第92話 イリヤ再び
時間通り!久しぶりな気がするぞ…
朝起きて、男に戻って初めてリンと顔を合わして挨拶をした。そして瀕死になりました。
「ん、どうしたのお兄ちゃん?」
死にました。
以上、今朝の一幕なのだが…まさか俺がお兄ちゃんと呼ばれる日が来るとは…最高かよ!!
「…さっきからユウキさんキモくないですか?」
「はいなのです…ニヤニヤしてデレデレして、最高にキモいのです…」
「2人とも辛辣すぎるんだけど!!?」
朝食を食べ終えた俺達は、依頼達成の報告をする為にギルドへと向かっていた。
道すがら商店を見て周り、日用品などを買い足しながら進んでいた為9時過ぎに宿を出たはずなのに…まだ着かない…
ちなみに今は11時過ぎだ
「おい!そろそろ行くぞ!リンの登録もしないといけないんだからな?」
「ま、ま待ってください!後あそこのお店に…」
「はぁ…もういいよ…リン、ルビー先に行くぞ」
「ん、わかった」
「お姉ちゃん達先行ってるよー!」
買い物慣れしていないリンと最初から買い物に興味ないルビーを連れて、先に冒険者ギルドへと行くことにする。あと一軒!で何軒回ったと思ってるんだ!?
しばらく肉抜きだな…
「2人とも疲れてないか?」
「ん、大丈夫だよ…でも、手を握って欲しい」
「あー、結構人多いから逸れたら大変だもんな…いいぞ!ルビーはどうする?」
「このままでいいよー♪」
ルビーを肩車し、右手でリンと手を繋ぎながら歩いていると、周りの奥様方からは微笑ましい視線を…そして野郎どもからは殺気の宿った視線を頂戴する。
「ん、見られてる?」
「やっぱ気になるか?」
「んーん、大丈夫だよお兄ちゃん」
「くっ…やっぱまだ慣れないなぁ…」
大丈夫、そう微笑みながらお兄ちゃんと言われると死にそうになる。
お兄ちゃん耐性ゼロの俺には効果は抜群なのだ。
「あっ!パパ!見えてきたよー!」
一人で悶えていると、突如として頭をペシペシ叩かれ強制的に現実に戻される。
「うん?おっ、本当だ…」
程なくして冒険者ギルドの前まで辿り着き、リンの方を見ると、何処と無く緊張している面持ちだった。
大丈夫。そう言い聞かせるように繋いでいた手をギュッと握りしめてくるリンに、俺も握り返してやる。
そして、冒険者ギルドに足を踏み入れた瞬間、みんな驚いたように此方を見てくる。
「…なんだ?」
もしや!?と思いスキルを確認したが何も異常は無く、この前依頼を受注した時と変わらぬ姿になっている。
「ユウキお兄ちゃん…この人達に何かしたの?」
「いや、何もしてないぞ?」
「あははー♪みんなお化け見た時みたいに驚いてるよー♪前のママみたいな顔してるー!」
「え?お化け見たことあんの?…それよりもお化け見たときの顔…!?まさか!?」
まさかこいつら!俺が死んで死霊になってここに来たと思ってるのか!?
「おいお前ら!俺は死んでないからな?そのやべぇもん見てるって顔やめろ!モンドさんも早くギルド長に帰って来たと伝えてください!」
「あ、あぁ…すまん…本当に生きてるんだよな…?」
「いいから早よ行け!」
「わ、わかった!ちょっと待っててくれ!」
ドタドタと慌てながら奥へ引っ込んで行くモンドさんを溜息混じりに見送り、居心地の悪そうなリンの気を紛らわせる為に話をしてごまかしていると、奥からギルド長本人がわざわざやってきた。
「いやー!早かったね!君たちに頼んでよかっ…あれ?この前のメンバーは?もしかして…」
「いや、生きてるぞ?今はここに向かう途中の店を梯子してるだけだ」
「なるほどね…女性の買い物は長いからなぁ…っとそんなことよりも依頼は達成したってことでいいのかな?」
「あぁ、もちろんだ…だが、話さなければいけない事が結構あるので…奥に行っていいですかね?」
「…なるほど、平和ではなさそうだね…とりあえずモンド!彼等の依頼達成を本部へと通達!彼等の冒険者ランクをSまで格上げしといて!んじゃ、行こうか?」
「わかった…けどいいんですか?いきなりSに引き上げて…」
ギルド内がてんやわんやの大騒ぎになってるけど…イリヤさんはしてやったりって顔をしている。一発ゲンコツを叩き込みたいが、見た目では想像できないほど年上の方なのでやめておこう。
「ふふん!君たちがD級なんておかしいからね!これで緊急事態に君たちを招集する事ができるんだ〜」
なるほど、俺達を自由に動かせるようにしたかったのか…まぁ、俺たちが動かないといけないほどの案件なら許すか…
「あっ、早速だけど話終わったら町外れにあるお菓子屋さんからクッキーを…」
ゴツンッ
「いったぁ!?何するのさ!」
「私用で俺たちを使うな!」
思わず普段ミスティ達にするようにゲンコツをしてしまった…まぁ、この人が悪い。うん
「ぶー!まぁいいや!入って入って!あっ、そこのお嬢さんは紅茶でいいかな?」
「ん、なんでもいい」
「了解了解っと…昨日仕入れたいい茶葉があるからさ〜♪お菓子はっと…」
「あっ、それなら今日は俺が焼いて持ってきたぞ?ショートケーキ」
「え!?君お菓子作りもできるの!?」
「パパのご飯美味しいんだよー?お菓子もおいしー!」
「ん、凄く美味しかった。このケーキ?も楽しみ」
「ほほう…それはこのお菓子ソムリエである僕が味を評価してあげようじゃないか…」
「それよりも先に話してからでいいか?」
「えー」
「えー、じゃない!仕事しろ!」
「はいはいわかったわかった!んじゃ、手っ取り早く話しちゃってよ」
「なんで俺が悪いみたいになってるんだ…?まぁ、いいや…」
そこから俺は森で行われていた事を話した。
魔神族、神獣の変貌
「今は魔神族は捕虜としてアメジスティアの騎士団に預けてるから、後で話を聞いてみてくれ。そしてこの子がフェンリルの子…リンだ」
リンの横でこの話をするのは嫌だったが、本人が気にしないで欲しいと言ってきたので、構わず話すことにした。
「ふむふむ…見たところフェンリルではなさそうだけど…」
「ん、小さい時に拾われた」
「なるほど…大変だったんだね…コレは王に報告が必要だなぁ…」
「どっちにしろ今回の依頼が国家からの依頼なら報告はしなきゃダメだったんだよな?なら、内容が少し変化するくらいいいんじゃないか?」
「いやいや!魔神族!それに神獣が死んだ!どうやって報告するのさ!?魔神族はまだいいよ?でも、神獣が魔獣に変化してたから討伐しました…なんて言えるわけないだろう?!」
「大丈夫だ、その場には俺も行くことになったから…アウリム団長と約束しちゃってさぁ…」
「え、なら君に報告を丸投げできるってこと?」
「丸投げはするな!重要なところは俺から話すから…」
「なるほど…それならいいや!話は終わり?そしたらこのケーキを頂くよ!」
「「「ちょっと待ったー!(なのです!)」」」
「うわぁっ!?ちょっと!いきなり入ってこないでよ!」
「お前ら…買い物は終わったのか?」
「す、すみません…ケーキと聞いたら身体が勝手に…」
「あ、あはは〜なのです…」
「一先ず買い物は終わったわよ?それよりもケーキを頂きましょう」
ケーキ♪ケーキ♪とテキパキと配膳をする食いしん坊3人組…その姿に自由奔放なイリヤさんでさえもえぇ…と呆れてる様子。
「えっと…すまんこいつらが…」
「い、いや…それはいいんだけど…なんだろう…このやるせない気持ち…それよりも!この部屋に入って来れる人は中々いない筈なんだけど…どうやって入ったの?」
「え?普通にモンドさんに言ったら通してもらえましたよ?」
「えぇ…許可してないんだけどなぁ…まぁ、ユウキくんの関係者だからいいか…それよりも君たちがそんなに楽しみにするって事は相当美味しいみたいだね」
「当たり前なのです!マスターのケーキは世界一なのです!いや、宇宙一なのです!!」
「そ、そんなにかい?」
「ん、お兄ちゃんのご飯は世界一」
「おい、無駄に期待値を上げるのやめてくれ…」
お茶の準備が完了し、ショートケーキを切り分けそれぞれの前に差し出す。
「お昼前だから食べ過ぎないようにな〜」
「「「「いっただきまーす!」」」」
「ん、わかった」
「あ、あはは…それじゃ頂きます?」
返事を返したのはリンだけだった…悲しい…
まぁ、いいや俺も食べよう。
「え…お、美味しすぎる…」
「でしょう?やっぱあなたは今すぐ冒険をやめて料理人になるべきなのよ」
「いや、それはダメでしょ?それにそんな事したら私たちの分が…」
「はっ!そうね…この味は私達だけで独占しましょう」
何言ってるんだこいつら…
こんなんで本当に魔神族との戦争に勝てるのか…?
ただ…美味しそうにケーキを食べてる女性陣を見てるとコレでいいのか…と思えてくる。気を取り直し、俺もケーキを食べるのであった。うまー
次の更新は本日の22時になります!
と言ってもストーリーではなく、ダークフェンリル戦後のユウキ達のステータスと技名を纏めます!
iPhoneのメモで書いてるんですけど…なんと検索機能が備わったので、西音寺流って打ち込むだけであら不思議…
今まで出した技がピックアップされるのです!
技の解説なんかも加えて纏めますのでお楽しみに!
本編更新は明日の正午になります。




