第65話 餌付け?
休みって幸せ…
旅立ち当日…俺たちを見送るために国中の人々が集まっていた。
「「「ししょぉぉおおおおお!!!絶対また来てくださいよぉぉぉ!!!」」」
「いやいや、わかったから!!みんな離れて!?ヤバいって!リリアの目が死んでるから!!」
「ローズさん…道中お気をつけて、何かあれば逐一報告します」
「えぇ、ありがとうサーシャ…その、ごめんなさいね…国の事を任せてしまって…」
「気にしないでください!ユウキさんのお願いですので!」
俺がローズを連れ出す為に行ったのは主に3つ
一つ、ローズが不在の間に国を纏める者の選任
二つ、結界の強化を更に行い、国の防衛機関を底上げした事
三つ、転移の魔法を改良し移動距離の制限を無くし、サーシャに渡してある念話機能が追加されたサークレットで常に連絡が取れるようにしてある。
元々ペリドットはどこの国とも外交関係に無い根絶された国だ、それならばこの国を守る設備と俺がいつでも戻れる魔法さえ造ってしまえばローズを連れ出すのは簡単な事であった。
そしてなぜかこの国の人達は俺のする事を咎める事なく、全て受け入れてるのだが…まぁ、皆んなの不利益になるような事はしてないから別にいいんだけどさ…なんか調子狂うんだよなぁ…
「あまり時間も無いし皆んなそろそろ出発するぞ〜」
「「「「はーい!!」」」」
「「「「ユウキ様ぁぁぁあ!!!お元気でぇぇええ!!!!」」」」
何故か号泣しながら見送ってくれるペリドットの人達に、若干引きつつ…俺達は結界の外へと歩き始める。
1時間ほど歩き森を抜け、インカローズまでの道を進む俺たちは森の入り組んだ土地を歩き回ったり、特訓によって体力が上がったりしたおかげか、リリアもへばる様子も無く終始笑顔である。
ローズやルビーも何も無い平原を嬉しそうに眺めている。ちなみにルビーは俺の頭の上に座っている。流石に長距離の移動を3歳児に歩かせる訳なく、インカローズ近辺や休憩中以外は、こうして妖精の姿に戻ってもらう事にしていたのだ。
「うーん、何か移動手段欲しいよなぁ…景色見ながら歩くのもいいけど…このままだと大会ギリギリじゃないかな?」
「うーん、このペースだと早くて1日前…遅くて当日の昼頃でしょうか…?」
「気になってたのですが…その大会って事前に申請とか必要無いのです?」
「「あっ…」」
「あるのですね…いつまでとか知ってるのです?」
「「知らないです…」」
「あらあら?困ったわね…私も他の国の事なんて何も知らないし、リリアちゃんが知らないならだれも知らないってことだものね」
「うぅ〜、私のアイデンティティが!この世界の情報を知る為に連れてきてもらったのに…役立たずでごめんなさい…」
「いや、気にすんなリリア…俺も何も考えてなかったから…このままだと間に合わなくなるとして、何かいい方法はないか…」
「マスター?丁度彼処に小川が流れてるのです!彼処でお昼ご飯食べながら考えるのです!私はマスターのご飯の事で頭がいっぱいで何も浮かんでこないのです!!」
「お〜?ルビーもお腹ぺこぺこだよ〜?パパのご飯食べたい〜♪」
「あら、それはいいわね…あの日の晩ご飯は19年間で一番美味しかったわ…女性としては悔しいのかもだけど完敗ね…あの味を覚えてしまったら…くぅ〜、思い出しただけでお腹が…」
「まぁいいけどさぁ…食べたらちゃんと考えてくれよ?」
「「「「はーい!」」」」
「大丈夫だよな…?」
そこはかとなく怪しいパーティーメンバーに小さく嘆息し、お昼の準備を始めるのであった。
「満腹なのです…マスターの料理は最高なのです…」
「あはは、お粗末様…デザート食べるかい?」
「「「「食べる!」」」」
「はい、どうぞ…それにしても綺麗になくなったな…10人前くらい作ったんだけど…」
この国には米が無い為俺の創造魔法によって創り出した米を大層気に入ったらしく、昼夜はご飯を食べるようになった。
箸を使えるようになるまで一悶着あったのだが…今となっては日本人並みに使いこなしているのだから、食への執念は恐ろしいな…
「さて、食べながらでいいから聞いてくれ。移動するための案としては、魔法で空を飛ぶ…もしくは走ると言った原始的手段…もしくは、俺の世界にある乗り物…まぁ、この世界で言う馬車みたいなものを創り出す…それか今引いてるこの絨毯に飛行魔法を付与しこれに乗って飛んで行くか…」
「「「「……もぐもぐ」」」」
「…本当に聞くだけはやめてもらえませんか…?めっちゃ長い独り言言ってるみたいになってるから!」
「…仕方ないのです。今はこの生クリームマシマシのパンケーキを食べるのが最優先なのです!」
俺はおやつを与えるタイミングを間違えたらしい…くそ!餌付けしてるわけじゃ無いんだぞ!?
まぁ、いいや…勝手に決めよう…
「と言う事でどっちがいい?と思う?」
「な、なんですか!?この厳つい箱は!?」
「厳つい箱って…これは俺たちの世界で言う車って乗り物だよ?」
「こ、これは怖いのです…私は絨毯の方がいいのです!」
「そっか…みんなは…同意見みたいだね…ならこいつは封印しとくか…」
せっかくオフロード用に改良しまくったのに…まぁ、そのうちルビーでも連れてドライブでも行けば流れが変わるかもしれないからな…くっくっく…後で後悔するがいい!文明の理気に魔法を組み込んだ世界初の水陸両用!空も飛んじゃいます!…あれ?余計な機能つけすぎたか?
「まぁ、とりあえずみんな座れ〜出発するぞ〜」
「ドキドキするのです…あっリリアそんなにこっちに寄るな!なのです!落ちたらどうするのです!?」
「す、すみません…真ん中じゃ無いと怖くて…」
「いやいや、俺が創ったんだからそんな怖がらないでよ…そんな怖がられると…期待に応えたくなるじゃん?」
「「え…?それはどういう…」」
「ルビーは胸ポケ入っとけ〜」
「は〜い♪パパしゅっぱつしんこ〜♪」
「あなた?わかってるわよね?安全重視でお願いよ?」
「…行くぞ〜!」
俺はその瞬間、一気に魔力を流し込み爆発的な加速を肌で体感する。
「「「きゃぁぁぁぁあああ!!?!!?」」」
「おー、楽しそうだな!ならもっとおまけをしてあげよう!!」
楽しそう(?)な3人に日本にあるジェットコースター的な駆動で飛行し、急降下や上下反転で飛んだり、ロールを体験させてやる。
「わ〜♪楽しいね〜パパ〜!今のもっかいやって〜!」
「「「やめてください!?」」」
「とりあえず進まなきゃだからまた今度な?我慢できるか?」
「む〜、わかった…そのかわり撫でて〜?」
「あはは、それくらいなら構わないよ、っと落ちたら危ないからここに座ってな?」
人の姿になったルビーを胡座をかいていた俺の足の上にすぽっと座らせ、ん!と突き出してきた柔らかい緋色の髪を優しく撫でつける。
ルビーは妖精の時も事あるごとに抱きついてきたりとスキンシップ多かったけど、人間の姿になるともっと増えたな…ずっと側を離れないからな…まぁ、可愛いからいいけど…リリアとミスティが嫉妬してそうで怖い…
「そういえばあなた?何故ルビーに氷魔法を覚えさせたのかしら?その…どちらかと言うと見た目は火属性の魔法の方があってると思うんだけど…」
「あっ、確かに言われてみれば…私も気になりますね…」
「え?大して意味はないけど?強いて言うならギャップ萌え「「「は?」」」…いや、なんでもないです…そのうち火系統の魔法も覚えてもらうよ…氷炎の妖精ルビー!カッコいいでしょ?」
「おー!ルビーもそれがいいー!」
「おっ、そしたら武闘大会終わったら教えるからな〜」
「やったー♪パパやくそくだよー?」
「「「ルビー(ちゃん)にだけ甘すぎないですか!?」」」
3人の声が見事にハモリ、とやかく言われるのを右から左へ受け流しながら俺達はインカローズまでの道のりを魔法の絨毯で飛翔しながら進むのであった。
当初は5〜6日程かかると思われた道のりも、この分なら3日も掛からず辿り着けるだろう。
こうしてユウキ達の冒険は新しい舞台を目指し、確かな一歩を踏み出したのであった。
こんにちは!本日も無事更新です!
次の更新は、明日の正午になります!
ちょっと食あたり気味で体調がヤバイので、明日は2話の更新になります…




