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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第三幕・地下の街《スヴァルトアルヴヘイム》
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3-9穴の先②

 右を選択し、派手に食い荒らされた穴を進むこと数分。一行は地上に出ていた。


 それに真夜中の野原。凶暴な魔物もちらほら見えている。けれど少女達は一切気にすることなく。


「ほらぁ〜!右じゃなくて左だったじゃ〜ん!」


「はぁ……だから可能性の話ですよ?絶対なんて一言も言ってませんから。というか、絶対に辿り着くなんて馬鹿な考えを持っていたのは誰でしょうね?」


 先刻前、エリスは可能性があると言って右へと進むことにした。が確かに可能性の話であり、絶対にたどり着くという保証はない。


 なのに関わらずスコルは彼女の自信を感じ、確実にたどり着くとそう思ってしまっていた。


「ぐぬぬ……」


「さ、さっきもでしたけどスコルさんが珍しく唸ってる……」


「え、それ唸りなんです?貴女方、犬だからてっきり……」


 と息を飲み込むように、言葉を溜めるとその場に響くような犬の唸り声が響く。しかしその声はエリスの喉から確かに出ていた。


「こんな風に言うのかと思ってました」


「なんで狼の獣人の私達より、唸り声上手なんですかっ!?逆にどうやったのか気になりますけど!?」


「貴女達獣人は嫌いですけど、小動物は好きなので…… なにか文句あります?」


「いや……意外だなって……」


「……私だって可愛いものは好きです。そんなこと言ってたらぶった斬りますよぉ?ともあれもう一度潜りますよ。あまりここにいたら危険ですから」


 今は真夜中。危険な魔物もうじゃうじゃもいる野原でゆっくりと話している暇はない。それにこうしているうちにも、ヨルムンガンドの被害は出続けている。ならなおさらこの場に止まっている暇はない。


 けれども行動を移させてくれないのが自然。野原に湧き出る魔物が三人の行方を邪魔するように、穴を塞ぎだした。


 闇に溶ける体。長く伸びた尻尾。鋭い目付き。一目でいえば猫であった。が違う。それは二本足で立ち、伸びる尻尾は二本。さらに闇に溶ける体はとても筋肉質である。


 四本足の猫がどうやったら、そこまで筋肉質に、二本足で立てるのか不思議ではあるが、不思議だからこそ魔物である。


 一方、その横にいるのは、手と爪が過剰に発達した土竜。いや、それも魔物である。現にただならぬ殺気が放たれている上、通ってきた穴をなんの力か一瞬で埋めてしまったのだから。


「おや?一歩遅かったですねぇ。穴が塞がれてしまいましたよ」


「って呑気なこと言ってる場合じゃないよ~!倒さないとっ!」


「そうですねぇ。倒してヨルムンガンドも倒して、早く大っ嫌いな貴女達と解散したいですよぉ」


「そ、そんなに嫌なら組まなければよかったのでは……ともかくやりますよ!」


「あ、私は穴を塞いだ悪い子にお仕置しますねぇ?」


 ねっとりと、されども力強い殺気が放たれると共に、魔剣ダーインスレイヴの柄にそっと手を添える。一撃で仕留めるような鋭い眼差しで土竜を睨めば、自然とその魔物は死神にでもであったような震えをしだしていた。


 それだけ、早く終わらせたい気持ちで苛立っているのが丸出しだが、それも仕方ないことであった。なにせヨルムンガンドへの道を断たれたのだから。


「なら私達は」


「マッチョモンスターだね」


 一方で二人がかりで倒そうとしているのは、筋肉ムキムキのマッチョ猫。


 力では当分勝てそうにもない相手だが、いかにも遅そうであり魔法も通用しそうである。となれば少女達が取る行動は――攻めだ。


「久々に魔物と戦う気がするよ〜!ひっそりと練習もやってたんだからっ!加速(アクセル)とらっしゅ!」


 実家に帰った際新たに新調したナイフ。それを軽快に取り出し、加速(アクセル)で接近してから敵の横っ腹を切りつける単純な技。けれど練習する暇など殆どなく、逆に技として完成しているのか、少々不思議であった。


 が、スコルの手には確かに切りつけたという手応えが残り、続けざまに何度も切りつける。


 しかし、相手は動かず、反撃もしてこない。そこに違和感を抱いたのはハティだった。暗くても見えるには見えるが、液体の音も鉄の匂いもしない。


「スコルさん!一度戻ってきてください!」


「はーい」


 と、ピタリと攻撃がやみスコルが合流した刹那。二人は異常なまでに唖然とする。


 いや、ハティだけ感づいていたが、それでも驚くものだった。

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