第53話 ペリドットの戦い Ⅰ
本日1話目になります!
タイトル通り、ここからがこの章のメインの話になります!
〜〜sideリリア〜〜
丑満時…ユウキさん達の世界ではこれくらいの時間をそう呼ぶのだと前に教えてもらった。
た、たしかお化けが出る時間帯とか…うぅ…怖いですね…
でも今はそんな怖さよりもユウキさんに頼られた事が嬉しい気持ちが勝ってるので、全然へっちゃらです!!
ガサッ…
私たちが陣取って居るのは泉側の結界付近…
結界の外でガサガサッと何かが移動する音がする度にここに集まってる方達の表情が強張ってます。
こ、こんな物音くらいで怖がるなんて子供ですね!
と側にいるサーシャさんに先程冗談で言ってみたところ、怒られてしまいました…
もっと緊張感持ってください!と…
こ、これでも私は緊張してるのですよ?
側にユウキさんが居ないだけでこんなにも不安な気持ちになるのだと改めて知った。
そして、ユウキさんの存在がどれほど私の中で大きかったのか…
何度目かわからないけど、ユウキさんと出会えた事を今一度私の国の女神…イブ様へと感謝の気持ちを込めて祈る。
すると、感謝してよね〜!と見たことない筈の女神様の姿が脳裏に浮かんだ気がするが、そんなわけありませんよね…?
「サーシャさんは魔法は何属性が得意なのですか?」
「私ですか?基本的な3属性は得意です。火、水、風…敢えてこの中から選ぶのなら水でしょうか…?」
「そ、そうなんですね!私は風魔法が得意なんですよ?」
「そうなのですか?では、ローズさんと一緒ですね…あっ、そういえば修行も一緒にやってたってユウキさんからお聞きしたような…」
あれ?ユウキさんとサーシャさんってそんな話をする程仲良かったっけ…?
甚だ疑問だったのだが、リリアはその質問をしてしまったら何か良くないことが起きるような気がして、「そ、そうなんですよ〜大変でした!」と少し動揺しながらも恙無く会話を続けるのであった。
「ッッ!?皆さん!!戦闘準備!!敵の反応を感知しました!!その数1000…その中に大きな魔力反応がいくつかあります!気を引き締めてください!!」
リリアが発動していた、指輪の力…先程ユウキさんはこの力のことをエンゲージギフトと呼ばれていましたが、もうこれはプロポーズでは?
そんなユウキから授かった力に喜びを噛みしめつつ、ユウキに魔改造してもらった指輪の力を反芻する。
魔力量増加
魔力貯蓄
魔法威力強化
身体強化
鷹の目や空間把握だけでも国宝級以上の価値があったのに、更にこんなに付与するなんて…
もはやこの指輪は伝説の武器と同じ扱いで良いのではないか?
そう思うリリアは、ユウキがとんでもないことをやらかす前に、無闇矢鱈に指輪ほどの代物を作らぬように言い聞かせねば!と決意したのだが、既にユウキはこれと同等のものは幾つも作ってしまっていた為、後々リリアに怒られることになるのだが…
「リリアさん!敵はどのくらいで此方に!?」
「そうですね…距離から言って後5分ほどで結界の外側に集まるかと…ですがユウキさんが強化した結界なら魔物は入って来れないと思います」
「では、此方から仕掛けるのですか…?」
「いいえサーシャさん、私たちはこの場を動きません」
「そ、それでは敵がもし結界を破った時に対応しきれなくなりますよ!?」
「ですから、私たちはここから敵を殲滅します。相手からの攻撃は結界が凌いでくれますが、此方からの攻撃は結界をすり抜ける事ができるとユウキさんは言ってました。それを有効活用しましょう!」
「そ、そんなことが…それなら敵が見えたら詠唱開始します!皆も頼みます!!」
普段のサーシャとは違い、今のサーシャには何処か気迫を感じさせられる。
それもそのはず、不安だったサーシャがユウキの去り際に勇気を貰おうと話しかけたら、頭ポンポンからの耳元で頑張って…と囁かれ、やる気が天元突破してしまったのだ。
しかも、ユウキと親しくしていたメンバーにはそれぞれ個別に、色々なスキルが付与されているアクセを渡していた。
それもサーシャの意欲を掻き立てるには十分すぎる結果に…そして、今のサーシャの状態になったのだ…
もちろんユウキと関わりはなかったが、この戦いに参加するもの達には全員にリリア達ほどではないにしろ、国宝級のスキルが付与されたシルバーでできたネームプレートを人数分作って渡した。
その甲斐あって、ペリドットの民達の指揮もうなぎ登りで、後にユウキのことを見ると皆一様に跪くようになるのだが…それもまた未来の話だ…
「総員!魔法の詠唱開始!!私の合図で一斉に射出してください!!」
リリアの号令に従い、自分の使える最高の魔法を発動し、ユウキの力によってその威力が倍増する。
それを感じ取った人たちは皆一様に、ユウキの凄まじい力に歓喜し、そして畏敬の念に打たれるのであった。
彼こそがきっと神の代行者なのだと…
「カウント3、2、1…発動!!風魔法 テンペストドラグーン!!」
リリアの第10級に値する威力のオリジナル魔法に追随するように一斉に魔法が放たれ、結界の外に集まっていた魔物達を端から消し飛ばしていく。
リリアの気配察知からどんどん赤い光点が消えていく中、いつまで経っても一箇所だけ消えない所がある。
「サーシャさん、私の魔法でも倒せない魔物が一体だけいます…もしかしたらこの結界を破ってくるポテンシャルを秘めてるかもしれません…気をつけてください!」
「あの魔法でも倒せないとなると相当厄介ですね…わかりました!みんなに伝えてきます!」
サーシャがリリアの側を離れ、後方に控えていた伝達部隊の人達のもとへと伝えに行く。
私はそれを見送り思考を巡らせる。
ユウキさん程では無いですが私も頭は良い方なのですから、考えるのですリリア!!
私はできる子、残念じゃない!と自分に言い聞かせるように鼓舞していると敵に動きがある。
「えっ…結界に近づいて…何をするつもりなのでしょうか…」
まさか…と思うリリアだったが、敵の取った行動はリリアの予想を上回ることとなった。
「やあやあ、みんな元気だったかい?随分小賢しい結界を張ったみたいで、せっかく揃えた子分達が皆殺しだよ…まぁ、所詮ゴミはゴミだったってことか!あっはっは!!」
陽気に此方に笑いかけてくる女…
そいつこそこの魔物の群れを引き連れていた親玉であった。
その名は…
「ま、まさかあなたはアリンさん…なんですか…?」
サーシャが自信を無くすのもわかる。
なぜなら彼女の肌は浅黒く変化し、目の色も黒に近い紅の色へと変貌しているのだから。
「わからないのも無理は無いが、その通り私がアリンだ!!どうだ?美しいだろう?」
「な、なんなんですかあなたは!?どうしてこの国を裏切ったんですか!?それにその肌の色…それはまるで…」
「魔神族みたいだってか?残念!その通りなんだよなぁ…私は生まれ変わったんだ!ラプラ様と結ばれたことによって!」
「そんな…魔神族になったなんて…」
「そんな悲しそうな顔してんじゃねえよ!私はこの国が最初から嫌いだったんだからな!お前らも仲間だと思ったことは一度たりとも無い!そして今この時のために私は生まれてきた!そう断言出来るほど、お前らを殺すことができるのを楽しみで仕方ないよ…ふ、ふふっ、あははははっ!!」
「サーシャさん、こうなっては仕方ないです…あの方を生きて見過ごす事はできなくなりました。当初の予定と変更して、アリンさん…いえ、あの魔神族も討伐対象に加えます、いいですね?」
リリアが同族の仲間ではなく、魔神族が現れた為に討伐することにしましょうと提案するのは、リリアの優しさでは無く、ユウキにそう教え込まれていた為だ。
大切な人が敵になった時、誰かに任せるのではなく、自分の手でそいつを倒す。それが止められなかった者の責任であり義務だ…と
その言葉に感銘を受けたリリアは、計らずともユウキの思考に徐々に近づいて行っていた。
だからこそ問うのだ、あれはかつての仲間で、今は敵なのだ。お前にあいつを討つ覚悟はあるのか?と
「サーシャさん、貴方達妖精族が闘わないのなら代わりに私があの魔神族を殺します。魔神族は人類総出で倒す共通の敵であり宿敵です。私は2度とアメジスティアのような悲劇は生み出したく無い!今度こそこの手で魔神族と渡り合う!その為に修行したのですから!!」
「リ、リリアさん…うぅん…私もやります…同族から魔神族を出してしまった…これは私たち妖精族の問題でもある…ローズさんがここにいない今、この場は妖精族の巫女である私が最高責任者なのです!お客様に頼ってばかり入られません!」
2人はお互い視線を交わし、1度頷き共通の敵へと顔を向ける。
「弱虫サーシャがよくそんなこと言えたな。私を倒す?殺す?…無理だぞ?お前らは私に殺されるからなっ!!」
「やってみなきゃ!」
「わからないです!」
その言葉を皮切りに激闘の幕が開けたのであった。
ユウキさん!!私頑張ります!終わったら絶対褒めてくださいよ!?いや、ほんとマジで!!
リリアの心の叫びはユウキに届くのか否か…
残念王女の修行の成果が今ここに試される。
次の更新は、本日22時を予定しております。
ちょっと頭痛が酷いので、1時間遅れそうです…
なので22時更新にしておきました…
ここからリリア達の戦闘シーンが解禁されます!
ただの残念王女じゃ無い所を見せられたらいいな〜




