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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第二幕・牙を穿て
29/85

2-13Gibbous Moon Night②

27話まで読んでいただきありがとうございます。

28話、ムスペルヘイムについて語られる話ですが、ここに来て新キャラ登場致します。それも元がマニアックな獣人です。お楽しみに!

「え、ええ。伝承の国は龍国(ムスペルヘイム)で間違いないわ。だけど……」


「ああ、ハティとスコルは龍国(ムスペルヘイム)は知らないんだね」


「それもあるんだけど、伝承の国を知ってるなんて、貴女一体何者?」


「九尾っていってるだろう?……まぁ、そうだね情報屋って所さ」


 幼き容姿で葉巻を口から離し、煙を吹いてからキシシと笑みを浮かべる。


 それは不気味さが感じられる笑み……ではなく自慢げの笑み。先程の情報といい、彼女の情報網は確かに自慢できるほどだ。


 しかし相変わらずどこから情報を入手しているのかは話すことは無い。


 そして葉巻の先端が灰になると、灰皿を取り出し灰を落とす。


龍国(ムスペルヘイム)は文字通り龍が住む国だ。今となっては存在しない伝承の国って言われてる」


「でも存在するんですよね?」


「……その通り。龍国(ムスペルヘイム)は存在する。消えた理由は龍狩り。ここの国騎士ですら龍を狩り殺すから私等が保護した」


 突如、こつこつと足を鳴る音が聞こえたと思えば、誰かが話に入ってくる。


 声を辿ると闇に溶ける人の影が見える。しかし暗闇を見ることができるハティとスコルでも、その姿は捉えることが出きず、唯一わかるのは女性特有の高い声だということだ。


「ようやく終わったかい、ウォン・バニップ」


「あぁ。所で私がいない間、一体何があったんだ?人狼もいるし、帰ってきたらあれほどの殺戮があったなんて……ただ事じゃないだろ」


「それは後で説明するさ。で早速で悪いんだけど“龍国(ムスペルヘイム)の近況を教えてくれ”」


「ってちょっと待ってください!誰ですか!?」


 人影が九尾の元に歩きつつ、暗闇が苦手なのか、はたまたハティ達が見えていないのを知ってか、ガシャガシャと腰に掛けていたランタンに火を灯す。


 刹那、人影は鮮明に姿を現す。


 粗く切られた短めの灰髪。腕や足を覆う柔らかな灰色の毛。顔にも柔らかな灰色の毛がふわっと毛並みが揃い生えており、鼻筋も形も動物そのもの。しかしふくよかに育った双山が、人影を獣人だと、女だとわからせる。されども尻尾と耳は無い。


 否。尻尾に耳は小さく隠れてしまっているだけである。


「なんだマジマジと見て。なにかついてるか?」


「艶があって綺麗な毛並みだな〜って〜」


「そんな事かくだらないな。あ、私はウォン・バニップだ。職業冒険家」


「わ、私達はーー」


「人狼の名など聞くだけで耳が腐る」


 サラッと中々冷たい対応をしつつ、己の事を簡潔に話す。されども本題は忘れてはおらず、直ぐに変えようとする。いや、急いでるのかと思うほど少女達が言葉を発する前に、龍国(ムスペルヘイム)について話し始める。


「で、龍国(ムスペルヘイム)だが、赤龍(エキドナ)青龍(リヴァイアサン)が喧嘩を始め、火山が活発になり始めてる。それとどこから嗅ぎつけたのか国騎士も来た。両方をふまえ結界を貼っておいたが大丈夫だったか?」


「大丈夫さ。それとウォン。あんたにひとつ頼みたいことがあるんだ」


「嫌だ」


「おいおい、まだ何も言ってないよ?でだ。スコルに戦闘を教えてやってくれないか?」


「嫌だ。いくら九尾の頼みでも人狼には関わりたくない。というか九尾こそ、なぜ人狼に手を貸している?」


 双子をそっちのけで話が進んだと思うと、訓練の話に移行する。しかしウォンは断固拒否。遠くに出ていたウォンもまた、人の街(ミズガルズ)に浸かり人狼を差別してるのだ。


 証拠に彼女の顔が、ハティ達を見る目が見下しの目である。ならばと九尾は先程の出来事と、腕輪を外した事、魔導書の事を教え、説得を試みる。


 それから数分後。


「わかった。そんなに言うなら教えてやる。勿論厳しくな」


「って!ちょっと待ちなさいよあんた達!」


「うおわっ!?何だこの小さいの!」


「……最近似たようなこと言われた気がするわ……そうじゃなくて、この娘達の意見を聞かずに、好き勝手きめるんじゃないわよ。困ってるじゃないの」


 勝手に戦闘を教わることになりかけたが、先程といい、今といい、いくらなんでも勝手すぎると、妖精が止めに入る。


 確かに妖精の言う通り、少女達の行動がほぼ九尾によって決められている。それも少女達の言葉など聞く気もなく、未だ信用されていないのが目に見えていた。


 否。九尾は違う。ただただハティ達が旧友のフェンリルとやることが似ているからと、フェンリルの娘だからと気合が入りすぎているのだ。


「あー……なら改めて聞くよ。ハティ、スコル。あんたらはどうしたい?返事は明日のこの時間まで。それまでに考えをまとめな」

28話読んでいただきありがとうございます!

はい、ウォン・バニップさんが参戦しました!

ウォンさんの元動物、わかる人いますか?

多分名前見てわかる人はわかりますね。そうウォンバット (祖先バニップ)です!

ウォンバットは触ったことないですが、とてももふもふしてそうで、いつかもふもふしたいです。

さて、次回は③。明日投稿です。お楽しみに!

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