気

なんで普通に笑っていられるんだろう

…でもまぁ、僕だって同じか


「あと、ここに来てくれた。あれが全て自分を守るためのなにかだったら気不味くて来られない。そうじゃなくても水かけちゃったしね」


言葉違和感

感情違和感

表情違和感


違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感


違和感の正体は、なに

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