3-6四大予言者
「原因なのだが……」
不可思議に言葉を止め、ゴクリと生唾を飲み込む程緊張が走る中、ゆっくりとアルヴィースの口が開く。
「原因なのだがな?えーとなんというか……すまぬ!現在進行形で判断できかねんのだ!」
「今の緊張した時間を返してくださいっス!?」
「いやぁ……本当にすまぬ。我らドワーフの四大予言者たるスズリ様でも『あ〜うん。近い内に獣人三人来るけど、その前にちょっとした厄災起きるかもね〜。んじゃおやすみ』とかめちゃくちゃ軽く言っててな……とりあえず分かっておるのが、ここ地底内が被害大であるということだ」
ハハハと苦笑いしながらも、頭を下げるアルヴィース。しかしながらそれは仕方の無いこと。何せ予言者の一人からの告が酷く、詳しくすらわからず、自力で調査を続ける他ないのだから。
四大予言者というのは、
真面目の北の予言者ノルズリ。
自由奔放な南の予言者スズリ。
ネガティブ思考な東の予言者アウストリ。
口数が少ない西の予言者ヴェストリ。
この四人は地底人。彼らの予言は確実とも言われ本来ならば人の街で活動している。しかし地底人は皆、太陽に当たると石化してしまう呪いが生まれつきに存在する。故に予言者はこの地底に身を置いており、ユグドラシルの心臓と言われることもある。
「ともかく一度ついてくれぬか?お主らに宿を提供したい。それに魔導書と兵器について話もあるしな」
「さすが覗き魔〜魔導書のこともあの兵器のことも知ってるんだ〜」
「断じて覗き魔ではない!監視だ!……じゃなくて早う来んか!」
袴の袖を揺らしハティ達を引き連れて歩き出す。けれども先程地底人の兵士は、未だこちらを睨みつけており、アルヴィースがいなければ確実に殺しにかかるような殺気も放っていた。
暫くついて行きたどり着いたのはちょっとした民家。といってもやはり石や土などを使った、地底人特有の民家。そこで立ち止まったからこそ、そこが少女達の宿であることは間違いがない。
「滞在する時はこの家を使ってくれて構わぬ。元々壊す予定だったしな。……ほれ鍵だ」
「あ、ありがとうございます」
「さてとりあえず、なにから話そうか……」
鍵を開け家の中へと入る少女達。しかし流石壊す予定の家。中は埃まみれで暗く、とても住めたような心地がしない家。けれども人が住むには十分なほど家具が充実していた。
「そ、それじゃあ……兵器のこと詳しく教えてください。お母さんから教えてもらったとはいえ、まだピンと来てませんし……」
「ふむ、終末か。よかろう。終末は世界を滅する兵器。世界に秘める魔力全てを引き換えに世界をリセット……つまり再構築する兵器だ。生き残れるものはいないと言っても良いほどの兵器。故に終末と書いてラグナロクと読むのだ」
「そこまで言いきれる自信は……」
「四大予言者全員の予言だからの。別に話しあったわけではないと言うのに、同じことを言いおったし間違いはない。なんなら確認も取れるぞ?……まぁ、スズリ様は寝ておると思うが」
「い、いえ。大丈夫です。でもそんな凄い予言者さん達なのに、なぜ今回のことがわからないんでしょう?」
ハティの言う通り、心臓たる予言者四人でもダークエルフが消え、魔物が消えたりしている今回の出来事の真相がわかっていない。いや、予言すらも曖昧になっている。
四人が揃いこの出来事の予言をすれば、絶対に何が原因であるかなどすぐに暴けるのではないのか。
ハティがそう思った矢先、深刻な顔を浮かべるアルヴィースは、あたかも思考を読み取ったように首を横に振り。
「ハティ。お主は恐らく四人で予言してしまえばと思っているだろう。だがの、解決法を探す過程で残る三人にも予言をして貰っていたのだ。して結果は宜しくない。絶対に外さぬ予言者四人とも首を横に振ってしまえば、殆ど為す術もなかろう?故に我ら地底人は、あんなピリピリした状態で総勢で地底捜索しておるのだ」
「なるほど……じゃあここではあまり動けなさそうですね。さっきも殺されかけましたし」
「ハハ……その節はすまぬな。後ほど叱っておく。しかしながらお主らが我らに協力してくれるのは助かる」
苦笑いをみせ、改めて部下の過ちについて頭を下げると、閉ざした扉が強く叩かれる。ただでさえボロく今にも壊れそうだというのに容赦もない。
「アルヴィース様!また被害が出ましタ!」
「なぬ……またか。して今回はどこだ!」
「それガ――」




