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干天の慈雨  作者: ゆうま
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昔話と死③

「理由ならなんとなく推察出来るが…聞くかい?」

「聞かせてくれ」

「お袋さんは――ルイは独占欲が強かったんだ」


それは多分、店の誰もが分かっていたこと

だけど知らないフリをしていた

それは自分の身を守る為でもあった

だけどそれと同じくらいの別の理由があった


それは、母さんも店のみんなのことを大事に思っていることが分かっていたからだ

変に行動してそれが変わってしまうことを恐れた

みんな店が大事だったから

みんな父さんと母さんを大事に思ってくれていたから


だからアルが母さんのことをルイと呼び捨てにする仲であることに驚いた

アルと特別仲が良かったなんて知らなかった

母さんが店の誰かと特別仲良くするなんて思えない


「どう言ったのかは想像出来ないが、親父さんに自分を殺させて自分への気持ちで心を満たすつもりだったんだろうねぇ」

「だけどそれをケンが、息子が邪魔をした」

「逆上して襲うも返り討ちに遭い死んでしまう…といったところだろうねぇ」


「殺されてしまう」ではなく「死んでしまう」

そういう言葉の選び方がアルの優しいところだ

ただ、それについて感動の様なものをしていると―――


「ルイは多分その時点で主を誰とも認識していなかっただろうねぇ」


ほら、落とされる

この場合俺と分かって殺そうとしたよりもマシなのかもしれないが


「それは邪魔をされたことに怒り狂って我を忘れたからでしょうか」


こんな台詞でも表情も声色も変えない

そのことに疑問を持つのは俺だけなのか、話は進んでいく


「ルイは主のことを「夫との愛のカタチ」として大切にしていただけだからさ」


俺をちらりと見てから目を伏せて言ったその言葉で全て理解した気がした

納得出来る部分が多い


いつも店の者に向ける少し作った笑顔を俺にも向けていた

だけど確か一度だけ

一度だけ、父さんに向けるのと同じ笑顔を向けてくれたことがあった気がする


「それだけを大切に生きられるほどルイは強くなれなかったのさ」


俺をしっかりと見る

その瞳は少し潤んでいた


「悪く思わないでやってほしいんだよ」

「なんで母さんを庇う」


当然の疑問をぶつけるとアルは視線を逸らした


「ウチがルイと出会ったのは多分、ルイが一番輝いていたときだったんだよ」


それとこれになんの関係が


「ウチもこの町に来たのはねぇ、死のうとしてだったんだよ」


アルが?


「ルイに見つかってねぇ。店に誘われたのさ」


それで素直に拾われるような人間には思えないが

なにか口説き文句でもあったのだろうか


でも今は死のうとするなんて想像出来ないアルだ

特別な口説き文句ではなくても、なにか刺さるものがあったのかもしれない


「死ぬよりはきっと楽しいわよ」

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