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双子獣人と不思議な魔導書  作者: 夜色シアン
第一幕・擬態者の核を砕け
10/85

1-9取り調べ

「おらおらァ!邪魔だァ!」


 人の街、ミズガルズ。その中央には人の街(ミズガルズ)を象徴するように建てられた大きな城がある。


 その城に向かいつつ声を荒らげているのは、鋼鉄の鎧を纏った一人の男。よく見れば手に縄を持ち何かを引っ張って走っている。


 “何か”は遠くからも、近くからも分からない。というのも彼の豪快な走りで、地面の土が舞い上がり土煙となって、彼の後ろ……つまり縄の先にある物を隠してしまっているのだ。


 そして彼が街を歩く人々を避けながら向かう城の周囲には、一定間隔に離れた近衛兵が警備として立っている。なのにも関わらずその男の走り……いや突進で城壁が崩れることとなる。


 だが城壁が倒壊しようと決して近衛兵は、もう何度目だと言わんばかりの呆れたような顔色を浮かべている。


 どうやら彼の突進で城壁が壊れるのは日常茶飯事らしく、ちゃんと城門から入るようにと鎧の男に注意などしても変わることは一切ない。それ故なのか注意することを諦め、毎度の如く壊されるのならば自分たちで直そうと、近衛兵の数人が魔法禁忌区域の人の街(ミズガルズ)で一部の人間に使用許可が降りている修復魔法〈修復(リライズ)〉を使用し壁の修復作業を行うことにしているのである。


 だが鎧の男は自身の突進で城壁が崩れたことなど一切気にせず、更には謝ることもなく、縄を引きずり城内地下へと向かう。


「あ、おかえりなさい。先ぱ――」


 ――途中、これまた鎧を纏った癖毛が目立つ黄緑の短い髪の女性とすれ違うが、彼の走りが早すぎて、少女が言葉を完全に言いきる前に地下へと突入した。


 ズザザザという靴が地面との摩擦で鳴り響く音を立て、急に止まるのだが、その反動からか縄に繋がっていた二人の少女、ハティとスコルは急に止まれず前に吹き飛ぶこととなる。


 しかし怪我はさせまいと男がしっかりと止め、近くにあった貧相な部屋に連れ込むと、縄を解き力強く椅子に座らせる。


 流石に連れて行かれている間、砂埃をずっと浴びていたため髪も顔も茶色くなっていた双子。更に砂が口に入ったのか噎せ返っていた。


「ゲホゲホ……あ、あの……ここはどこですか?」


「城の地下だな。それがどうした」


「なんで私達を連れてきたの~?もしかして誘拐?」


「誘拐ではないが……というか、しらを切る気か!?禁忌指定の魔道書の魔法を使っておいて!?」


 と、狭い部屋の中なのにも関わらず、鎧を纏う男は、これでもかというくらいの大声で少女たちを問いつめる。


「それで!お前達は誰で、なんで禁忌指定されてる魔法を使ったんだァ!?」


「え、えっと……なんて説明したらいいんでしょうか?」


「いや、知らねぇよ。ていうかそれを俺に聞くなよ」


 流石に少女達は気迫負けし、彼の言う事を聞かねばここから出ることは無理だと悟る。しかし魔法を使った経緯を話せば、人狼であるとバレてしまう。故に上手く説明も話もできないのだ。


「ハティ~この人怖い」


「スコルさん、我慢です」


「はぁ……でスコルさん、ハティさんよ。なんで魔法を使ったんだ?」


「「なんで名前知ってるの」ですか!?」


「今、自分から言ったよなぁ!?」


 どうやら双子の姉妹は自分から名前を言ったことを全く自覚していないらしい。その上、少女達にそんな気はないだろうが、男とのやり取りがちょっとした夫婦漫才のように聞こえてくる程、愉快な会話を弾ませている。


 そんなことは知らず、困った表情を見せる少女達はどうにか解決方法を見出そうとしていたその時。ガチャッと部屋の扉が開いた。


「ゼウス先輩!!ただでさえ先輩の顔怖いのにそれじゃダメですよ!!隣に変態がいますから、ここは私に任せて、隣の人を担当してください!」


「う……そ、そんなに怖いか……まあ、それなら仕方ない。じゃあ、あと頼むぞエリス」


「はい!……てことで、ここからは私、エリスが話を聞きますね?」


 常に大きな声で話す鎧の男ーーゼウスと少女達がいる部屋に、先程ゼウスが猛烈な速さですれ違っていた、癖毛が目立つ黄緑の短髪の一人の女性ーーエリスがこの部屋にやってきたのだ。


 だが彼女の立場は簡単に担当を替えれる程上ではない。極端な話下の下である。それなのにも関わらず交代を申し出て、あっさりと受け入れる男。ゼウスとエリスの二人しか騎士がいない地下だからこそ、男は受け入れたのだ。


「言い難いこととかあったら言わなくてもいいからね?でも、この魔道感知器が魔法を感知しちゃった以上……ってあれ?感知器の反応が……もしかしてまだ魔法使ってる?」


「は……はい」


「それじゃあ魔法を解除してもらっていいかな?大丈夫。さっきの先輩と違って何もしないから……ね?」

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