第36話 一時の休息の後に…
お待たせしました〜!
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「「「「ごちそうさまでした!!」」」」
「満腹なのですっ!けぷっ…」
「こら、ミスティ下品だぞ?」
食事を終えた俺たちは食器の片付けも終わりのんびりと幸福な時間を味わっていた。
「パパ〜?さっきのご飯美味しかった〜♪また作ってくれる〜?」
「ん〜、ルビーの頼みならいつでも作ってあげるよ?そんなにカレーが気に入ったのか〜」
「カレーは最強に美味しかったのですっ!」
「そうですね!私もまた食べたいです!」
「あはは…明日の朝も食べようと思ってたのに鍋がすっからかんになったもんね…気に入ったようで何よりだよ…」
「「うっ…」」
リリアとミスティが次々とおかわりをするので、軽く15人前くらいあったカレーが一晩で消えてなくなってしまったのだ…
俺が明日の朝ごはんどうしようかな〜と考えているとリリアとミスティは流石に食べ過ぎたかも?と思ったのか「散歩してきます!」と言って森の中に入っていった。
「夜の森は危険だからあまり遠くまで行くんじゃないぞ〜!」
「はい!」「はーいなのです〜」
2人はこちらを振り返ることなく返事だけして森の中へ消えていく。その姿を見届けた俺は、風呂の準備でもしておこうかな?と思い土魔法で作った露天風呂に水を張り、熱した石を投げ入れ温度を調節する。
「我ながら完璧な温度っ!!2人が戻ってくる前にお風呂入っておくか〜♪1番風呂〜♪」
とご機嫌な俺はルビー様に風呂桶を作ってやり、そこに色んな効能を合わせたお湯を入れてやる。
「ルビーは温泉って入ったことあるかい?」
「おんせん〜?入ったことない〜♪」
「そうかー気持ちいいぞ〜?てか、俺もこの世界に来てから温泉入るの初だな…」
この世界に来て2週間足らずが経過していたがこの世界にお風呂という概念が庶民に浸透していないらしく、リーファちゃんのとこの宿屋にもシャワーだけしか備えられていなかった。
「そういえばルビーのお家もお風呂なかったもんな〜この世界にお風呂を愛する文化は無いのか…?」
「お〜?ルビーはむずかしいことはわからないよ〜?パパ〜?早く温泉入ろ〜?」
文化が無いから入っちゃダメなんてルールは無いからな!気にしても仕方ないか!と思い、ルビーの服を脱がしてやり、俺も服を脱いで2人で竹垣で囲ってある露天風呂に肩まで浸かる。
「「はふ〜♪」」
思わず…といった様子で口から出てしまったため息にルビーと顔を見合わせ笑い合う俺たちは、ご機嫌なルビーの歌を聴きながら満点の星空の下で露天風呂を楽しんでいる。
「ルビー?暑く無いか?無理するなよ〜?」
「お〜、パパ〜だいじょうぶだよ〜♪温泉ってすごくきもちいね〜♪」
「おっ!ルビーにもこの心地よさがわかるか〜」
しばらく温泉に浸かり、ルビーの小さな頭を優しく洗ってやってると散歩から帰ってきたのかリリアとミスティの声が竹垣の外から聞こえてくる。
「ユウキさーん?何してるんですかー?」
「マスター!もくもく湯気がたってるのです!何か作ってるのです?」
ミスティや…お主はまだ何か食べるつもりなんか…と少し呆れながらも「温泉に入ってるだけだよ」と返事を返す。
「おんせん?とはなんでしょう?」
「おんせんね〜、すごくきもちいよ〜?」
「こら、ルビー!目を開けたら石鹸が染みるぞ?」
「ふぇ〜、パパ〜めがいたいよ〜うぅ…」
「ほら、言わんこっちゃ無い…って事でリリアとミスティは俺たちの後で温泉に入りな〜」
「ん?もしかしてユウキさんお風呂に入ってます…?」
「おっ、リリアはお風呂を知ってるのか〜やっぱお城にはあるのかい?」
「ありますよ〜!そういえば最近お風呂に入ってな…い…って!まさか2人でお風呂に入ってるのですか!?」
「え?入ってるけど…?どしたの?」
「どしたの?じゃないですよ!!私も今すぐ行きますから!!」
「え?いや、それはダメだろ!俺裸なんだけど!!」
「だから行くんですよ!!行きますよミスティちゃん!」
「えっ!?私もです!?…ま、まぁ…マスターの裸体には興味があるのです…ぐへへ…」
「何言ってんの2人とも!?くっ!慌てても仕方ないか…馬鹿だな2人とも…俺がなんの対策もしてないと思ってること自体が間違いなのだよ…くっくっく…」
「お〜!パパわるものみたいなの〜かっこいい〜♪」
くっくっく…と直ぐに倒される最初の敵の様な笑い方をしているが、ルビーには意外と評判が良かった。
いや…ルビーって大抵俺のやること肯定してるから、側から見たらただキモいだけって可能性はあるか…?と冷静さを失っていない俺はすぐに笑うのをやめルビーの頭を流してやる。
「ぷは〜っ今度はルビーがパパの頭洗ってあげるよ〜?痒いとこはありませんか〜♪」
「おっ、ありがとな〜そこ!いい感じに気持ちいい…まさか女の子に頭を洗ってもらう時が来るとは…3歳児だけど…」
そんなどうでもいいことをしみじみと思っていると喧しい声が隣の温泉から聞こえてくる。
「ユウキさん!?なんでそっちに行けないのですか!?早くこの結界を解除してください!!せめて一緒に入れなくても覗けるくらいの配慮をしてください!!」
「いや…普通男が覗くんだけど…立場が逆なんだよなぁ…」
「マスター?リリアはともかく私だけでもそっちに行きたいのです!」
「いや、ミスティも最近思考がリリアに毒されてるからダメだよ〜こっちは平和に温泉に浸かりたいからね〜」
「お〜、平和がいちばん〜♪」
「なんでルビーちゃんは良くて私たちがダメなんですか!?不公平です!」
「いや、ルビーは子供だぞ?大人と一緒じゃないと流石に危ないからね?」
「それなら私も見た目は子どもなのです!そっちに行きたいのです…」
「だから諦めなさい…もうやだこの子達…」
「パパ〜?元気出して〜?リリアも〜ミスティも〜パパを困らせたらダメなんだよ〜?」
「「うっ…で、でも…」」
1番年下のルビーに叱られてしゅんとなった2人はとぼとぼと諦めて自分たちに当てがわれた温泉に浸かることにしたようだ…
ちょっと意地悪しすぎたかな…と思った俺はリリアとミスティに水着を出してやる。
「リリア〜ミスティ〜!今脱衣所のところに水着を転移させたからそれを着たらこっちに来てもいいけど…どうする?」
「「!!?着ます!!!」」
ザバァンッと温泉から飛び出した2人は走って脱衣所に向かう。「転ぶなよ〜」と俺が声をかけた時に2人は、「ひゃ〜!?」と声を揃えてひっくり返ったようだ…一応怪我防止の為に威力軽減魔法で床をコーティングしていたおかげで2人とも怪我はない様子だ。
「着てきました!早く入れてください!」
「マスター!水着可愛いのです!」
「ちょっと待ってな〜」と言い張っていたら結界を解き、仕切りを魔法で開いてやる。
「いいぞ〜、また走って転ぶなよ?」
「やりました!うぅ…生きてきてよかった…」
「マスター!見てなのです!イルカさん可愛いのです!」
なんか感極まって泣いているリリアはほっといて、駆け寄ってきたミスティの水着姿を見てやる。
「お〜♪ミスティ可愛いの〜♪」
「うん、似合ってるね?いろいろ用意しといたけどそれにしたんだ?可愛いよミスティ」
「えへへ〜、迷ったのですがこれが一番気に入ったのです!このイルカさんが可愛いのです!」
いや、ミスティのが可愛いわ!と声に出したかった俺だが、ぐっ…と堪え「頭洗ってやるから前座れ〜」とだけ言うにとどめる。
ミスティの水着は布面積多めのビキニタイプでイルカをあしらった水色の可愛らしい水着はミスティの空色の髪との相乗効果により、可愛いながらもとても美しく感じられた。見た目は10歳程度の女の子だけど…
「ふわ〜人に頭洗ってもらうの気持ちいいのです〜クセになりそうです〜」
「目は開けるなよ〜?というかリリア!いつまでも突っ立ってないで温泉に浸かりなさい!ミスティが終わったらリリアの髪も洗ってあげるから」
「!!?いいのですか!?ユウキさんに髪を洗ってもらえるなんてっ…私今日死ぬのかしら…」
途端にご機嫌になったリリアは俺の髪を洗い終わったルビーと共に温泉に浸かる。
湯気でリリアの姿が良く見えなかったから後で褒めてやるか〜と思いつつミスティの頭をゴシゴシと洗っていると「あれ?ルビーちゃん…水着は…?」とリリアが余計なことに気付いてしまった。
「あー、ルビーサイズの水着は作ってなくてな〜まぁ、3歳児だしいいかな?と思ってそのままにしてあるぞ〜」
「あー、たしかに妖精さんサイズの水着は無さそうですもんね…ユウキさんはどんな水着なんですか?」
「ん?俺?俺も履いてないけど?」
「へ〜、履いてないんですね…って履いてない!?裸ってことですか!?」
「いや、タオル巻いてるけど…」
「タオルだけ!?…て事はラッキースケベ的な展開もあり得るのでは…?」
例の如く残念なリリアの発言に、これが王女で本当に大丈夫なのか…?とガチで心配になった俺は、さっさとミスティの髪を洗い流しリリアを呼んだ。
「ほい!次リリアだぞ〜」
「は、はい!今参りまつっ!!」
緊張した面持ちで返事をし、舌を噛んだ痛みも忘れ、手と足が一緒に出ながら歩いてくるリリアは、残念王女でも美少女なのに変わりはない。
そんなリリアが着ていたのは赤色のビキニであった。可愛らしいフリルの付いた水着はリリアの可愛さを充分に引き立て、何処か扇情的なオーラを纏っていた。
ゴクリッ…と生唾を呑み込んだ俺は、いかんいかん!と頬を叩きリリアを待ち受ける。
「よ、よろしくお願いしますっ!」
「あ、あいよ〜、ところでリリア?水着似合ってるよ…何というか…やっぱ素材がいいとこんなに魅力的になるんだなって思ったわ〜」
「ひょっ!?」
俺が思ったことを口にすると、リリアが奇声を発しながら背筋をピーンと伸ばす。
「ひょ…?まぁいいか、どっかあらい足りないところあったら言えよ〜?」
「素材がいい…魅力的…うふふ♪ユウキさんに褒められちゃった…うふふふふ〜♪」
褒められたのがそんなに嬉しいのか、その後の俺の言葉は全く耳に届いていないらしい…まぁ、こんなに喜んでもらえると悪い気はしないな〜等と考えながらリリアの紙を丁寧に洗ってやり、この世界には無いトリートメントをつけてやる。
「気持ちいいでふね〜、このトリートメント?でしたっけ?これを使ってから本当に髪が艶々になって私凄く気に入りました!」
「わかるのです!ミスティもトリートメント無しでは生きられないのです〜はふ〜」
リリアの言葉に反応したミスティが温泉にぷかぷかと浮かびながら気の抜けた声で同上する。
「確かにな〜この世界にトリートメントが無いのは意外だったけどね…リリアは出会った頃から髪の毛綺麗だったし」
「そ、そうですかね?…でも、確かに王女として髪の毛には物凄く気を使ってました…」
「王女は大変だな〜」
「最近のリリアは全く王女感は無いけどね〜マスター狂いの変態さんなのです〜」
確かに。と思った俺だったが、何とか思い留まり口にする事はなかったが、トリートメントした髪にタオルを巻いてやり、リリアをミスティの元へと解き放つ。
「ミスティちゃん…?変なこと言う子にはお仕置きが必要ですね〜?」
「ひっ…!?マ、マスター!助けてなのです!あっ、ルビー逃げるなんてずるいのですっ…あっ、リリア…や、やめ…あぁぁぁあ!!なのです〜っ!!」
ドッタンバッタンと暴れる2人から避難し、ルビーと地球とは違う星空を眺めながら、平和な時間が流れていく…
そして夜が明け、まだ薄暗い中朝食を取った4人は昨晩楽しんだ露天風呂セットをユウキの亜空間収納に丸々仕舞い込み、早々に龍穴の祠へと辿り着いていた。
「はー、温泉って最高ですね!お肌ツルツルで体調も完璧に回復しました!ローズさんのところに戻ったらまた入りましょう!」
「そんなに気にいったのね…いいよ、またみんなで温泉入ろうか」
やったー!とハイタッチするリリアとミスティを放置して、俺とルビーは龍結石を集める。
「パパ〜、これもいい感じだよ〜♪」
「おっ、偉いぞルビー!そこの2人と違ってちゃんと手伝ってて偉いな〜」
えへへ〜と俺の周りを飛び回るルビーは褒められて嬉しいのだろう。キラキラと最近一段と輝きを増した羽を羽ばたかせる。うん、可愛い。
それから1時間ほど石を集め、お願いされていた量を集め終わった俺達はさっさとローズの元へ帰ろうと森を進み始める。
すると焦った様子の物凄い数の魔物達が侵攻方向からこちらへ向かってくる。スタンピードの時のように統率が取れてるわけでもなく、ただ何か恐怖の対象から必死に逃げている。そんな様子に俺達は何処か嫌な予感を覚え、向かってくる魔物を片っ端から倒しながら森を駆ける。
そしてその時はやってきた…
ドスンッ!!と森全体を揺らす地鳴りに耐性を崩しそうになった俺達は立ち止まり、音のした方を確認し一斉に青ざめる。
…それは間違いなくローズ達の待つ、妖精族の里から聞こえていた。俺が千里眼で里の様子を伺おうとするが謎の結界に阻まれ中を窺うことができなくされていたが、結界を抜けて立ち昇る黒煙の姿を目にした俺は即座にルビーを胸ポケットに入れ、リリアとミスティを抱え込み、雷光を発動させる。
「い、一体何があったのですか?!」
「わからない!だが、ヤバイ事が起こってるのは確かだ!全力で戻るからみんな黙ってろよ!舌噛むぞ!!」
目の前に現れる魔物を前方に展開したアイギスにより跳ね飛ばし蹴散らしながら進む俺は、「頼む…無事でいてくれっ!ローズさん!!」と森をただひたすらに突き進む。
ユウキがローズの元へ辿り着くまで残り30分…
はい!突然の水着会から一気にシリアスになりました!…
本当は温泉のくだりで止めても良かったんですけど、どうしても次の話をローズ視点から始めたくてこうなりました!すみません!
次回の更新は明日の正午予定です!




