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駄女神に信託を受けた俺、世界最強の流派で異世界を無双する!  作者: 雪月花
蠢く小鬼と囚われの妖精
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第57話 一つの闘いの決着

今回でリリア視点は終わりになります!



〜〜sideリリア〜〜



「やぁぁぁぁあ!!!」


「ふんっ!!」


 リリアの刺突をアリンの戦斧で防がれる。

この光景が幾度となく続き、甲高い音が連続して響き渡る。


「ふぅ、ふぅ…いい加減諦めたらどうですか…?」


「はぁ、はぁ…それはこっちのセリフだ!!私はやっと体が温まって来たところだ、よっ!!」


 アリンの裂帛が突如としてリリアの側で聞こえ、その事に驚いたリリアは咄嗟にその場を仰反るようにして、アリンの戦斧の一撃を紙一重で躱す。



「ッッ!!?あぶなっ!?このっ!風の戦鎚!」



 パラパラ…と数本の髪が切り裂かれ、地面へと落ちる中その場を飛び退き、無理やり距離を取る為に、風魔法をアリンへと叩き込む。



「いやぁ、今のいい顔だったぞ?焦った顔が最高に愉快だった!もっと見せろよ?」


「ふんっ!2度とごめんです!危ないシーンは今ので終わり…こっからはずっと私のターンですから!」


しっ!!風を纏ったリリアは、更に背後に風魔法を発動し、瞬発力を高め一気にアリンの低い弾道から懐へと飛び込む。


「西音寺流刺突術 中伝 雨燕ッ!!」


「!?戦斧の大地斬!!!なんだとっ!?がぁぁぁああ!!?


 突き刺すように伸ばされた細剣を叩き折ろうと振り下ろされた戦斧が、リリアの発動した風魔法により発生した上両気流により押し戻される。



「ふふっ…やりました!サーシャさん!?見てましたか!?私の一撃が完全に決まりましたよ!?」


「ぐっ、がはっ!?…くそがっ!!」

 

 咄嗟に体を捻り致命傷は避けたアリンであったが、脇腹を大きく抉られ、内臓が傷つけられたのか血反吐を吐き悪態を吐く。



「おやおや?一撃喰らっただけでフラフラじゃないですか?」


「ちっ!!こんなもん私の魔力があればっ!…ほらな?治っただろう?そんなチマチマした攻撃じゃ一生私は殺せないさ!戦斧の瞬撃ッッ!!」


 重装武器である斧だと思えぬ程の速度で繰り出される連続攻撃をなんとか躱すリリアは、反撃の隙を窺っていた。


くっ!意外とすばしっこいですね…なんとか避け切れてますが…夜中の戦闘に慣れてないので目が疲れてきました…


 こんな事になるのなら野営の時にもっと夜番をやればよかった…と後悔するリリアなのであった。



 それもそのはず、ユウキは女の子を遅くまで起こしてるのが嫌だ!という理由でリリア達に0時ごろまで担当してもらった後は、1人で朝まで夜番を勤めていたのだ…



「くっ!このっ!風魔法ッ風絶領域ッ!!」


「ガッ!?い、息ができないっ…!?」


 その隙を逃さず一撃を叩き込もうとするリリアだったが、その場を飛び退き後退したアリンへは届かなかった。


「はぁ、はぁ…今のはなんだよ…」


「惜しかったですね…もう少しで心臓を貫いていたのですが…」


「そんなこと聞いてねぇ!今の魔法はなんだ!?答えろ!!」


「…教えてもらう立場の者が偉そうですが、私は今機嫌がいいので教えてあげます…今の魔法はですね…私のある一定の距離にいる者の呼吸を妨げ、判断を鈍らせる…そういった魔法ですよ?原理は私も詳しく知らないので、もし生き延びれたらユウキさんに聞いてみてくださいね?」


「なんなんだよっ!ユウキってやつは!?」


アリンの疑問は誰しもが思うこと…


 この世界において化学という言葉を知る者はいない…それこそ過去に勇者召喚された者は、化学的な要素を含めた道具を作ろうとしたが、前提の知識が無く、結局魔法って便利だよね!とぽいっ、と考えることを放棄した結果なのだが…


 ユウキは瞬間記憶能力者である為に、あらゆる分野の知識を蓄えていた事から、魔法と科学を組み合わせたチートな技をいくつも考え、スキルとしてリリアやミスティ、ルビーに教えていたのだ。


 その結果、リリアとルビーの魔法を昇華させ、魔神族でさえも抗えぬ程の効力を発揮するのであった。



その姿を間近で見ていたサーシャは自分の出る幕が殆どなく、ほぼほぼ観戦モードで待機していた。


「……リリアさん、強そうに見えなかったけど…凄い魔法の使い手です…それにあの剣技も…どれくらいの才能を秘めてればあんな動きできるのかな…」


規格外な2人の戦闘に、ユウキが見てくれていたという妖精騎士団の訓練に私も参加してればよかったかな…?と後悔していた。


インドアで身体を動かす事が苦手なサーシャにとって、リリアのような魔法剣士は憧れそのものであった。


生まれてからこの方…妖精族の巫女として育って来た為に、魔法さえ使えてればよかった環境に甘えた結果だと自覚してるのだが、過去は変えられない。



だからこそ思う。


この戦いが終わったら…ユウキさんに弟子入りしようかな…ちょっとお肉もついて来た気がするし…


と自分のお腹を摘み、しょぼんとするサーシャなのであった。



サーシャがどうでも良いことを考えている間にもリリアとアリンの激しい凌ぎ合いは続いている。


私は、今私のできることをやらないと!


「リリアさん!!頑張ってください!!……妖精の輪舞…発動ッ!!」


「ッ!?なにっ!?どんどんこいつの力が増して…!?サーシャか!!やはりお前から!」


「よそ見しないでもらえますか?」


「くそが!しつこいんだよ!!」


「女はしつこいぐらいじゃないと好きな人は落とせませんからね!」


いや、そんな事はない。


リリアの謎発言を聞いていた者は心の中でユウキの不憫さを嘆くのであった。



「しつこい女は嫌われるぞ!?戦斧の爆刃波ッ!!サーシャァァ!!クタバレェッ!!」


リリアを無理やり弾き飛ばし、戦斧から放たれた衝撃波がサーシャを襲う…かに見えたが、サーシャの額に付けられていたサークレットが瞬き、結界を発動させる。


「なんだと!?次から次になんなんだお前らのその魔導具は!!」


「ほっ…よかった…流石ユウキさんの作った物ですね…完璧なタイミングで作動するなんて…」


「またあの男の仕業なのか!?どんだけ多才なんだよ!!」


「ユウキさん…素敵な贈り物ありがとうございます…」


サークレットにそっと触れ、ユウキへ感謝の祈りを捧げる姿はまるで、自分の信仰する神へ向けるよりも熱心に想いが込められている気さえする程であった。




そして…全員の時が止まる。


突如足元に広がった影に誰しもが空を見上げる。


すると空に突如として現れた氷の龍…が二又の大きな犬型の魔物を食い破るところであった。


そして、氷龍が砕け散り雪を降らせる…



「…ルビーちゃんの仕業ですかね…?私も負けてられないようです!では、行きます!!」


ユウキからもらったお揃いの衣装に付与されていた防寒魔法により、即座に攻撃に転じたリリアとは違い、アリンは突如として下がった気温変化に対応しきれずに手先が悴み、戦斧を強く握りしめる事ができなくなっていた。



それに気付いているわけではないのだが、完璧なタイミングで攻撃を仕掛けたリリアの技が炸裂する。


「油断しちゃダメって言ったじゃないですか…西音寺流刺突術 中伝 蝶舞蜂刺ッ!!」


「あ、アァァァァアアッッ!!?」


リリアによるひらひらとした動きから放たれた幾つもの突きが全てアリンの身体を抉る。


痛みに耐えかねたアリンの絶叫が響き渡る中、それを覆い隠すほどの衝撃音が反対側…即ちローズ達が闘っている方から聞こえて来る。


「……喜ぶに喜べない…ローズさん、ルビーちゃん…どうか無事で…」



見えない場所で闘っているローズ達の無事を祈り、トドメを刺すつもりでアリンの方を向くと、そこには先程まで居なかった筈の女が立っていた。



「あらら、こりゃて痛くやられたねアリンちゃん?ちょっと戦力差がありすぎるから逃げるよ!」


「ラプラ様…申し訳ございません…」


「気にしないでよ!僕も巌窟竜に仕掛けして逃げて来たところだから!さっさと逃げるよ!」


そう言い2人で逃げ出そうとする魔神族の女…ラプラへとリリアとサーシャの魔法が炸裂する。


「逃すわけないじゃないですか!千刃の風!!」

「その通りです!アクアカッター!」


リリアの千の刃とサーシャの巨大な水の刃が同時に敵へと着弾する。


「解析に時間かかったけど…幻惑魔法使えるようになったんだよね〜残念でした〜ハズレだよ!待ったね〜!」


「くっ!逃げられましたか…」


ユウキの索敵魔法を潜り抜ける程の幻惑魔法を破る術を持ってないリリアは、敵をミスミス逃してしまったことに後悔するとともに、ある言葉に引っかかっていた。



「さっきあの女は竜に仕掛けを…とか言ってませんでしたか…?ッッ!!早くローズさん達の元へ行かないと!!」


「私も行きます!みんなはここに残ってユウキさんが来た時に報告してください!!」



焦ったリリアとサーシャが脇目も振らず、風のようにローズ達の元へと駆ける…



そして、ペリドットにおける本当の死闘が幕を開けるのであった。



こんにちは!今日も無事更新しました!


次回の更新は明日の正午になります!

日曜日なので例の如く何話か更新しますので、お待ち下さい♪


次回はローズ視点から始まります!



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