第87話 フェンリルの子?
正午とは?
「え、えっと…リンちゃんであってるんだよね?」
「?うん、私の名はリン」
「そ、そのぉ…フェンリルじゃないの…?」
「?私は獣人」
「そ、そうなんだ…」
えー!!フェンリルじゃないのかよ!!この様子だと、実は人の姿に変化してるとかそういう訳でも無く、純粋な獣人なのだろう。
俺のフェンリル育成計画が全て破綻したぞ…
「えっと、リンちゃん何族になるのですか?」
「ん?私は狼だよ」
リリアの質問に首を傾げながら答えてくれるリンちゃん…リンちゃんと呼んでるが見た目は14〜15歳くらいだろう…めっちゃ可愛いです…
「それよりも貴方達は誰?」
「あー、私たちは貴方のお父さんの知り合い…かな…」
「!?お父さんの…そう…」
先程までは普通に会話していたのだが、父親という言葉を口にした瞬間、一気にしょんぼりと顔を伏せてしまった。
「君のお父さんの話をしようと思うんだけど…大丈夫かな?」
「……こくり」
「よし、そしたら立ち話もなんだから厚かましいけどお家に入れてくれないかな?」
「ん、わかった。来て」
追随を促された俺たちは、素直にリンちゃんの後ろをついて行く。
「座って」
家の中へと免れた俺たちは席を勧められ、椅子に腰掛ける。
「…結論から言うと、君のお父さんは亡くなった」
「っ……そう、ひうっ…」
「君のお父さんが邪気によってダークフェンリルへと変貌していた。そこに私達が遭遇して…ごめんなさい、君のお父さんを倒したのは俺たちなんだ」
「……仕方ない。お父さんもそれを望んでいた筈。気にしない」
「…君は強いな…それで君のお父さんを浄化しようとした時に、正気を取り戻したみたいでね…幾つか遺言を託されている」
「本当?聞きたい」
「あぁ、今から話す事は彼の言葉を一言一句ありのままを伝える」
そして俺は遺言を話し始める。
リンネさんがこの子に伝えたかった事…その代弁者として彼の想いを受け継ぎ語る。
「ーー…そしてリン、我が娘よ…幸せに暮らせ…先に行く事を許せ……コレがリンネさんから伝えられた遺言になる」
ポトッ…ポトッ…っと大粒の涙がリンちゃんの白色の綺麗な瞳から零れ落ちる。
その様子を見かねたのかリリアとローズが側に寄り添い…頭や背中を落ちつくように撫でてあげている。
「ごめんなさい…貴方のお父さんを倒したのは私なんです…辛い想いをさせてしまってごめんなさい」
「んーん、お姉さんは悪くない、よ?悪いのはあの男…あの男のせいでお父さんが…う、うわぁぁぁぁっ!!!」
とうとう我慢しきれなかったのか泣き叫ぶリンちゃん…
その涙を見た俺は硬く誓う…この先、リンちゃんみたいに悲しい想いをする人が沢山出てくるだろう…だけど、出来る限り奴等のせいで流される涙を減らす。
しばらく様子を見ていたが、号泣からすすり泣きぐらいに変わった所で、再び話を始める。
「少し落ち着いたかな…?リンちゃん…お父さんの遺言にあった通り君は今後幸せになる権利がある。失われた物は大きいかもしれない、だけど此処で伏せていても何も始まらない。どうかな?私達と一緒にリンネさんの仇を討たないかな」
「…お父さんの仇…?」
「そう、実は私はこの世界に召喚された勇者を知ってるんだ。私も一緒に召喚されたんだけど、今は別行動しててね…私の目標は平和なこの世界を楽しむ事…だからそれを邪魔してる魔神族を滅ぼすのが目標なんだ!」
「勇者…お姉さんも勇者?」
「私は残念ながら勇者ではないよ…それよりもお姉さん…?あっ、そうか…今女の姿…」
「お姉さんじゃない?」
「実はこの人は男なんですよ…なんか事あるごとにスキルの副作用で女の子になっちゃうみたいで…」
「?変な人」
「がはっ…わ、私だって好きでなってるわけじゃないのに…変人扱いは酷い…」
私は変人ではない!!はず…自信は無いけど…
仲間達に変人でしょ?と言われ焦る俺を見て、リンちゃんは一瞬だけ「ふふっ…」と笑みを見せてくれた。
よかった、気持ちは死んで無いみたいだ
「その、こんなメンバーだけど私達と一緒に来ないかな?」
「そうです!楽しいですよ?ユウキさんの造るご飯は美味しいですし!」
「ユウキさん…?」
「あっ、そういえば自己紹介がまだだったね…私の名前がユウキで…こっちが」
「リリアです!よろしくお願いしますリンちゃん」
「私はローズ…そしてこの子は私の娘のルビーよ」
「おー♪お姉ちゃんよろしくー♪ルビーだよー」
「私はミスティなのです!伝説の剣なのです!凄いのですよ?えっへん!」
「…ミスティ!」
ゴツンッ…
「痛いのですっ!うぅ…たんこぶできたのです…」
「みんな…私はリン、外の事は何も知らない。私が一緒でいいの?」
「「「「「もちろん!」」」」」
「うぅ…これからよろしく、ね…」
私の伸ばした手に自らの意思で手を差し出し握手するリンちゃん。
こうして私たちの仲間がまた1人増えたのであった。
また泣き出してしまったリンちゃんにリリアとローズは、その涙が先程とは違う涙だと気づき安堵すると普段の私がどんな姿なのかを必要以上に語り出す。
「君たちねぇ…そんな事よりこの場所をどうするか話さないかな?リンちゃんに任せるけど、此処は思い出の地だろう?結界を貼り直してそのまま保管して置くけど、それでいいかな?」
「そんなことできるの?それだと嬉しい」
「うん、了解だよ…それより、リリアとローズ…そろそろ私もそのケモ耳を撫でたいのだけど…変わってもらえないかな?」
「ダメですよ変態!見た目は女の子でも中身は男なんですから!リンちゃんの許可無しでは触れさせません!」
「そうよあなた?恋人の私たちならまだしも、こんな幼気な美少女を撫でるたいなんて…やっぱ変態なのかしら?」
「酷くない??い、いいよね?リンちゃん??」
「ん、ダメ…」
「そんなぁ…」
あはは!と笑う声が静かな森にこだまする。
その笑い声は先程までの悲しみに暮れた様子を吹き飛ばし、リンの心を暖かく包み込む
きっとリンネも天国でその様子に安堵しているだろう。
次の更新は本日21時ごろを予定しています!
予定なのできっと前後するかもしれません!!多分!
次回、街に戻ります。久々の日常…前後編でお届けできればいいなと思ってます!




