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干天の慈雨  作者: ゆうま
35/57

昔話と死⑤

「さて、」


そう言って居直り真剣な眼差しでヤスを見る


「お客、全ての事が起こったあとに駆けつけてどうしたんだい」


確かに

いくらこの町の出来事だからと言って死体があれば事件になる

それに両親の遺体はまだ見つかっていない


「まず動転してるケンを落ち着かせました」

「それから?」

「知り合いを呼んで遺体を運んで燃やしました」

「――知り合い…ねぇ」


訝し気な視線を向ける

当然だろう

死体の処理を手伝ってくれる人なんて滅多にいるものじゃない


「骨が残るように燃やしたから今度遺骨持って来るよ」

「ああ、ありがとう…」

「あと領収書も」

「なんのだ」

「知り合い特権で安くしてもらって利子もないから大した額じゃないよ」


一気に怪しい

大体普段どうやって金を稼いでいるのか誰も知らないんだぞ

というか質問に明確に答えろよ

大体想像はつくがな


「知り合いっていうのは」

「まぁ「そういう」人です」


こういう町だ

そうでなくとも、そんな怪しい団体がない方が不思議だ

だがどこでどうやって知り合った


「職探しをしてるときに偶然出会ったんですよ」


俺を庇う様に座り直すアルを見て小さく笑う


「ちょっと恥ずかしいから言いたくなかったんだけど…」


本当に照れたような顔で小さく呟く


「普段は飲食店で働いてます。「そういう」ことはしてないです」

「なにが恥ずかしいんだい」


じとりとヤスを見る


「接客担当なんでもし来られると、働いてる姿見られるのとか、ちょっと恥ずかしいんですけど…」


怪し気な団体と知り合いのヤツの口から出る言葉とは思えないな

もじもじしているのが正直気持ち悪い


「あの爺さんが紹介した店から変えてないんだね」

「はい」


やっぱり

そう言いた気にヤスが優しく微笑む


「そういえばヤスがここに来て最初の案内をアルに任せたな」


安心した様に小さく微笑む

そんなアルの表情が元の真剣な表情に戻る


なにかマズいことでも言っただろうか

これは思い出してはいけないことだっただろうか


「そのときなにかあったのか」


だけど今更聞かないのも変だ

それにこんなやり取りされたら気になるだろ


「いいや、ここの暗黙の了解だからねぇ」

「うん、なにもないよ」


暗黙の了解なんて、無暗に立ち入らない

それくらいだろ

そんなのどこでも同じだ

ここが度を過ぎているだけだ


言いたくないことを無理に聞き出す必要なんてないんだ

ただそれだけのはずなんだよ


「そうか」


だから俺はこう返事するしかない

明らかに嘘だと分かっていても、だ


「立ち入りついでにひとつ聞こうかねぇ」

「どうぞ」

「さっきの状況を説明する気はあるかい」


ちらりとナギを見る


「任せます」

「2人の話はナギが話した方が良いと思うけど…任されたので話しますね」


愛想笑いを見せる


「少し長くなりますが良いですか」

「ああ」

「構わないよ」


軽く咳払いするとゆっくり息を吸った

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