第91話 リン 下
ヤバイ遅れました!
〜〜sideリン〜〜
お姉ちゃん達に連れられてやって来た人間の街は凄かった。
何もかも初めて見るものばかり…私は本当に何も無いところで過ごしてたんだなぁ…と自分の井の中の蛙具合いがちょっと嫌になった。
「?リンちゃんどうしました?ほら、あっちに行きましょう!」
「ん、行く」
リリアお姉ちゃんに手を引かれてやって来たお店?と言うものはお洋服が売っていた。
でも、私が着てるものよりも布面積が狭い…なんでだろう?
私は訳が分からず首を傾げていると、顔を真っ赤にしたユウキお姉ちゃんが教えてくれた。
「こ、ここランジェリーショップ…」
「ランジェリー?ん、ランジェリーって何?」
「それは私から説明するわね」
そう言いローズお姉ちゃんに手を引かれ、物を見ながら説明を受けた私は、生まれて初めて見るブラジャーと言う物に緊張した。
下だけじゃダメだったんだ…
その後滞りなく何着かの下着を買って貰い、お店を出る。
何故かユウキお姉ちゃんが終始顔を真っ赤にしていたのだけど、なんでだろう?と思っていたらリリアお姉ちゃんが教えてくれた。
「ユウキさんは本当は男の子だから女の子の下着を見るのが恥ずかしいんですよ?それに、自分用の下着を買ってしまったという自己嫌悪に陥ってるんです…」
「……」
みんなに弄られているユウキお姉ちゃんは不憫だけど、みんな楽しそうにお喋りしていた。
それを見ているとみんなユウキお姉ちゃんの事が大好きなのが伝わって来て、こっちまで心が暖かくなる。
私もいつかみんなとこんな風にお喋りできるのかな?とちょっとしょんぼりしてしまう。
「どした?お腹空いたの?」
私の様子に気づいたユウキお姉ちゃんが、私の頭をそっと撫でて優しく聞いてくれる。
「ん、なんでも無いよ」
「そう?初めての街だし無理しないでね?」
「ん、わかった」
本当は結構人の多さに酔ってしまってるのだが、みんなに迷惑をかけられない。
すると…
「ふむ、なるほど…聖魔法 聖者の衣…どお?楽になった?」
「!?どうしてわかったの?」
「ふふんっ、私は人の嘘を見抜くのが得意なのだよ!と言う冗談は置いておいて顔が青ざめてたからね…この魔法を解かない限り体調も次第に良くなると思うから、しばらくこのままね?」
「ん、ありがとう」
私は感謝の気持ちが伝わってるのか心配になる。でも、そんな事を気にするなと言わんばかりに、にかっと笑って頭をぽんぽんしてくれるお姉ちゃんはとても素敵だなと思った。
「またマスターがさり気無くリンの頭を撫でてたのです…全く!油断も隙もないのです!」
「ごめんごめん、さてみんな次の場所決まったの?」
「あっ…」
もっと撫でて欲しかった…咄嗟に言葉にする事ができない私が嫌になる。
しばらく色々なお店を見て回った私達は、ユウキお姉ちゃん達が泊まっている宿?と呼ばれる場所にやって来ていた。
「ふぁ〜、疲れたのです…お風呂入ってゴロゴロするのです!」
「あっ、こらミスティ!脱いだ服そこらへんにほっぽり投げるな!」
スポポーンと全裸になったミスティちゃんを見て、私は目を丸くする。
恥ずかしくないのかな…?
「んー、そしたらみんな先にお風呂入って来ちゃいな?」
「了解です!リンちゃん行きますよ!」
「この部屋に広めのお風呂が備わってて良かったわね〜、この部屋本当に快適すぎるわね…」
「ほら、ルビーも行っておいで?」
「むー、パパも一緒がいいよー?」
「私はご飯の下ごしらえしなきゃ!ルビーがご飯いっぱい食べれるように頑張るから、ルビーもお風呂入ってご飯食べれる準備しなきゃだぞ?」
「むー、わかった…でも、明日は一緒に入ろー?」
「わかったわかった…ゆびきりげんまんな」
「わーい♪リンお姉ちゃん行こ行こー♪」
2人の微笑ましい姿を眺めていた私は、お父さんを思い出し、少ししんみりしてしまった。
「ほら、リンも入ってきな?」
「ん、わかった」
ぽふっ…頭に乗せられたユウキお姉ちゃんの手から伝わる温もりがしんみりしていた私の気持ちを直ぐに解いてくれる。
私は脱衣所に足を踏み入れる。
みんな先に入っちゃったみたい…
リンと書かれた札が貼ってある籠にさっき買って貰った下着と寝間着を入れ、脱いだ服!と書いてある籠に洗濯物を入れる。
そろ〜っ…
そっと開いた扉から顔を覗かせようとしたら、いきなり手を掴まれた
「!?」
「ほら!そんなところでこそこそしてないで来るのです!」
犯人はミスティちゃんでした。びっくりするからやめて欲しい
「来たわね?先に洗ってあげるからここ座って?」
「ん、自分でできるよ?」
「ダーメ、あなた水浴びしかしてないでしょ?髪の毛が凄い傷んでるし女の子の髪はデリケートなんだから丁寧に洗ってあげないとダメなのよ?」
「そうなの?知らなかった」
「そうですよー!あっ、最初は目を閉じてた方がいいかもですね」
「?わかった、そうする」
なんで目を閉じるのだろう?この時はそう思っていたが…頭を洗って貰っている時、気になって薄く目を開けて後悔した。
うぅ…目が痛い…
その後トリートメント?と言う物を頭につけられ身体を洗い、湯船に身体を沈める。
尻尾を現れた時はくすぐったかった…
今度からは自分で洗おう
リリアお姉ちゃんとローズお姉ちゃんが湯船に浸かりほへぇ〜、と気の抜けた声を出している。ミスティちゃんとルビーちゃんはまだ身体を洗っていた。
お湯なんて冬場ぐらいしか使わなかったけど、凄く気持ちが良いからわかる気がする。
「リンちゃん?初めての人間の街はどうでした?」
「ん、森に無い物ばかりで驚いた。こんなに沢山の人をいっぺんに見たのは初めて」
「うふふ、私もリンちゃんと同じ気持ちだったからわかるわね」
「?ローズお姉ちゃんも森にいたの?」
「あー、そういえば私たちの出身とかは話してなかったですもんね…」
「そうね、私はリンちゃんの言った通りペリドットと言う森の中にある国から来たのよ?最近初めて森の外に出たから…リンちゃんの少し先輩と言ったところかしら?」
「私はアメジスティア王国という国でユウキさんと出会って…今ここにいますね」
「ん、みんなバラバラ?」
「そんなことは無いわよ?ルビーは私の娘だし、ミスティちゃんはアメジスティアでユウキくんに出会ったみたいだし」
そこから私はこれまでのみんなに起こった事を聞いた。
みんなそれぞれ悲しい想いをしている事を知り…そしてユウキお姉ちゃんに救われたのだと言った。
本当にこの人達に出会えた事は運命なのでは無いか?そう思った
お風呂から上がり、リビングへと戻ると物凄く良い匂いがした。
くぅ〜、私のお腹が空腹を訴えていた。
「ん?あ、リン出たんだ?もう少しでできるから待っててな〜」
「ん、わかった…お腹空いた」
「あはは…それは良かった!それよりも随分綺麗になったね?」
「…やっぱ私汚かった…?」
「いやいやいや!そう意味じゃ無いよ!?元々可愛かったのが髪の毛とか手入れしたおかげでもっと美人さんになったね?って意味だから!」
「可愛い…美人…?私が…?」
「ん?あっ、ちょっとミスティ!」
「む?なんですマスター?」
「リンは可愛いよな?」
「えっ?そりゃもちろん可愛いのです!」
「ほらね?リンはもう少し自分に自信持ちなよ?」
「ん、嬉しい。ありがとう」
ミスティちゃんに連れられてベッドの上でルビーちゃんと3人で絵本を読む。毎日に日課でルビーちゃんに読み聞かせをしてるみたい。
私も初めて絵本を読むので楽しかった。王子様がカッコ良かった。あんな人いるのかな?
そんな事をしていたらあっという間にご飯ができたみたい。
食卓に並ぶご飯はどれも見た事のない物ばかり…ユウキお姉ちゃんって何者なんだろう…でも、どれも美味しそうで思わず涎が垂れそうになり、慌てて口元を拭う。誰も見てないよね?
リリアお姉ちゃんに両手を合わせて、食材に感謝をしてからご飯を食べるのだと教えてもらった。
そんな事などしてこなかったので神様に怒られるかな…?
「リン、遠慮せず食べなよ?これはリンの歓迎会なんだからね」
「そうなの、でふ…もぐもぐ…ごくん、ぷはっ!マスターのご飯は最高なのです!」
みんな夢中でご飯を食べてる。そんなに美味しいの?
30分後…
「うぅ…幸せ…」
「食った〜なのです〜けぷっ…」
「君たち食べ過ぎじゃないか…?途中から喋ってたの私とルビーだけだったんだけど…?」
「ん、美味しかった。こんな美味しいご飯初めて」
「ほ、ほら!リンちゃんも喜んでますし、いいんですよ!」
「女子力とは…まぁ、おいしそうに食べてくれたらそれでいいんだけどさ」
「マスターのご飯が美味しいのが悪いのです!」
「なんですと!?」
あはは〜と笑い合うお姉ちゃん達…私も笑えてるのかな?笑えてるよね?
その後色々な話をして、ユウキお姉ちゃんとリリアお姉ちゃんが武闘大会?というのに出る事がわかった。
お姉ちゃん達って強いのかな?どうなんだろ?
私の強さの基準はお父さんであるフェンリル…神獣を倒したと言っていたし、強いのだろうな〜とこの時は思っていた。
そして翌朝…
「ん…んぅ…っ」
伸びをして起きた私は、一瞬自分が何処にいるかわからなかった。
「あっ、そっか…私…」
お姉ちゃん達と森を出たんだ…その事を思い出した時、ふと良い匂いがした。
なんだろう?そう思いベッドからそっと這い出た私は、キッチンの方へと向かう。
そこにいたのは黒髪の見知らぬ人だった。
「…誰?」
「ん?あ、おはようリン…あー、俺だよ?って言ってもこの姿ははじめましてだもんな…改めて、俺の名は西音寺ユウキ…よろしくな?」
「ユ、ユウキお姉ちゃん!?」
「あはは!そんな声出せるんだなリンも」
驚いた、生まれてから1番の驚き。
凄い美人さんだったユウキお姉ちゃんは、凄いカッコいいユウキお兄ちゃんへと変化していた。
「あぅ…うぅ、よろしく…」
「ん?どした?顔真っ赤だぞ?熱でも出たのか?」
そう言い私の額にそっと手で触れる。
「はわ、はわわわわ」
きっと私は今絵本に出てきたお姫様のように顔を真っ赤にしてるだろう。
本当に絵本の中の王子様みたいな人はいたんだ…
「よ、よろしく…ユウキお兄ちゃん?」
「ぐはっ…」
「ん、どうしたのお兄ちゃん?」
何故か胸を押さえ蹲るユウキお兄ちゃんに首を傾げ、良い匂いに釣られて起きてきたみんなと共に朝食の準備を手伝うのであった。
次の更新は明日の正午になります!
明日からいよいよ武闘大会編スタートですね…あっ、三章は終わってません…よ…?




