第4話 やはり異世界といったらこれでしょ!
城を出て小一時間程経ち、俺は今王都の中心地から少し外れた所にある、美容院?ぽい所に来ていた。元の世界ではなるべく目立たないように、前髪で目元を隠し全体的に長めだったのを、整えもせずボサボサだったので、流石にこれではある意味目立ってしまうので、仕方なく髪を切ることにした。まぁ、魔物と戦うとなった時に、自分の髪が邪魔で戦闘に支障をもたらしては、本末転倒である。
「まぁ、結果オーライってやつだな」
「お客さん?どのような髪型に致しますか?」
「あぁ〜何も考えてませんでした…」
「なら、私の判断でお似合いになりそうな髪型に仕上げてもよろしいでしょうか?」
「あっ、はい!それでお願いします」
「かしこまりました、では失礼致します」
それだけ言うと美容師さんは作業に取り掛かった。おや?美容師さんが俺の前髪をあげた状態で固まっている。何かあったのか?
「あの、何かあったんですか?」
「あっ、す、すみません!何でもないですよ!リラックスして頂いて結構ですので!!あっ!喉とか乾いてません??お茶でよかったらお出ししますよ??」
へー、異世界の美容室では客にお茶を出すんだな…なるほど…
「いえ、大丈夫です。お気遣い感謝します」
「そ、そうですか…」
美容師さんが見るからに凹んでいるが、お茶貰わないといけなかったのかな?悪いことしたかなぁ…うぅむ…
そんなことを考えていると、別の美容師さんが近づいてきて、俺を見るなり慌てて奥の部屋に走っていってしまった。
なんなんだいったい…俺なんかやばいことしたんか?そんなにお茶に需要があったのか…通報とかされるのかな?旅に出て一時間近くしか経ってないのに、城に出戻りはまずい。しかも犯罪者になってとか、マジでシャレにならんぞ?
などと内心めちゃくちゃ焦りながらも美容師さんたちの行動を見ていると、奥の部屋に走っていった人が戻って来た。なんか後ろに更に2人引き連れて…
あっ、これ終わったやつだわ…さようなら俺の異世界生活…
「お客様申し訳ありません」
「すみません本当にごめんなさい、そんなにお茶が重要だとは思ってなかったんです。後生ですから通報だけはやめてください、お願いします!!!」
「へっ?何の話ですか?」
「えっ?通報するんじゃないんですか?」
「そのようなつもりはありませんが、お客様は犯罪者か何かなのでしょうか?」
「いえ、それは絶対にないですね。神に誓ってないです」
「それなら尚のこと通報なんて致しませんよ。ふふっ、何を勘違いしておられたんですか?私はただ、見た事も無いほど容姿の整った男の子が、余りにもひどい髪型をしていたので、これはいけない!と思い、手の空いてるものを集めてきただけですよ?」
「そ、そうですか…お恥ずかしい所をお見せしてしまいすみません…でもいいんですか?俺なんかに4人も人手を割いてしまって、まってるお客さんは他にもいるのに…」
「それなら気にしないでください、ただいま連れてきました2人は今日この後は一日空いてる者です、仕事に組み込まれていた訳では無いので心配しないでください」
「はぁ…それならいいんですけど…」
「はい、では目に髪の毛が入るかもしれませんので、目を瞑っていて頂けるとありがたいです」
「あっ、はい。分かりました」
そうして俺は目を瞑り、30分ほど美容師さん達と他愛ない話をしていると、どうやら終わったのか、美容師さんの手が止まった
「終わりました、こちらでいかがでしょう」
と言われ目を開けると、おぉ、こんな俺でもかっこよく見えるな…全体的に長めなのは変わらないが、肩まであった髪もきちんと整えられ、目元を覆い尽くしてた前髪も、目にかかるかかからないぐらいの所まで切られている。さすがプロだな、文句のつけようが無い…
「完全に私たちの好みの髪型にしてしまいましたが、如何ですか?」
「大丈夫です、文句のつけようがないですよ」
「それはよかったです。では仕上げに入りますのでもう少々お待ちください」
「はい」
シャンプーをしてもらい、髪型をセットしてどうやら終わりみたいだな。ふぅ…髪切ってもらうの久しぶりすぎて緊張した〜、てか異世界に来て最初にすることが散髪っておかしくね?まぁ、今更だから気にしてても仕方ないか…
「ありがとうございました、えっといくら払えばよろしいのでしょうか?」
「銀貨一枚になりますね」
「あっ、ではこれで」
「はい、丁度ですね。また髪が切りたくなったら是非当店にいらして下さい。絶対に来てくださいね??」
「え、あっ、は、はい?わ、わかりました」
「よし、言質は取りましたよ!皆さん!聞いてましたね!?」
「はいっ!店長!!」
なんだこの一体感は…てか、この人店長だったのかよ!?そこまでして1人のお客さんを確保したいなんて経営に困ってるのかしらん?
などとどうでもいいことを考えていたが、そろそろ行かなくては
「すみません、そろそろ行きますね。また来た時はよろしくお願いします」
「はい、お待ちしております」
そして俺はようやく目的の場所に向かうのであった。
うーん、やっぱり異世界と言ったら冒険者ギルドだよな!さっき店員さんから聞き出した情報によると、この道を少しした所にある魔道具屋を左に行って少しした所にあるって言ってたよな?はぁー楽しみだなギルド!でも、新顔って絡まれやすそうだし…テンプレにはならないように気を付けておかないとな、なるべく目立たないように地味にやっていこう!
などと考えていると目印の魔道具屋に着いた、ここを左に行った先にギルドがあるはず!待ってろ!俺のギルド!!
とスキップ混じりでギルドまでの道を歩いていると、周りから注目されてしまった…うぅ、浮かれすぎたか…目立ちたくなかったのに、このままではまずい。まずは落ち着いてっと……よしっ、入るぞ!!
いつの間にか目の前まで辿り着いていたギルドに足を踏み入れる。いくつかの視線は集まるが冒険者ギルドだけあって、みんなそれぞれ忙しそうにしてるし注目されずにすんだ。
「ふぅ…第一関門突破かな?」
などとフラグっぽい事を口走ってしまったが、これといって誰かに話しかけられるってこともなかった。ほっ…と一息吐き、いざ受付のところに向かう
「すみません、ちょっとお聞きしたいのですが、冒険者登録はどこですれば宜しいのですか?」
近くにいた受付嬢に声をかけると無言でこちらを見つめている。口をポカーンと開けて、譫言のように、「び、美少年だ…」なんて呟いているが、大丈夫だろうか?
「あ、あのーどうかしましたか?」
「あっ、いえ!すみません!冒険者登録ですね!私が受け付けますので、こちらにお座り下さい!」
「では、失礼します」
「冒険者登録という事ですが、今までに冒険者ギルドに登録したことは?一応確認しなくてはならないことなのですが、何か犯罪を起こし、ギルドを強制退会処分を受けている人は、どう足掻こうとも2度と登録できないように出来ているので」
「そうなんですか、俺は大丈夫だと思いますよ?何せ冒険者ギルド自体初めて見ましたし」
「そうなんですね!それはよかった。冒険者ギルドはいわゆる大都市と呼ばれるところには必ずあります。小さな村等には置かれて居ない事もありますが、大体の街にはあると思いますので、ここで登録して頂いても、他の街で登録し直すなんて事はならないので、そこは心配しないでくださいね」
「なるほど、覚えておきます」
にこっと俺が笑みを浮かべながらお礼をすると、受付嬢は顔を赤くしながら顔を背けてまた、「やっぱりかっこよすぎるよぉ…」などと独り言を言い。はっ!とした表情を浮かべ「失礼しました!」とこちらに向き直った
「では、登録作業を進めていきますね。まずはこちらをどうぞ」
受付嬢はそう言うと、1枚のプレートを俺に手渡した
「こちらに血を1滴垂らしてもらうと、あなたの情報を読み取り、第三者に使えないようになっておりまして、名前なども勝手に判別してくれるので、偽名なども使えないようになっております。まぁ、犯罪者が入り込むのを阻止する狙いもあってのものですが、金銭を預ける時にもこちらをお使い頂けますので、身分証明証としてもお使いいただけます。」
「なるほど!すごく便利ですね。もしかしてこれも魔道具の一種なのでしょうか?」
「はい、よくお気づきですね。私としての見解ですが、この世界で一番普及している魔道具だと思いますよ!」
「冒険者ってどれ位の人数がいるんですか?やはりランクとかも存在してくるんでしょうか?」
「では、次はそのへんの説明に移らせてもらいますね。そうですね、まずは人数ですがこのギルドはそこそこ人が居て、約2000人といったところでしょうか。」
「2000人?それって多いんですか?」
「はい、と言ってもこの街を拠点にしている人達の人数が2000人なのであって、拠点を転々としてる人たちはこの人数には含まれていません。ちなみにあなたはこの街を拠点にするんですか?」
「いえ、俺は1週間ほどでこの街は去る予定です」
「そうなんですか…冒険してこそ冒険者ですもんね…気を取り直してランクの説明ですが、その前にプレートに登録を済ませてしまいましょうか」
「そういえばまだ登録してなかったですね…これって血はどこに垂らしてもいいんですか?」
「はい、プレートの上に垂らして頂ければ、場所はどこでも構いませんよ。血を出す際こちらの針をお使い下さい」
「ありがとうございます。ではさっそく」
受け取った針で人差し指を浅めに刺す。ちょっとチクッとしたが、これくらいすぐ自然治癒するだろう。
えっと…これを垂らしてっと…
プレートに血が垂れた瞬間、プレートに文字が浮かび上がってきた。
おぉ!なかなか感動するな!こんな風に反映されるんだな…魔道具って不思議だなぁ…さすが異世界だな!
「っと、これで大丈夫ですか?」
「えぇ、問題なさそうですね。えっと、ユウキさん…ですね。改めまして、私は当ギルドの受付を担当しております。リーシャと言います。気軽にリーシャとお呼びくださいね?」
「あっ、名乗りもせずすみませんでした!よろしくお願いしますリーシャさん」
「ふふっ、はいよろしくお願いします。では、プレートの方を確認していきましょう。名前は大丈夫ですね?」
「はい、これですね」
「その下が、年齢と登録した街になってます」
「あっ、これですね!…ではこの下がランクですか?」
「ええそうです。ユウキさんは登録したばかりですので、Fランクからのスタートになってます。Fから順に、E、D、C、B、Aの順に上がっていき、S、SS、SSS、Lとなっています。S以上の冒険者は一つの街に1人居ればいい方で、Lランクとなると、この数100年では存在すらしていないと言われています」
「そんなに凄い人が昔居たんですか?」
「はい、文献によると昔の勇者様がそうだったとか」
「あー、なるほど…それなら有り得そうですね」
「私達は登録したての方に必ず言うことがあるのですが」
「はい?それは何ですか?」
「まず一つ、犯罪に手を染めた際は、先ほども申しました通り、ギルドを脱退してもらいます。1度脱退すると2度と冒険者登録は出来ませんので、ご注意ください。これは、自分から抜けても一緒です」
「はい、わかりました!」
「次に、一つの街に拠点を置くことにした場合は、その街の冒険者ギルドに報告すること。これは、万が一街に危機が訪れた際、腕利きの冒険者に対応してもらうことがある為、直ぐにアポが取れるようにしておく必要があるからですね」
「なるほど、スタンピードとかですか…」
「そうです、ここ最近そういった事が多いため、尚更この対策が役立っているんですよ」
なるほどね、腕利きの冒険者さえ囲えてしまえていれば、万が一の場合にも対応がしやすいという事か…まぁ、俺には関係ないかな。拠点を一つに留めておくつもりもないしな今のところ。まぁ、覚えておいて損は無いだろう
「覚えておきます」
「はい。では最後にこれだけ…命あっての物種です。無闇に自分の命を粗末にする行動を取ったり、無謀な冒険だけは控えてください。死んでしまっては元も子もないので、これだけは皆さんに言い聞かせています」
「約束します。俺は絶対に死にません。何があってもまた元気な姿をリーシャさんに見せに来ますよ」
「か、からかわないで下さいっ!」
リーシャさんは顔を赤く染め、頬を膨らませながらも今度は顔を背けることは無かった
「約束ですよ?」
「はい!約束します!」
「ふふっ…では、改めてようこそ冒険者ギルドへ!こちらは初心者向けの依頼になっております。この中から好きなものをお選びください。これをクリアして、始めて冒険者として登録できます。」
「あっ、だからランクの所が空欄だったんですね!」
「そうです。簡単な依頼をこなしてもらい、冒険者としてやっていけると判断された場合には、こちらからランクを授与させて貰いますので、頑張って依頼をこなしてくださいね?」
「わかりました。えっと…この中だと…」
依頼書を読みその中で一番お金がもらえるものにしようと思い、まずは依頼の内容を見ていく。チートスキルがあるおかげで、異世界の言葉も日本語で書かれているように見えるのだから、チート様々だな。
などと思いつつも依頼書に見を通してゆく、やはり初心者向けなだけあって簡単そうなものが多いな…薬草の採取は…うーむ、楽そうだけどお金はそんな貰えないなぁ…おっ、これでいいや!ゴブリン3体の討伐!これならこの世界でどれ位動けるのかも分かるし、戦闘の練習になるしな!それに結構お金も貰えるし!
「これにします!」
「はい、ゴブリンの討伐ですね。ゴブリンは王都を出て、1時間ほどの森の中に居ます。初心者向けとはいえ、たまに徒党を組んでいる者達もいるので、充分気をつけてください。基本的に1体で行動してるはずなので、あまり多い群れは狙わずに確実に仕留めるようにしてくださいね?」
「了解です!それじゃ、行ってきますね!!」
「はい、頑張って来てください」
その言葉を最後に俺は冒険者ギルドから足を踏み出す。よし!
10分後…
俺は今来た道をとぼとぼと戻っていた…
はぁ…よくよく考えれば分かることなのに…俺は阿呆なのかっ!くそっ…
俺がなぜギルドまでの道を戻っているのかと言うと…
武器が無いのである。もう一度言う…この世界では必要不可欠である武器が!俺は!無いんですよ!!!魔物討伐って言葉に浮かれて大事なことを忘れてたよ…本末転倒もいい加減にしろって話だよ全く…
「リーシャさんすみません…」
「あれ?ユウキさん、森に向かったんじゃないんですか?」
「はい、向かったのですが途中であることに気づいてしまって…」
「あること?なんでしょう?」
「武器が…」
「武器が……?」
「無いんです…」
「え、それじゃこの都市までどうやってきたんですか?」
「それはたまたま居合わせた行商人の荷馬車に乗せてもらって…」
と言う事にしとこう。
「そうだったんですね…それならそうと先に仰ってくださればよかったのに…武器屋の紹介ですか?」
「面目無いです…お願いできますか?」
「はい!勿論ですよ!そういった事もギルドでは行っているので、何かわからないこととかあったらどんどん聞いて下さいね?」
「今度からはそうすることにします」
「はい!で、武器屋ですがギルドと提携している所と私個人のオススメの所があるのですが、どちらがよろしいですか?どちらも価格的には変わらないのですが…」
「うーん、そしたらリーシャさんのおすすめの所にしようと思います」
「そうですか!でしたら少々お待ちください。地図を書きますので!」
「はい、わかりました。」
リーシャさんが地図を書いてくれている間に、他に忘れていることがないか考えておかないと…武器はこれでよし、スキルの使い方は森に向かう時に見ながら行けばいいとして、 …うーむ、何か忘れているような気がするんだけど出てこない…むぁーーっ!すっっごいもやもやする!!
「できました!…?ユウキさん?どうしたんですか?」
「あっ、えっと…いえ、何でもないです!気にしないでください!」
「はぁ…?そうですか…ではこちらが私のオススメの武器屋までの地図ですので、これの通りに進んでもらえればすぐ着くと思いますよ」
「ありがとうございます!助かりました!」
「いえいえ、お気になさらず。これも私の仕事ですから!それともしかしてですが、宿はもうお取りになっているんですか?もしまだなら武器屋の隣にオススメの宿があるので、そちらをお使い下さい」
「あっ、何か忘れてると思ったらそれか…とても助かりました…」
「ふふっユウキさんって意外とおっちょこちょいなんですね」
「恥ずかしいです…と、とりあえず行ってきます!本当に助かりました!では!」
そう言うと俺は踵を返し、脱兎のごとく武器屋に向けて走り出す
「ふふっあらあら逃げてしまいましたか…また後でお会いしましょ!ふふふっ♪」
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着いた…ここがリーシャさんのオススメの武器屋かぁ…なんというか、なかなか貫禄のある佇まいをしてらっしゃるというか、なんだろう…このそこはかとなく溢れ出す、俺の場違い感…ま、まぁ!千里の道も一歩からと言うし!ここからこの武器屋に見劣りしないくらいの大物になってけばいいだけだし!とりあえず入ろう!!
「すみませーん!!ギルドのリーシャさんの紹介できました!!誰かいませんかーー?」
「あーー?うっせーな!そんなに大声出さなくても聞こえてるわ!!」
うぉっ!?レジっぽい所から声がした!?誰もいないように見えるんだけど!?何事だよ!!
「よっと!で、なんだって?リーシャちゃんの紹介で来たとか言ってたが、どんな武器をお望みで?」
レジっぽい所を乗り越えて小さなおっさん…?らしき人物がこちらに向かい歩いてきた…
てか、小さ過ぎて見えなかっただけでちゃんと居たのか…怪奇現象かと思ったわ…てかもしかしてこの人…
「あ、あのっ!ドワーフの方ですか!?」
「あん?おうよ!俺はドワーフ族のベオトロってもんだ!あんちゃんドワーフを見るのは始めてか?」
「はい!始めてです!俺はユウキと言います!これからお世話になります!」
「おう!ユウキな!覚えとくわ!で?武器は決まってんのか?剣、短剣、槍、弓、杖からその他もろもろまでなんでもあるぞ!」
「えっと、とりあえず剣を買おうと思ってるのですが、1本当たりだいたいどれ位の値段なのでしょうか?」
「一番安いのからだと銀貨5枚で俺が打った中で一番良いのだと…金貨10枚までだな!まぁ、どう見ても初心者見たいだから、銀貨10枚位までのにしとけ!金は入用っいうしな!先々のことを考えておかないと後で後悔するぜ?」
なんだろう?ベオトロさんの過去に何かあったのか気になる…銀貨10枚くらいのを4本買っとくかなー、刃こぼれしたとき用に必要不可欠だろうからね!これくらいはお金に余裕あるし!
「えっと、それじゃあ銀貨10枚くらいの奴を4本ください。」
「ん?随分多くねぇか?予備の含めて2本でいいんじゃねぇか?」
「あっ、俺はこれでいいんですよ。無理してるとかそういう訳じゃないので、気にしないでください!」
「そうか?まぁ本人がそう言ってんなら俺からはもう何も言わねぇぞ!んじゃ、こっち来い!」
そう言うとベオトロさんは奥に向かい歩いていってしまった。流石職人だけあって行動が早い…追いかけなくては!
「おう来たな!こっからあそこまでのが銀貨10枚くらいの値のする剣達だ!安いからって心配すんなよ?全部俺が丹精込めて打った剣達だ!ちょっとやそっとの事じゃ刃そぼれはしないはずだ!値段が違うのは使ってる鉱石や必要な素材が高価だったりするだけだぜ!」
なんかベオトロさんが説明してくれてるが俺はそれどころじゃない。これは!!
「…」
「ん?おい?どおし…「うぉぉおおおおおお!!!」!?なんだ!?何かあったのか!??」
「すげぇぇええ!!本物の剣がこんなにある!!圧倒的な存在感!一つ一つに職人の魂が宿ってるのが目に見えてわかる!!素晴らしい!!この中から選べるなんてまさに夢のようです!!ベオトロさん!!!」
「お、おぉ…そうか!!そんなに喜んでもらえると丹精込めて打ってるこっちとしても嬉しいな!!!さぁ!とりあえずどれか手に取ってみろ!」
「はい!!えっと…うわぁ…すごく迷うなぁ…うーむ、これとこれとこれと…それからこれ!!この剣をください!!」
「…悩んでる素振りを見せてた割には速攻決めたじゃねえか…どういった基準で選んだんだ?よかったら聞かせてくれねえか?」
「え?別に何もないですよ?ただ、この子達に呼ばれた気がして、俺を使ってくれって。俺は導かれたまま手を伸ばしただけですよ?」
「…そうか、よし!いいだろう!オマケでこの店にある中で好きなの1本くれてやる!!どれがいい!お前ならどれを選ぶ!教えてくれ!」
「え!?そんな!悪いですよ!!」
「気にするな!俺がいいって言ってんだ!早く選べ!」
「で、でも…いいえ、わかりました!ちょっと集中するので待ってください」
「おうよ!」
そう言うと俺は目を瞑り剣達に集中した。聞こえる…剣達の心が、俺を使ってくれと叫んでいる声が…気のせいかもしれない。だけどこれは何か大切なことなのかもしれない。だけど、もしそれが気のせいじゃないとしたら、俺は剣の叫びに応えてやれる!答えることができる!!さぁ!もっと俺に声を聞かせてくれ!叫びを!「…って…」ん?なにか聞こえた気が…「…かって…」やっぱり聞こえる…こっちか?
「あっ、おい!ユウキ何処に行く!」
「ちょっとベオトロさん!黙ってて!」
そう言い俺はベオトロさんの口を塞ぐ
「ぐむっ」
「聞こえるんです!何か小さいですが…あの、向こう行っても大丈夫ですか?」
「…ぷはっ!何しやがる!」
「あっ、すみません!向こうの方から聞こえてくるんですが、向こうにも剣あるんですか?」
「あん?向こう?いやないと思うが……いや、1本だけある。でもあれは…ちょっと着いてこい」
「はい?わかりました」
奥の部屋に案内され暫く歩いていると
「ここだ」
「えっと?これはなんですか?」
「ここをこうすると…」
ガコッ…え?なんか仕掛けでも作動したような音が聞こえたけど…なんだ?
「こっちだ」
あれ?いつの間にか地下へと続く階段がある…えっと、ここを進んでくのか?大丈夫か?今にも崩れそうなんだけど…
「ここを行くんですか?」
「あぁ、明かりは魔法で灯してくれ。と言っても俺は魔法が使えないんだけどな!まぁ!頼んだ!」
やはりドワーフは魔法適性がないっぽい、てか明かり俺も灯せないけど…あっ、光魔法とかであるのかな?魔法の極意で無詠唱で魔法唱えられるし、心の中でそれっぽいの探れば出来るかも…えっと、ライト…あっ、頭ぐらいの大きさの光が灯った…そのまんまかよ!いや?もしかしてこれは具現化の方かな?光魔法は勇者しか使えないって国王は言ってたし、俺は明かりをイメージしてたから…うーん、まぁ後で魔法書とか買って勉強してみれば分かることか。
「おっ、生活魔法使えるのか!そいつは助かる!無理だって言われてたら工房から松明を持ってこなきゃならんかったからな!」
先に聞いといてよ!!
「先に聞いといてよ!!」
あっ、やべ声に出た。
「がっはっは!悪い悪い!うっかりしてたわ!」
ほっ、どうやらタメ口でも怒られたりはしないようだ…ベオトロさん自体がこんな感じだしそこら辺はあんま気にしてないのかな?
「そんじゃ、着いてこい!つっても5分くらいだけどな!階段狭いから足元は気をつけてくれよ!落ちても責任は取らねーからな!」
「そんなに高いんですか?」
「高いなんてもんじゃねーぞ!この階段は螺旋状になってるから、下までは俺の店10個分近くあるはずだぜ!」
え、それって普通に100m以上あるんじゃ…たしかに普通の人なら落ちたら一溜りもないどころか、即死する高さだ…
「き、気をつけます…」
俺の場合は魔法を使えば何とかなるだろうが、まだ一度もやったことのない魔法をいきなり使って失敗した。ではお話にならない…ここは素直に気をつけておこう…
「おう!それがいいだろうよ!んじゃ行くぞ!!」
それだけ言うとベオトロさんは歩き始めた。その直ぐ後ろを俺も歩いていく。無言の中唯ひたすら階段を降りていく二人の男のカツン…カツン…という音だけが無情にも響いていく……小さいおじさんと根暗の組み合わせ…とてもシュールである。特に俺はコミュ障をこじらせているのでこういった時にどんな話をすればいいのか全くわからない…ここはイベントシーンだと思いつつも、話すことが思いつかないので無言のままひたすら階段を降りること、10分…こういった時の10分ってすごく長く感じるよね…てか、さっき5分くらいって言ってたのに…
と、そんな事を考えているとどうやら終わりが見えてきたらしい。
「よし、この奥の部屋にあるぞ!覚悟はいいか?」
最後の一段を降り切りベオトロさんがようやくこの静寂を打ち破ってくれた。
いやいや何?覚悟が必要なの?いきなりモンスターとかに襲われたりしないよね?なんか緊張してきた…
するとまた声が聞こえてくる…「早くこっちに…」「私を…って」さっきよりもはっきり聞こえてきた!やっぱり呼んでるみたいだな!
「その顔はまたなにか聞こえたって顔だな?ふむ…やっぱお前のことを呼んでんのかもな」
「そうなんですかね?てか、今更ですけどなんでこんな所があるんですか?」
ふと疑問に思った事を質問してみる事にした。今更だが本当になんなんだろうこの場所は…
「それは歩きながら説明するぜ」
また先に歩き出してしまった…少し小走りで近づき話に耳を傾ける
「俺がまだ若い頃の話なんだが、武器屋を立てる前ここはまだ何も無い更地だったんだがな…その時にたまたま石につまずいて、そしたらそれがスイッチの役割をしていたらしくてだな、いきなり階段が目の前に現れたんだよ」
「え?ここって何も無かったんですか?」
「あぁ、もう100年も前の話になるからな。その頃は俺も若かったから、目の前に突然階段が現れて、隠しダンジョン見つけてやったぜ!てな感じで誰にも言わずに階段を降りていった。そしてあの剣を見つけたんだったな…確か」
ちょっと待て、今の話にとんでもなく気になる話題が…
「あの、ベオトロさん?100年前って言いましたか?俺の聞き間違いですかね?」
「いや?合ってるぞ?俺は今142歳だからな、だいたい100年近く前になるだろ」
んなっ!!待ってくれ!ドワーフって別に長命種でも何でもないよな!?いや、この世界のことについては何にも知らないし、この世界ではそれ位は普通に生きるのかもしれない。
「そ、そうなんですか…結構年上だったんですね…驚きました…」
「がっはっは!そりゃそうよ!何たって俺はダンジョン踏破者だからな!」
ダンジョン?踏破すると寿命が伸びるのか?なんだろう気になる…また後で調べなきゃならん事が増えた…とりあえず聞いてみるか
「ダンジョンを踏破すると何かあるんですか?」
「ん?あぁ、なんか闇を退けたとか言って神から祝福を授かったぞ?(仮)って着いてるかけどな!なんだろうな(仮)って!」
なんだろう…普通に聞いたことあるんだけど…てか、俺も既に祝福あるし…(仮)なんて付いてない…てゆーことはだ
職業:魔闘神
Lv.1 (経験値増量適用中)
適正魔法属性:火、水、風、土、光、闇、聖
スキル:経験値増量、魔力消費激減、剣術の極意、槍術の極意、弓術の極意、錬金術の極意、魔術の極意、命中補正、千里眼、気配察知、夜目、隠蔽、神速、神盾、ハーレム王の素質、妄想の具現化、イブの加護、言語理解
えっと確かこのクソ女神の加護ってやつだよな確か…えー、なになに
イブの加護:その名の通りイブちゃんに愛される事です!!以上!!
「…」
以上!!じゃねーよっっ!!!!本当使えねぇなあの女神わよ!!!なんの説明にもなってねーじゃねーかよ!!クソが!!あん?なんか続きがある
嘘嘘じょーだん♡えっとねー確かねー不老とー即死回避とー状態異常無効とー再生かなー
あっ!!それともう一つ!邪神に対抗するために半神化ってのも付けといたんだった!うっかり言いそびれる所だったぜーふぅー汗ふきふき♪てへっ♡半神化って言うのはだねー!その名の通り!半分神になれるのだよ!よく分からなかったら教会まで聞きに来てね♡待ってまーす♡
とりあえず…てへっじゃねーよ!!!やっぱりあのクソ女神は今すぐシバくべきだろ!!なんだこのムカつく文は!!頭にクソ女神の顔がちらつくのが本当にムカつく…はぁ…まぁ内容は知れてよかったが、絶対に教会には近づくのはやめよう…
「大丈夫か?顔真っ赤だが?何かあったんか?」
「あっ、いえ…気にしないでください…」
「そ、そうか…よし!気を取り直してここがその部屋だ!最初きた時は完全に宝物庫かと思ってたが、剣が1本台座に刺さってるだけでガッカリしたのはここだけの話だな!」
おいおい…そんなこと言ってやるなよ…ベオトロさんって本当に言いたい事はなんでも言えちゃうタイプなんだなぁ…羨ましい…
「ここですか…確かに見た感じ絢爛豪華とは言わないですが、どことなく神聖さを感じさせる造りになってますね」
「そうだろうそうだろう!さぁ!開けるぞ!」
「待ってろよ…今出してやるから…」
ギギギィィと言う殆ど使われていなく錆び付いてしまったのか、とても重そうな扉をグイグイっと押し、ようやく目的の場所に辿り着いた…
「ここが…なんというか綺麗なところですね…神殿見たいで、この部屋は明るいんですね?」
「あぁ、この部屋の天井を見てみろ」
「天井ですか?あっ…」
ベオトロさんに言われ上を見上げると、天井には無数のキラキラと光り輝く宝石?なのか?が散りばめられていた…鍾乳洞的な場所なのか、天井から鍾乳石?でも白くないし、キラキラと色々な宝石が散りばめられていて、何千、何万と言う色々な色の宝石の輝きは、とても神秘的で幻想的で…なんとも言えない感情が心の奥底から湧き出してくる…心が洗われるようなその光景に目を奪われていると。
「…すげぇだろ?俺も初めて来た時はお前のように暫く天井を見上げてたっけな…いつ見てもこの光景は素晴らしいな!」
「本当…綺麗です…」
だがしかしあえて言わなくてはならない事がある。確かにこの光景を1人で見る分にはいい。ベオトロさんの気持ちは分かる。だけどな!!俺はなんでこの素晴らしい光景を男2人で見ねばならんのだ!?くっ…これが散々神を罵倒した俺への報いだと言うのか…
それを察してか偶然かはわからないが、ベオトロさんは慰めるように、俺の肩を叩きながら無言で神殿の奥、台座に突き刺さっている1本の剣を指差す。
「あの剣が俺を呼んでいたのか…」
ふらふらと剣に導かれるように歩き出す俺をベオトロさんは無言で見送りながら、こちらに向けてサムズアップしている。
「君が俺のことを呼んでいたのかい?」
そう言うと俺は、おもむろに剣の柄を握る
柄を握った瞬間に頭の中にこの剣の情報が一気に流れ込み、それに驚き一気に台座から引き抜く。引き抜いた瞬間剣は眩い光を放ち、いきなり小さくなりました。…えっ?どうゆうこと…?やばい、さっぱりわからん…
「…これ、どうすればいいんですか?ベオトロさん…」
「いやいや、俺に聞くんじゃねーよ!!いや、ちょっと待てよ…聞いたことあるぞ?伝説の武器と呼ばれる物は持ち主の思うままの形に変化することが出来ると…お前何も考えてなかったからとりあえず小さくなったんじゃないか?持ち運びに便利な形にでも想像してみたらいいんじゃねーか?」
「やってみます…」
うーん、先頭に邪魔じゃなくて普段から持ち運びやすい物…アクセサリーとかかな?ネックレス、腕輪、指輪…うーん、どれがいいかなー
(イヤリングとかどうですか?)
うおっ!?びっくりした!話しかけられるなら最初から話といてくれよ!
(すいません…私も話しかけられると思っていなかったもので…)
いや、それはいいんだけどさ、とりあえずイヤリングになってみてもらえるかな?
(了解ですマスター)
そう言うと手乗りサイズだった剣は形を変え俺の耳に飛び付いてきた…
剣に聞きたいことあるんだけど…
(はい?なんですかマスター?もしかしてお気に召さなかったですか?なら今度はネックレスにでも…)
いや、そこは大丈夫だよ。寧ろそこはさほど重要なところではない
(ではマスターは何をお聞きになりたいのですか?)
いや、そのマスターってのが凄く気になるんですが?
(私の主なのでマスターですが?嫌でしたか?)
いや、嫌ではないけど他にないの?
(でしたら、ご主人様とか…旦那様、主君とかでしょうか?)
あっ、うんマスターでいいや。
(了解しました)
あっ、でも一つだけ!敬語はやめてくれ…可愛らしい声で敬語使われると逆に疲れる…普段通りの喋り方でいいよ
(そうですか…では、改めて…宜しくねマスター!私の名前は幻想剣といって、色々な武器に形状を変えられる能力があるの!そこら辺のことは私を掴んだ時に、わかったと思うけど、私のことは幻想剣じゃなくて、名前をつけてくれると嬉しいです!)
おっけー!名前をつけるのは苦手なんだけども、そうだなぁ…神秘的って意味で、ミスティなんてどうかな?
(ミスティ…うん!気に入ったよマスター!これからミスティって呼んでね!)
あぁ、よろしくミスティ!
「…どうやら話は終わったみたいだな、どうだ?伝説上の武器には意思が宿ると聞いたことあるが、その剣はどんな感じだ?聞いた話だと威張り腐ってる男が宿ってたって聞いたこともあるが…」
「そうなんですか?この子はそんな事なさそうですよ?イメージ的には10歳くらいの女の子?って感じですかね?割と可愛い感じの声でした」
「そうか、上手くやれそうならよかったよ。人化できるようになったらまた店に来てくれ!俺も挨拶ぐらいしたいからな!」
「了解です!てか、人化出来るんですか?この剣」
「あぁ、できるはずだぜ?確か他の伝説上の武器達も人化してたらしいからな、俺の生まれる前の話だから根拠は無いが、その辺は自分で調べてみてくれ」
「そっか…楽しみです!」
(私もマスターに会えるの楽しみです!)