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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第四幕・ラグナロク
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4-6雷帝と呼ばれし最強の実力

「天に掲げるは神聖なる道標。星を結びて導くは明日の光。起源たる煌めきは永久に大地照らす。例え漆黒に包まれようと、例え月が牙向こうとも、全てを照らす光とならん。星屑の聖剣(スケヴニング)!」


 未だ怯んでいる老人を他所に、セラフの剣を手に取り天井が吹き抜け、露わとなった夜空に掲げる。


 夜空は、一面に広がっているわけでもないのに数多くの星屑が淡く、されど強く光り、まるでこちらを暖かく、されど頑張れと熱く応援しているようだった。


 しかし所詮は意志のない石であり、太陽から照らされる光が反射しているだけ……いや、否だ。彼女たちにはそんなこと到底わかったものではない。だが、その光が太陽の力であることだけは、エリスだけが親から引き継がれた力で知ることができていた。


 ならばこそ、その力を活用せねばと考えた彼女は、星屑に集まる光を剣に宿すとっておきの魔法を編み出していた。とはいえ、普通の剣では宿してものの一秒で耐えれず壊れてしまっていた。だがそこに壊れることのない剣を使ったらどうなるだろうか。


 答えは至ってシンプル。大きな魔力に壊れることなく、一本の聖剣に。闇夜を照らす星屑の聖剣になるのだ。


「刻め、星屑!」


 天に掲げた淡く光る剣を思い切り振り下ろせば、小さな光る粒子が剣から放出され、トールのもとに飛んでいく。星の欠片のようなそれは、小さいながらも美しくされど強靭で、まるで小さな流星群がトールを襲っているようにしか見えない。


 流石の多さに避けきることはできず、鋭い刃物と化した光がまたたく間にトールの身体を包み込んだ。されど彼は怯むことを知らない。どれだけ身体が傷つこうとも彼は笑う。どうしようもなく絶え間ない攻撃から抜け出せないから?彼女が見違えるように強くなったから?否、それら全てが否だ。彼はやろうと思えばその危機を脱することができる。それにエリスの強さなど微塵も興味はない。ならばなぜ笑うのか。それはただただ()()()だけである。


 なにせ、傷つくことをなによりも好むマゾい老人だからだ。だが、傷つくのが快感でもあるが、傷つくのに執着するのは別の理由もあった。


「そういえば、エリスにはまだ見せたことが無かったよな。俺が雷帝と呼ばれた本来の意味を。なに、お前と同じように俺もちょっとした力があってなぁ……」


 わざと攻撃を受けながらもニヤけっ面が増し、言葉を吐いた刹那一瞬で光の粒子は消え去り、鼓膜が破れそうなほどの雷鳴が洞窟内に轟く。


 洞窟の中は土だらけ、絶縁体で一切電気を通さないからこそ当の本人も不利な場所と告げていた。なのにも関わらず今この場には電気が地を這っている摩訶不思議な現象が起こっている。


 否、そもそも土というのは完全に電気を通さないわけではない。土中の水分に通電することで、土だって電気を通す。電気を無効にするのは電気を地中深くまで通電させているから。そしてこうして大地を走るのは地中に通電する容量を超えているから。


「クハハハ……俺は電気を作れる体質でな。身体が傷つけば傷つくほど頭っから血が抜けて、電気が作れるんだ」


「ッ!これじゃあまるで……」


「逃げる場所もない。だろ?」


 不規則に走る青白い電気はかろうじて避けれる範囲ではあったが、不規則故にいつまで避けきれるかもわからず、攻撃を繰り出す間もまったくもって作れない。なんならどんどんと離されている。


 近づけば電気にやられ、遠くになれば聖剣から出せる遠距離の星屑も当たらなくなる。かろうじてセラフが間合いに入れるが、仮に今まで本気ではなかったとしたらそれこそ記憶と命の消耗戦になりかねない。とはいえこのままではきりがない。


「ッセラフ!」


「そうだよなぁ?この状態じゃあその天使しか攻めてこないよなぁ?」


 セラフの名を叫ぶと、その声に答えるように二本の剣を持ったセラフは宙を飛び、道中身体を捻ることで回転を作り、そのまま斬り刻む回転斬りを行う。だが、大地を這う雷でセラフが来ると予測していた彼は、隙きすら無い回転斬りを片手で、それも剣身をがっしりと掴む。もちろんと言っていいほど握った拳からは血が流れ出るが、たったそれだけでセラフの動きを完全に止めていた。


「幻影では、致命傷になるたび回復できていたようだったが……回復できない傷なら、どうする?」

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