第39話 死が迫る間際で人は何を思うのだろう
今回から視点が切り替わる事に、sideほにゃららってのを入れるようにします!
きっと分かりやすくなると信じて!
寧ろ邪魔だろと思った方は言ってください!
あっ、あと!誤字報告してくれた方ありがとうございました!感謝です〜!
〜sideユウキ〜
はっ…!はっ…!
いつもは風に揺られた木々が擦れる音や小鳥のさえずりが音色を奏でるゴブ…いや、妖精の森は普段の穏やかな様子から一転、殺伐とした雰囲気が森全体を支配していた。
その中を走り抜けるユウキ達は、ローズ達が死闘を繰り広げている事を徐々に近づく激しい戦闘音を聞く事で悟り、ユウキは走らせていたミスティをイヤリングに変化させ、リリアをお姫様抱っこで抱えつつ目の前の木々を吹き飛ばしながら走り続けていた。
「お、お姫様抱っこ…こんな時に言うのもなんですが……幸せすぎますーーっ!!!!」
(リリアずるいのです!!変わるのです!!寧ろ捨てちゃいましょうマスター!!)
「はっ、はっ……本当に君たち緊張感ないよね…」
「だって、ユウキさんがなんとかしてくれるって信じてますからね!怖いものなんてあるわけ無いですよ!」
(リリアにしてはいい事言うのです!珍しく私も同意なのです!)
「お〜?ルビーもね〜パパのこと信じてるよ〜?」
なんでこの子達は俺の事を信頼してくれるんだろう?こんな俺を…
昔の俺ならこんな風に思ってたんだろうな…
でも、今は違う…俺にも護りたい人がそばに居て、護りたい場所ができたんだ!
「そんなこと言われたら答えないわけにはいかないよなぁぁぁあああ!!!!」
森の中に張られた妖精族の結界のの中に飛び込んだ事により視界が晴れ、真っ先に目の前に飛び込んできた光景は、今まさに竜のブレスに飲み込まれ、この世界から命が絶たれようとしているローズの姿であった。
その姿を視界に収めた俺は一気に自分の身体を流れる血が熱を帯び、ドクンッと脈動するのがわかる。
ローズの目の前に飛び込み、リリアを地面に降ろし拳を振り抜く。
西音寺流徒手格闘術 中伝 闘気拳…
それが竜の本気の一撃を正面から消しとばした技の名であった。
「……蜥蜴風情が何してんだ?殺すぞ?」
ローズの元へ辿り着いた俺は、土竜のブレスを拳圧で消し飛ばし、今まで感じたことの無い怒りの感情を込めて土竜に殺意を向ける。
その瞬間、森全体が静寂に包まれる…
ガタガタと震えているのか、土竜が小刻みに揺れ、地面を揺らしていた。
俺が殺気に魔力を込めて土竜にぶつけると恐れを成したのか、一歩後退しそのまま逃げ去るように森の奥へ消えていった。
「……ふぅ、大丈夫でしたか?ローズさん?」
「ユ、ウキ…さん…?」
「えぇ、そうですよ?なんとか間に合ってよかった…お怪我はありませんか?」
「ユウキさんっっ!!うわぁぁぁぁああんん!!」
「えぇ!!!??ちょっ!?大丈夫ですかローズさん!?」
先程まで迫っていた死の恐怖…そしてユウキの優しい笑みを見たローズは緊張の糸が一気に解かれ、肩を抱かれて、支えられていたリリアを吹っ飛ばしユウキに抱きつき泣きじゃくっていた。
「ちょっ!?私吹っ飛ばされた、んむっ!?」
「すみません!ローズさんの為にちょっと黙っててください!!」
この国の女王になったとはいえローズは齢19の少女である。
ローズの泣き声と、リリアの「むぐぅぅぅっっ(私王女なのにぃぃぃ)!!」という声にならない声が森に木霊していた。
〜sideローズ〜
ユウキが無事にローズの元へ辿り着くほんの少し前…
ローズ達は最大のピンチを迎えていた。
「ローズさん!!このままじゃ凌ぎきれません!!やはりアリンさんを呼び戻さないと!私達が!」
「くっ…!!はぁ、はぁ…みんな…諦めないでっ!」
そうは言うもののローズ自信ももはや限界を迎えようとしていた。
ローズは妖精族の中でも遥かに魔力量が多い。
だが、他の者が交代で魔法を行使して尚、バタバタと魔力切れを起こし倒れ伏してゆくなか、膝をつくことなく気丈に振る舞っている姿は、まさにこの地を統べる女王である…そうローズの後ろ姿は語っていた。
隣に立ち、ローズを支えようと頑張っていたサーシャも既に限界を迎えていた。
ゴァァァアアッッ!!!
この時を待ってましたと言わんばかりの今日一の咆哮を見せた土竜にローズは絶望する。
あぁ、こいつは全然本気じゃなかったのか…私達は遊ばれていただけだったのだ…
その事実を先程までとは比べ物にならない程大きな魔法陣を展開した土竜を見て、自分の死を予感する。
「……せめてみんなは逃して見せる……お願いルビリオ…貴方が好きだと言ってくれたこの森を守る力を私に……」
「ローズさんっ…に、逃げてください!貴方はこんなところで死んではダメです…ぅぅああっ…立て!私!!お願いっ……誰かローズさんを助けてっ!!」
その瞬間…土竜がニヤリと笑った気がした。
そして、解き放たれたブレスは妖精族の里を丸ごと消し飛ばすぞ!という意志を感じる程、悪意の篭った一撃がローズの目前まで迫りくる。
「絶対に守って見せる!!極大魔法!風神の吐息!はぁぁぁあああっっ!!!!!」
滅ぼす者と守る者…
両極端が唱えた魔法は僅かに均衡し…
そして、片方の魔法が飲み込まれていった。
魔力がほぼ空と言っても過言ではなかった状態から極大魔法を行使できたのは奇跡だったのだ…
「あっ…」
呆気なく飲み込まれてゆく自らの魔法を前にただ立ち竦む事しかできなかった…
あぁ、ここで私は死ぬのか…ルビーごめんなさいね…みんな、巻き込んでしまってごめんなさい…19年間の長いようで一瞬であった命の終わりに、走馬灯をみる…夢から覚めるように現実に引き戻されたローズは思うのであった…
「……もっとユウキさんと話していたかったな…」
最後に思うのは娘が連れてきた、1人の男の子の姿であった。
彼を一目見た時の衝撃は忘れられない。
ルビリオの生まれ変わりなのでは無いか?そう思わずにはいられないほど、雰囲気や話し方…そして、魂の波動が酷似していた…そんな彼を気に入ったルビーに、流石私の娘!と思ったのは記憶に新しい。
そして、娘が連れて来た彼に徐々に惹かれている私は最低な親なのかな?と思いながらも、どうしてもルビリオに似ているユウキの事が気になって仕方なかった
だからかなのか、ローズが最後に神に願うのはただ一つ…
生まれ変わったら必ずまた会えますように…
そう願い…目を閉じた時
奇跡は訪れる…
「……蜥蜴風情が何してんだ?殺すぞ?」
死ぬ間際…聞きたい、会いたいと願った人の声が聞こえた気がした。
いつまでも訪れない自らの死に、恐る恐る目を開くとそこにいたのは優しく笑いかけるユウキの姿であった。
「大丈夫でしたか?ローズさん?」
何が起きたか理解できない。
私は夢でも見てるのか?と思い自分の腕を軽く抓ってみると普通に痛みを感じた。感じることができた。
そして、気づいたらローズはユウキに抱きつき泣いていたのであった。
〜sideユウキ〜
未だ俺に縋り付き涙を流すローズの頭を撫でながら倒れていた者達にポーションを配って回る。
「…ぷはっ!凄い効き目ですねこのポーション…っと、その前に助けていただきありがとうございました…私はサーシャといいます」
「いえいえ、俺は当然の事をしただけですし、ローズさんやこの美しい森を失うのが嫌だったので気にしないでくださいサーシャさん」
「そう、ですか…ローズさんがここまで感情的な姿は初めて見ましたよ…改めてこの国を救ってくれてありがとうございます!」
サーシャのありがとうの声に続き、あちこちから感謝の言葉が俺に注がれる。
「ははは…とりあえず一旦休みましょうか…ローズさんもこの調子だし…結界は俺が補強しておきますので、皆さんも休んでください!」
「むぐぅぅぅっっ!!むぐむぐ…っ!」
「あっ、忘れてました!えいっ!」
「ぷはっ…はぁはぁ…し、死ぬかと思いました…」
「す、すみません!ローズさんの為に咄嗟に拘束魔法を使ってしまいました!!」
「い、いえ…気にしないでください…私、王女なのに…いつもこんな目に…うぅ…」
リリアから目を逸らした俺は、サーシャさんも同じく目を逸らしたらしく目が合うと、あ、あはは〜と笑い合い「では!私は泉の様子を見てきます!」とこの場を足早に立ち去っていった。
逃げやがった!と思ったが「いってらっしゃい〜」と言うだけに留めた俺は、いじけるリリアと、念話で撫ですぎなのです!と煩いミスティと、俺と一緒にローズを撫でるルビーの姿になんとか凌ぎ切った…と空を見上げるのであった…
だが、悪夢はこれで終わらない…
これはこの森で起こる悪夢の前座に過ぎなかったのであった…
悪夢は続くよどこまでも〜!はいっ!こんにちは!
今日もお読みいただきありがとうございます!
なんとかバッドエンドは回避しました!僕のノリ次第ではここでローズさん退場もあり得たので一安心です!
次回の更新は明日の正午になります!
引き続きこの物語をよろしくお願いします♪




