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駄女神に信託を受けた俺、世界最強の流派で異世界を無双する!  作者: 雪月花
神が創りし至高のケモ耳
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第90話 リン 上

閑話にしようとしたら失敗しました…

長くなりそうだったので2話構成に急遽変えました…




〜〜sideリン〜〜




「リン、お前はここに居ろ。俺が行ってくる」


「お父さん待って、待ってぇぇぇえええ!!」


ガバッ……


「ハァ、ハァ…またこの夢」



森に異常が起きている。


そう言いこの場所の結界を強化し、俺が戻るまでここから出るんじゃ無いぞ。そう言い残し去って行ったお父さんの帰りを待つ間、私は毎日同じ夢を見ていた。


「お父さん大丈夫かな…ん、ご飯食べなきゃ」


朝食を食べないと…


そう思い立ち上がった私だったが、昨日の夜で貯蓄していた食糧が底を付き、食材を取りに行かないといけない事を思い出す。


「ん、とりあえず狩りに行こう」


誰もいない部屋で独りで過ごすとどうしても独り言が多くなってしまった。


普段無口な私でも、お父さんはいつも話しかけてきてくれていた。だから、寂しいと思った事は無いし毎日が楽しかった。


だけど…今は誰も居ない。



くぅ〜っ……


「お腹空いた」


空腹に耐えかねた私は急いで狩りに出かける。

結界の外に出るのは怖いが餓死するわけにも行かなかった。



だが、この森の異常は尋常では無かった。


「…おかしい、何も居ない」


普段の森は野生動物に溢れ、それを狙った魔物も結構生息していた。それをお父さんが間引いたりしていたのだけれど…



今はなんの気配も感じない。凄く不気味


唯一感じる気配は、禍々しくお揃いしい強大な力…



私は狩りを諦めて昔お父さんに教わった野草を覚えている限り収穫し、結界の内側へと戻った。



「うぅ…不味い…お肉食べたい」



野草は苦味やらエグミやらが酷く、到底美味しいとは思えなかった。だけど食べるしか無い。


お父さんもきっと今頑張ってるから、私も生きる為に頑張らないと!


「お父さん…早く帰ってきて」



この寂しい食事が早く終わって欲しい。


だが、この時既にリンネが去ってから2週間は経過していた。丁度ユウキ達がペリドットでラプラを撃退した頃である。



そして、ユウキ達がこの森にやってくるまで…リンは独りで一月近い日々を過ごしていた。





運命の日…



今日は朝から胸騒ぎがする。

よく無いことが起こる。私の野生の感がそう囁いていた。


ここ最近は1日一緒しか食べられない。保存していた豆があることを思い出した私は、それと取ってきた野草だけを口にして1日を過ごす。



野草の苦味やエグミも気にならなくなった。

だけど、お肉が食べたい。


「お父さん遅いよ…」


いつまでも待っていても仕方ない。今日は覚悟を決め、邪気の中心地へと向かおう。



そう思っていた矢先、その方向から激しい戦闘音が聞こえ始めた。


「何?誰か闘っているの…?」


私は一抹の不安を拭きれず、戦闘音が激しくなるにつれ毛布に包まり耳を塞ぐ。


早く終われ、早く終われ…そう思って震えていたのだが、あまり食事をとっていない為栄養失調気味の私は、いつの間にか眠ってしまっていた。






「ん、寝てた…?そうだ闘いは…」


シン……


先程まで聞こえていた音は聞こえず、静まり返った森に戻っていた。


だが、確実に変わっているのは邪気が消えている事。




そして…



「誰かこっちへ近づいている…」



結界の外側から聞こえる足音。

それも1人分では無く、複数聞こえた。


「誰だろう…盗賊かな…?」



何度かお父さんと一緒に盗賊を懲らしめた事があった。


だが、聞こえてくる話し声は女性の声ばかり…


久々に聞く自分以外の声に釣られるように扉の前まで来た私は、恐る恐る扉に耳を付け、外の様子を伺う。



「…楽しそう」



扉の外、さらに結界の外側にいる人達は楽しそうに笑っていた。

ここ最近のリンとは対照的なその人達、言わずと知れたユウキ達なのだが、この者達が自分の運命を変える人達である事をリンはまだ知らない。


だが、すぐに知ることにもなる。



しばらく結界の側で何やら話をしていたのだが、油断した。


「結界が破られた…」


あの結界を破れるのは俺か神ぐらいだ!そう豪語していたのに普通に破られたよお父さん…


そう心の中でボヤき、破られてしまったものは仕方ない…この人達が悪い人なら闘って追い返せばいい。


長年フェンリルであるリンネと過ごしていた。その為冒険者のランクで言うAランク相当の実力は余裕で保持しているリンは、侵入者へと立ち向かうべく扉から少し顔を出す。


「誰?」



私の方を見て固まっている人達


どうしたのだろうか?そう思っていると金色の綺麗な人が私に話しかけてきた。



「えっと…リンちゃん?であってるんだよね…?」


驚いた。この人は私の名前を知ってるみたい…

もしかしてお父さんの知り合いかな?


「うん、私の名はリン」


知ってるのなら偽る必要も感じられなかった私は、お父さんにつけてもらった名前を言う。


「そ、そのぉ…フェンリルじゃないの…?」


この人は何を言ってるのだろうか?と首を傾げる。


「?私は獣人」


「そ、そうなんだ…」



そしてお父さんについて話す事がある。

お姉さんはそう言った。


嘘はついてない。彼女からほのかに感じる暖かさはお父さんと同じ…きっと神に祝福されてるのだろう。



そんな人が私のことをどうこうしようとするはずもない。そう思った私はお姉さんの提案を受け入れ、長いこと独りで居た部屋に招き入れた。




…そして全てを聞き終えた私の目からは涙が溢れていた。


堪えることはできない。

お父さんが死んだ。その言葉は聞きたく無かった。


何処かで否定したい自分がいた。だけど悲痛そうなお姉さん達の顔を見て辞めた。私は、感情表現が苦手だ。今も涙は出ても泣き声を上げる事はしていない。


そんな私の事を薄情だと思うかな?とチラッとお姉さんの顔を見る。


お姉さんは決して私の目から視線を外していなかった。



その目には決意、そして信念が宿っていた。


よくお父さんが言っていた。覚悟を持った人間は我々神獣よりも遥かに強大な力を宿す事ができる。想いの力とはそれほど強大なのだ。と



きっとこのお姉さんもいろいろな事を経験し、そして何かを誓ったのだろう。



私の様子を見兼ねたお姉さん2人が私を抱きしめてくれる。


「あっ…」


初めて人の温もりを感じる。それは暖かく心地よかった。生まれてすぐに森へと捨てられた私は、お父さんに拾われ育てられた。


だから、こんな温もりは知らなかった。



止まれ、止まれ…そう思う私の意思とは真逆に溢れ出す涙が止まることはない。


そして私は生まれて初めて感情を表に出し、泣いた。みっともなく泣き声を上げ、お姉さん達に縋り泣いた。




きっと私はこの時生まれ変わったのだろう。

そう後に思うほど、この人達との出会いは私の全てを変えてゆく事になる。




そして、私が落ち着いてきた事を悟ったお姉さんが言った。



「一緒にリンネさんの仇を討たないかな」


「…お父さんの仇…?」



他にも何か言っていたけど、その言葉は私の心に突き刺さった。


敵討ち…そんなものをお父さんは望んでいない事はわかる。でも、この人は私に一緒に来れる口実を作ってくれている。


こんな私でもわかるぐらい明確な理由を示してくれた。私自信敵討ちには興味無い。けど、この人達と一緒に居たいと思った。


だから…



差し伸べられた手を取る。お姉さんはお姉さんでは無かったがそんな事は気にならなかった。



お父さん、私頑張るから


この人達と幸せになる。


この日、フェンリルに拾われ育てられ、リンと名付けられた少女は生まれ変わったのである。




次の更新は明日の正午になります!


リンの話を挟んでようやく大会編スタートです!

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