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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第二幕・牙を穿て
19/85

2-3秘密の地下

「ちょっと待ちな!」


 追い出されとぼとぼ歩くと、その言葉が三人の耳を突き抜ける。


 振り向くと誰もいない……のではなく、ハティ達の足元に先程もの九尾がちょこんと座っていた。


 まさにその狐がハティ達を止めたのだろう。


「って、エリス……まぁいい。人狼の二人、ちょっとついて来い」


 狐は、とても可愛らしく金色の九つの尻尾を揺らしつつトテトテトテと自らの四本足でゆっくりと……いや狐にとっては普通の歩みだが何せ三十センチ程の小さな身体だ。その分歩幅も小さくゆっくりなのである。


 残されたエリスが無言で手を振るなか、ゆっくりと歩く九尾について行く少女達の行先は、この建物の横にある路地を通った先にある場所。いわば裏手にあたる所だ。


 無論の中からも繋がってはいるが、先程の獣人達が人狼を睨みつけ敵対視している。それ故に中を通らず回り道をしたのだろうか。


「あんたらちょっとだけ目瞑ってな」


「急にどうしたんですか?」


「いいから目を瞑むりな。それとも何かい目潰しされたいかい?」


 裏手に回るや否や、くるりと双子に身体を向け目を瞑ることを強制してくる九尾狐。


 だがなぜここに連れてきて目を瞑らせるのか、それを聞こうとするも脅しで誤魔化されてしまう。


 目を瞑るまで狐もただちょこんと座り続ける。目を瞑らなければ本当に目を潰されそうなため少女達は目を瞑ることにする。


 それから先は少女達は何が起きたかわからない。言えるのは、目を開けていいぞと言われた時に既に地下へと続く階段ができあがっていたことくらい。


 それも音も立てずに現れたのだから不思議でしかない。


 一体何をしたのか。九尾の様子を見るからにそれも流石に教えてくれることもなさそうだ。俗に言う企業秘密というものだろう。


「さぁ、入りな。話はそこでする。なぁに話をするだけさ。別に食ったりなんかしないよ」


 と緊張からか、はたまた不思議さに自然と言葉が出ず硬い表情を見せる双子をみて笑いつつその言葉を放つ。


 しかし流石にそこまではといわんばかりに双子の脚は進まない。それどころか一歩下がってしまう程だ。


「ええい!何を躊躇(ちゅうちょ)してるんだい。とっとと入りな!」


 狐は呆れ顔を浮かべると共に双子の後ろに回るやいなや、力ずくで少女達を押す。


 とはいえ身長三十センチと明らかに双子との身長差があり、どれだけ狐が少女達を押そうともビクともしない。


 否、押してもビクともしない事など狐は最初から知っている。それでもなお押し続けるのは、少女達にどうしてもその中に入ってもらいたいという意志を伝えるためだ。


 意思が伝わると、地下へと続く階段を一歩。また一歩と降りる。そこはとても暗く、されども獣や獣人にとっては明るい場所だというのが少女達にはわかる。


 しかしまだ階段は続いており、先へと進んでいくとちょっとした広間に出るが、やはりそこも獣や獣人にとっては明るく見える場所だった。


「やっとここまで来れた……全くあんたら私が追い出したからって警戒し過ぎじゃないかい?」


「仕方ないじゃん~地味に怖かったし。急にあんなこと言われたしさ~」


「それより、ここに連れてきて私達になんのようなんですか?流石に教えてください」


「ああ、いいだろう。ここならあいつも聞いてないだろうからね」


 ここまで来て何も無いというわけはないだろうと、改めて九尾狐に問いただすと、先程までの口が堅い九尾狐はどこに行ったのか、すぐさまハティの問いに口調を若干荒くしつつ、驚くべき言葉が彼女の口から発せられた。


「あんたらあのバカお……じゃなくて、フェンリルの子供だろう?」

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