2-12Gibbous Moon Night①
26話まで読んで下さりありがとうございます!
この話のタイトル「Gibbous Moon Night」は月の満ち欠けの夜という意味 (だったはず)です。
そんなことはさておき、今回二つの試練が増えます。
一つは炎系、一つは氷系です。詳しくは本文にて!
なんやかんやで働かされた双子達は、獣人が集う家の地下に来ていた。
誘導の妖精を呼ぶために借りたのだ。だが未だ九尾は地下への行き方を教えることは無く、故に地下へ向かうにも九尾が付いて来ていた。
「試練と導きを記す誘導の妖精!今ここに現れよ!」
魔導書第一頁、誘導の妖精を唱えると、先日妖精と出会った時のように、魔導書が光り球体が現れる。その光こそ妖精本来の姿であるが、そのままでは話すことなどままならない。故に魔導書の光りとハティの魔力を吸い、小さな人型の妖精へ変化する。
「珍しいわね。ハティが私を呼ぶなんて」
「ほう、それがその魔導書の妖精かい!」
刹那、一緒に着いてきていた九尾が珍しい物見たさでずいっと妖精に近寄る。だが、次の瞬間、九尾に向かって、言ってはならない言葉を発してしまった。
「わっ!?な、何この子供!」
「子供?妖精だって言うのに、この私を子供扱いかい……へぇ、どう捌いてやろうかね?まずは羽から……」
「ちょっ!ハティ!この人怖いんだけど!?助けて!?」
「九尾さん〜サッちゃん困ってるからやめたげて〜」
「……まぁいいだろう。だがね、妖精。次私の事を子供扱いしたら羽をもぎ取るからね。こう見えても大人なんだからね。それと私は九尾だ」
やはり九尾は怒ってしまった。されどもそれは仕方の無い話。なにせ彼女の容姿は、黄金色の髪とピンと立つ狐耳を持つ小さな子供そのもので、大人と言われても信じ難いのだから。
「わ、わかったわ……ごめんなさいね九尾。それで用があって呼んだんでしょ?」
「あ、はい。三ページの牙を穿てについてなんですがーー」
妖精自身、驚くことは先日で慣れてしまっている。ならば驚くことはない……のはただの偏見に過ぎない。目の前にいる九尾が子供の容姿なのにも関わらず、大人だと言うのが未だに信じられないからだ。
されども、信じ難い気持ちは表に出すことは無く、ハティの話をただ聞き続けていた。
「ーーなるほどね。それじゃあ牙を穿て以外の試練を解放するわね」
牙を穿ての目的である黒蝕狼の討伐は厳しいとハティの説明で知らされ、妖精は魔導書に手を翳す。刹那、閃光のように、されども弱い光が瞬き自然と魔導書のページが捲られ、
六ページには『獄炎の雫を飲み込め』
十ページには『氷獄の実を喰らえ』
この二つが解放条件と共に綴られた。
「ってこれも難しくないですか!?」
しかし、ハティが驚いたようにこれらの試練も難易度は高かった。
六ページの『獄炎の雫を飲み込め』は‘’ユグドラシルーーハティ達獣人や、人などが住む大地の名称ーーの果てにある伝承の国。そこに満月の夜、獄炎の一雫が落ちる場所が出現する”
と、
十ページの『氷獄の実を喰らえ』は‘’ユグドラシルの最北端に実る氷木。絶対零度の如く凍える新月にその実は落ちる”
と、確かに難易度が高く、時期を間違えれば、クリアすることも出来ないものだった。
しかし妖精曰く、これはまだ簡単なものだという。何せもっと難しい試練もあるというのだから。
「伝承の国に最北端の氷獄ねぇ……全部フェンリルが行った場所かい?」
「ええ、そうよってフェンリルのこと知ってるのね」
「まあね。昔からの知り合いなんだ。それと、伝承の国っていうと龍国かい?」
再び葉巻をふわもふな金色の尻尾から取り出し、火をつけ吸い始めると、キリッと真剣な眼差しで伝承の国について聞き始めた。
読んでいただきありがとうございます。
久々の英語タイトルですが、これで幕が変わることはありません。
さて、次回は②。ムスペルヘイムについて語られつつ新キャラが登場致します。投稿日は明日!お楽しみに!