2-8知られざる真実
22話まで読んでいただきありがとうございます。
もふもふふわふわ、もふもふふわふわ
尻尾を触りすぎて怒られる23話です
「ーー私の尻尾を一時間たっぷり触ったんだ、それなりの覚悟はあるんだろうね……?」
「す、すいません……つい夢中になってしまって……」
「でも~すっごいもふもふでふわふわだったからまた触りたい~」
「それはわかります……じゃなくて!本当に申し訳ないです……」
九尾の金色の尻尾をもふり続け、かれこれ一時間。その後に待っていたのは九尾の怒り。双子のハティとスコルは九尾の怒りを受け、やりすぎたと反省するが、それでも懲りることはない。カバンに鈴を付けつつも極上の羽毛布団のように、天日干ししたタオルのように柔らかい尻尾をまた触れたいと思っているのだから。
「はぁ……全く、尻尾の手入れで一日かかる時あるんだから止めてほしいものだね。それはそうと、この後どうすんだい?」
「ミズガルズを一通り歩いた後、これの情報を探そうと思いまして」
魔導書をぱらっと捲り、“牙を穿て”の項目を見せる。しかしその項目は牙を穿ての文字と、魔物のシルエットであろう黒い絵が描かれていた。
「ほぅ、魔導書が依頼を出すなんて珍しいね。それにしてもこの魔物……恐らく黒蝕狼ゲルド・ウルフだね」
「知ってるの~?」
「まぁね。でも今あんたらが探してる魔物は……この国が保護してるはずさ。戦争に使うとか、色々噂があるけどね」
「せ、戦争に……?ってなんでそんなことまで知ってるんですか?」
確かに彼女は獣人といえど、国家機密になりそうなことも知っている。一体どこでその情報を手に入れているのか、それは不思議でしかない。
「私は情報通でね。大体のことは知ってるのさ。例えば……昨日あんたら酒飲んだね?それでお前さんが暴走した……あ、他の情報もーー」
「どこから入手したんですかその情報!?」
「ナイショ」
「ええぇ!?」
キシシと少し不気味な笑みを浮かべつつハティ達の事をずっと見ていたかのように、前日の出来事を全て当ててみせる。だが、明らかに一緒にいなければわかる事の無いことですらも彼女は知っていた。
例えば、ハティがスコルの顔に落書きしたこと。
例えば、スコルがハティの下着を盗り、自身の荷物の中にに納めていること。
などである。
それらも情報通の証拠として彼女達に教えるが、情報が情報で喧嘩が勃発してしまう。
「ハティが私に落書」
「下着がよく無くなるなって思ってたんですよ~スコルさん?」
話を遮るようにしてゴミを見るような目で、かつ笑みを浮かべつつスコルに言いよる。それも今までにないほどハティの目は笑ってなく、激怒しているのが見て取れる。
「わ、私知らないよ~!偽情報だよ~!」
「いんや、本当だね。荷物に入ってるさ」
「な、なんで知って……あっ……ち、違うよ~誤解だよ~ハティ~!」
「私何も言ってませんけど?あと、やっぱりスコルさんと距離を置くことにします」
ハティにとって知りたくなかった事実を聞かされると、双子なのか疑いたくなるほどスコルをドン引きしつつ、再び距離を取る。
そのためかハティのことが大好きなスコルは、知られて欲しくないことを知られ落ち込み、また涙目になっていた。
「ふぇぇぇ~」
「これでわかっただろう?それでどうするんだい?」
「あ、それはもちろんーー」
数分後。彼女達は地上へと戻り、再び獣人が集う家に入る。
直後、思いもよらぬ光景がハティ、スコル、九尾の目に入った。
「遅かったじゃないですか九尾……いや九尾狐狸。あまりにも遅いからこちらで少し楽しませてもらいましたよ」
「やっぱりあんたみたいなクソガキを入れるんじゃなかったよ……さっさとそいつから手を離しな!」
そこは紅く染め上げられており、殺気に満ち溢れたエリスの手は獣人の首を強く、恨みを晴らすように強く握りしめていた。
23話読んでいただきありがとうございます!
にしても双子達、毎日喧嘩してませんかね?というかスコルさん、まさかハティの下着を大切に保管するなんて……
さてさて次回『裏の顔』お楽しみに!