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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第二幕・牙を穿て
46/85

2-30振り回されウォン

時は一度、ツクヨミがハティ達を連れていく時に戻る。

ハティ達が死国(ヘルヘイム)で争いを繰り広げる中。置いていかれたウォンはーー

 時は数時間戻る。


 女のような顔立ちのツクヨミが双子の人狼と九尾をつれその場を後にした直後、一人の獣人はぽつりとその場に残された。


 しかし、ただただ置いていかれた訳では無い。その場を離れる九尾から一つの頼み事を受けている。それは零の魔導書に描かれた試練を達成するために必要な“氷獄の実”を探し出すこと。


「氷獄の実を探せって言われたってなぁ……まぁ置いてかれてやることないからいいけど……って会計全部私かよ!はぁ……」


 探しだと言われても彼女は九尾の雇われ人兼冒険家。極寒の地(ニヴルヘイム)の地理には詳しくなく、ならば氷獄の実がなる木もどこにあるのか知るはずも無い。


 溜息をつきつつ会計に立つと、ある事を思いつく。それは、ここ極寒の地(ニヴルヘイム)の住民全員に聞けばいいのでは。ということ。


 時間も手間もかかるがその方が確実だと信じたウォンは、


「おい会計!」


「ふひゃはいっ!?」


 仕事中なのにも関わらず上着を着込み、袖に手を通していない人、それも声の高さからして女性である会計に声をかける。


「そんなに驚かなくてもいいだろ……と会計。ここで実る氷獄の実のことは知らないか?」


 と調理代の支払いを済ませつつ、会計に尋ねる。


「ひ、氷獄の実ですか……詳しくは知りませんけどここを出て隣の家に住んでる方に聞いてみてはどうでしょうか……あ、でもついこないだ人の街(ミズガルズ)の騎士さんが同じこと聞いていたような……?」


「は?」


「ひぃ!」


「……ふぅ」


「へぇ!?」


「ほ……って何やってんだ私……でその話は本当なのか?」


「ほ、本当です……で、でもそれ以外は私知らないので……」


 別に怒りながら尋ねているわけではないのだが、会計人は今にも泣きそうな程声が細く、目尻には水滴が留まっている。



 これ以上いてもその店員を泣かせてしまいそうだと、ウォンは仕方なく店を後にし隣の家へと訪ねることにした。


「ーー氷獄の実?そんなの知らないね!隣違いじゃないのかい!」


「ーー氷獄の実?はて、初めて聞く名だ。向かいの人知っとるんじゃなかろうかの?」


「ーー氷獄の実?知らないねぇ……隣の薬屋ならわかるかもねぇ」


「ーー氷獄の実?そんな名前のものは取り扱ってないですよ。あ、でも詳しい人なら向かいの調理屋の会計さん知ってるはずですけ……ど!?」


 と会計に言われた通りに聞き込みをするが、大外れ。ましてやあちらこちらに振り回され最後には振り出しに戻っていた。故か最後の方では既に怒りが頂点に達していた。


「ーーおい、会計!」


「ふひゃは……ってさ、さっきのお客様……」


「驚くならちゃんと驚けよ……じゃなくて良くもまあ振り回してくれたな!!」


「ひぃ!そ、そんなに怒らないでください〜!これは仕方ないんです!」


 怒りが頂点に達したが故に、涙目の会計に気を使うことなく強く言葉を吐き続ける。


「どう仕方ないんだよ!」


「す、すいません!……で、でも氷獄の実は忍耐も必要なんです……その忍耐があるかどうか確かめる必要があったんです……」


「はぁ!?」


「ひぃ!」


「それ飽きたから、早く教えろ」


「えぇぇ……お客様なんか強盗みたいです……よ?……結論から言うと、忍耐ないから教えれません……と言いたいですが、今苗が無いので特別に……」


 と、袖に手を通していないのにも関わらず、器用に紙を取り出すと、魔力で文字などを綴り始めた。


「こ、これ……書いてる場所に行ったら苗がないことわかると思います……あ、そういえば噂でしかないですが……白煉瓦(ハクレンガ)の塔の中にあるとかないとか……」


「……もう振り回されるのはゴメンだからこの紙のだけ回るか……」


 会計の最後の言葉を聞きつつ、彼女は一度髪に書かれた場所へと向かう。


 それも極寒の地(ニヴルヘイム)の街から少し離れた雪原……いや、分厚い氷で地面を埋め尽くす氷河地帯へ向かった。


「なんだ……これ……取り出す一度戻って帰り待った方がいいか……」


 程なくして紙の場所、氷河地帯にたどり着くが、確かに抉れている場所が見える。流石のウォンもこれはやばいと急いで極寒の地(ニヴルヘイム)の街へと戻り、ハティ達の帰りを待とうとしたその刹那。


「うきゃっ!」と驚いた声なのかなんなのかわからない三人の声と、


「痛ったた……腰が死ぬところだったよ……」


 確かに聞こえたその声を頼りに、急いで向かうと。


「おばあちゃんじゃないんだから〜」


「ほう?今くそババアって言ったかい?」


 聞き慣れた声で、言い争いのようにも聞こえる会話が耳を貫き、一つため息をついてから。


「まぁ、その姿じゃ仕方ないだろ……はぁ漸く戻ってきた……」


 と、九尾の頭を軽く叩いてからその言葉を吐いた。

45話を読んでいただきありがとうございます

急にウォンの話!?なんて驚いたかもしれないですが、これを入れないとどっから情報手に入れたのかわからなくなるので入れたのです。


次回は2日後か3日後。お楽しみに!

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