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干天の慈雨  作者: ゆうま
30/57

ロイと2人の悪魔⑤

悪魔は人の魂を食べるらしい

そして、悪魔もまた、死ぬらしい


「――では、カイさんだけの悪魔になりましょう」


これは心中の提案だ

だけど流されたわけじゃない


寝食を繰り返すだけの毎日への疑問

生が苦しいというはっきりとした認識

言ってほしかった言葉


だからこの人となら

この人の悪魔になら、なれる


「私だけの?」

「はい」

「どうして?」


誰でも良い

でも本当の本当に誰でも良いわけじゃない

だって、カイさんが欲しい言葉をくれたから

知らないことを教えてくれたから


だからカイさんの悪魔になろうと思った

でもカイさんじゃなくて別の人が言ったとして

その人だけの悪魔になろうと思ったと思う


「もし出会った瞬間に運命を感じたなら、私はそれを信じません」


ほんの一部しか見えてないものに執着しても良いことなんてなにもない

だから私は運命を信じない

だけど私とカイさんは話しをした

それでも一部しか見えていないことには変わりない

だけど運命よりも確かなものだ


「でも今は運命を感じています」


面倒だから大部分を端折った

けど多分、大まかな意味は伝わる


「それじゃ不十分ですか?」

「――ううん。私も多分同じ。今は運命を感じてる」


カイさんは涙目だ

なんの涙なのか、私が知ることは永遠にないだろう


「だからあんな提案をしたんだと思う」


交渉成立だ


道中拾った薬草を咀嚼

半分くらいを飲み込んでカイさんにキスをした

舌を絡ませる、熱いキス


「カイさん」

「海里」

「かいり、飲み込んで」


喉が動く


「―――私の―――私だけの、悪魔――」


唇が重なる

もう必要なんてないキス

そもそもキスなんて必要じゃなかったけど

でも儀式みたいなのって大事でしょ


熱い、熱い、熱い、キス


毒が回り始めて意識が遠のき始める

それでもカイさんは――かいりは、キスを止めなかった

私はそれに応え続けた


「佐和」


それには対価が必要だ


誰にも呼んでもらえなかった

両親ですら呼ばなかったそれを大切だと思ったことはない

でも最後くらい、大事にしたい


「さわ」

「かいり」


――メイ、私はかいりの悪魔になった

かいりと一緒に死んだのは私

最後にかいりを呼んだのは私

かいりが最後に名前を呼んだのは


「――メ」


離れかけていた唇を無理に重ねる

私をそそのかしたのはあなたじゃない


駄目だよ、悪魔を裏切っちゃ


かいりが最後に名前を呼んだのは、私

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