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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第二幕・牙を穿て
38/85

2-22九尾の能力

料理店に導かれる様にして足を踏み入れると、盗人のツクヨミが呑気にくつろいでいたのだがーー

 材料持ち込み可の料理店にて、猪を使った料理が振る舞われた数分後。


 盗人少年は逃げられないようにと料理を振る舞われ、その場に残っていた。


「ところでガキ」


「おい、僕はガキじゃないぞ!」


「私からしたらみんなガキだ。それよりもグニパヘリルを通ったってことはヘルの関係者かい?」


 ヘルの名が九尾の口から流れ出ると、きょとんと力が抜けた顔を晒す。


「ヘ、ヘル様のことを知ってるのか……?」


「まぁね。こいつらの親と関係があるくらいだ」


「……ヘル様を知っているのであれば、話は別だ。狐と人狼だけ着いてこい」


「私は!?」


「獣臭いから嫌だ。それにヘル様のことを知らないだろ」


「うぐっ……」


「というわけで三人とも着いてきて。魔導書もそこにある……返してもらえるかは知らないけど」


 ウォンは男寄りといえど、内心は乙女。本当の男に臭いと、獣臭いと言われてはかなわなく、酷く落ち込んでしまう。だが、人狼少女も九つの尻尾を持つ彼女も、ずっと猪を担いでいれば仕方ないと、励ましの言葉はかけることはなかった。


「ウォン。とりあえずあんたは氷獄の実を付ける木を探しな。元々それが目的で来てるんだしね」


「あ、あぁ……ついでに風呂も入っておく……」


 その言葉を最後に、少女達とウォンは一度離れ離れになる。


 再び時間がたち、夕方。真っ赤に燃える太陽が沈む頃ーー極寒の地(ニヴルヘイム)では太陽は完全に沈まないがーー少年の歩みを頼りに路地裏を歩いていた。


「ところで〜君は誰なの〜?」


「僕はツクヨミ。それ以外は教えない」


「ケチ〜」「ケチですね」「ケチだね」


「そんなにケチって言わなくても!?……でも教えないものは教えないんだ。さ、着いたよ」


 雪が降り頻る中、入り組んだ道を進んだ先に開ききった一つの黒曜門が現れていた。


 更に門の前には、番犬ことガルムも立っている。そのことから黒曜門はグニパヘリルだと、冥府の門だと一目でわかる事になる。が、先ほどの路地裏とは全く別の路地裏。背景も違ければ、建物も違う。唯一同じというならば、雪が降っている事だけだ。


「おかえりなさいです。ツクヨミ……ってさっきの*@!J(ピーー)!ってあれ?あの暴力女は居ねぇです?」


「ウォンなら〜ガルムの後ろにいるよ〜」


「なっ!?って居ねぇです!騙されたのです!このガルムを騙しやがったです!!」


「何やってるんだい……ウォンなら別行動中さ。あいつが何やったかは……なるほど、ウォンが失礼したね。耳痛かったろう?」


 ピクっとピンと立った金色の耳を揺らしたと思えば、その場にいなかったはずなのに、まるで全てを見たかの如くウォンの行動を言い当て、謝罪する。


 これが彼女の情報網の正体。優しく吹き付ける風の()を聞き、大地の()を聞き、あらゆる物体、生物の()を聞き情報網は成立している。もはやユグドラシルそのものが記憶に等しいが、厳密には違う。彼女ですら知らないものも世の中にはあり、全てを聞き、知ることができないからだ。


 とはいえ、今はその能力に驚き、ガルムが固まってしまっていることが問題ではあるのだが。


「仲間がした事は、私にも責任があるからね。本当は嫌だが詫びに私の尻尾、一本だけ触っていいぞ?」


「あんなに嫌がってたのにあっさり!?」


「酷いよ九尾〜」


「たわけ、一本だけだって言ってるだろう?それに詫びのつもりだ。私の尻尾はもふもふで気持ちいいと評判がよかったからな。特に目の前の二人から」


 しかしやはり抵抗が生まれ、直ぐには尻尾を差し出すことなかった。


 とはいえ、確かに金色で丁寧に手入れされた尻尾は、今でも見るものを魅了させまいと香り良く、触りたい邪念を増大させる程ふわっとしている。暖を取ることもできるし、九本使えばもふもふコートにもなる優れた尻尾ならばこそ、詫びになるとふんだのだろう。


 そして刹那。ガルムは無意識のうちに九尾の尻尾を触り始めた。


 さわさわ……


 ふわふわ……


 もふもふ……


 と双子がやったようにこれでもかとモフり倒す。


「はぁう……こんな上玉をぶら下げてるなんて……羨ましいです。どうやったらこんなに柔らかくなりやがるですか……どうやったらこんなに大きくなりやがるですか!」


「お、お前さんもいいのを持ってるだろう……うひゃう!……さ、触り方が激しくないかい……」


「そんなことねぇです!ここまでもふもふで……もちっとしたような触感。と思えば凄くサラサラしてていつまでも触りてぇです!いや、お布団代わりにしてぇです!」


「それはできない!というか、もういいだろう!?ふにゃ!?」


「離さねぇです!この尻尾はもう私のものだです!」


「お、お前さんの物じゃない!私のだ!……ふやっ!な、なぁもういいだ……うにぁ!そこはっ!」


 さわりさわり、もふりもふり。尻尾はまるで枕だと、顔を填めて行く。


 ガルム本人が満足するまで。その地獄?は終わるとなく続いた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

久々のもふもふ回。楽しんでいただけましたか?

次回はとうとう死国、ヘルヘイムへ!

お楽しみに!

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