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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第三幕・地下の街《スヴァルトアルヴヘイム》
63/85

3-2旅は二人から三人に

「――それでアルミラージさんは帰る場所が無いから、ここに泊めてあげようって話ですよね?」


「そうしてくれるとありがたいっス!」


「ん〜……まぁ、また旅に出るから……散らかさない。私達を邪魔しない。この二つができるならいいですよ」


「わかったっス!」


 子供ながらも見事な敬礼を見せ、泊まれることに嬉しそうな笑みを浮かべていた。


 ――翌日、双子の人狼は魔導書の解放に向かうべく旅支度をしていた。


 向かう先は東の山を抜け、更に荒野を抜けた先にある活火山の麓巨人国(ヨトゥンヘイム)。文字通り巨人しか住まない国かつ、活火山麓だけあり、かなり暑い場所。


 遠い上に暑いと来るならばそれなりの用意は必須なのだ。


巨人国(ヨトゥンヘイム)ですか……名前しか聞いたことありませんが、本当に存在するんですね」


「ええ。ちなみにだけど、一つ一つの建物が大きいから、巷では『うなじが背中にくっつくほど高い城壁の国』とも言われてたわ」


「うへぇ……そんな所に行くの嫌だな〜。あ、でも暑くても寒くてもハティ成分は貰お〜」


「私の成分ってなんですかっ!?」


 などと日常茶飯事の会話をしているうちに、途中までの旅の支度が完了する。途中までなのはあまりにも長い距離のため、一度に行こうとすると動けないほどの荷物が必要になるからだ。


 それに馬車は持っておらず、最悪召喚に頼るしかない。だが魔力は温存せねばならず、召喚も頼れない。となれば一気に向かえず途中までしか行けないのだ。


 そして、二人はアルミラージに家を任せ、故郷を後にした。のだが……


「で、なんでアルミラージさんがいるんです?」


 鉄の森(ヤルンヴィド)を歩くこと数分、双子の後ろには留守番を頼んでたはずのアルミラージが着いてきていた。


「そのっスね……もしかしたらこの旅で記憶が戻るかなと思ったっス……すいませんっス!でも記憶戻るかもしれないからついて行きたいっス!」


「はぁ……外は危ないですから絶対に離れないでくださいね」


「はいっス!」


 着いてきているのがバレた時は少し悲しそうな顔を浮かべていたが、着いていけると知れば満面の笑みを浮かべる。


 しかし、笑みを浮かべるわがままアルミラージがついて来る許可を出したハティは、小さく溜息をつき再び歩みを進めていた。


 程なくして森を抜けた双子達。だが違和感を感じとっていた。というのも森を抜ける間も、抜けた先でも、魔物が一匹足りとも目に映らなかったのだ。


 普段、魔物ぐらいは森の中を彷徨っている。無論凶暴ではなく獣人や人は襲うことない。


 なのにも関わらず、一匹足りとも存在しなかった。


「不思議ですね……魔物がいないからか、時間が止まったみたいに感じます」


「そういえば静かだったよね〜」


「一応注意しながら進みましょうか」


「はいっス!」


 滅多なことがない限り魔物が見えないなど起こるはずもない。ならば不吉な予感しかせず、慎重になるのも自然的である。


 が、慎重に行動しても何も変わったところなど目につかない。後ろに見える森にだって変化は無いようにしか見えない。


 空も青く、地面は硬い。そんな当たり前のことしか、感じ取ることはできない。


 どれだけゆっくり進もうとも、素早く走ろうとも雲はゆっくり流れゆく。


 あまりにも静か故に、まるで別の世界にでも放り出された気分だった。


 ――それもそうだろう。少女達が知らぬ間に起きている現象に、気づいていないのだから。

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