第35話 龍穴の祠
本日2話目になります!
2020/9/9 探知系のスキル持ってなかったっけ?という指摘を受けましたので、それに関する文章を付け足しました!
ちゅんちゅんと小鳥が囀り、朝日が窓から差し込む朝にいち早く起きた俺は毎日の日課である素振りを行う為にお世話になってるローズ家から外に出る。
俺たちがこの森に来て1週間程が経過していた。ここで行ってる事はリリアとミスティ、それと一緒ついて来ることになったルビーの修行に費やしていた。
「998、999、1000っと!ふーっ、これで取り敢えず1000×5セット終わり!」
この森には泉があり、そこで朝の素振り後に水浴びして汗を流すのが毎朝のルーティンになっていた俺は、いつも通り泉にやって来るとそこには先客がいた。
「あれ?ローズさんじゃないですか?どうしました?」
「おはようユウキさん…今日はなんだか嫌な予感がして早くに目が覚めてしまったのよね…」
「おはようございます、なるほど、それでローズさんも水浴びに来たんですね…」
「えぇ、お邪魔させてもらうわね?ちゃんと水着は着てきたから気にしないでちょうだい」
「はぁ?どうぞお構いなく…」
そういい俺は服を脱ぎ、履いていた水着だけになり泉に飛び込む。
「はーっ、気持ちいいな〜」
熱っていた身体が徐々に冷え、この泉に含まれて居る疲労回復効果のおかげで先程感じていた少しの疲れも残さず消えてゆく。
「そうね〜たまには朝の水浴びも気持ちの良いものね〜、ところでユウキさんって見た目の割に結構筋肉付いてるのね?」
「ちょっ!あまり見ないでください!恥ずかしいので!」
「いいじゃな〜い、減るもんでもないし?ユウキさんも私の水着姿をチラチラ見てるからおあいこよ〜」
げっ!バレてたのか!?
とても美人でスタイルの良いローズさんの水着姿は非常に目のやり場に困る…水着って下着とは違った魅力があるんだよ!と前に空が言っていたが確かにその通りだな〜と空を眺めながらぼーっと水面に浮いていると誰かがやって来る足音が聞こえて来る。
「あー!ローズさんなんで水着なんですか!!私のユウキさんを誘惑しないでくださいっ!」
「あらあら〜バレちゃったわね〜、ユウキさんも私の水着に鼻の下伸ばしてたし満更でも無いと思うわよ〜?」
ちょ!?なんてこと言ってくれるんだこの人は!と焦って止めようとしたが時既に遅く、その後リリアにこってりと絞られた俺は、泉の疲労回復効果でも回復しきれない精神ダメージを食らったのであった。
そして場所を移し、みんなで食卓を囲み朝食を取っていると、唐突にローズが話を始める。
「ところで、ユウキさん達はいつまでこの森にいるのかしら?」
「ん〜そうですね…リリアもだいぶ動けるようになってきたし…3日程で仕上げて先に進もうかなと思ってますけど…どうしたんです?急に」
「…言い難いのだけど…修行の最終試練として森の奥地…そこに龍穴の祠と呼ばれる場所があるのだけど、そこで取れる龍結石と呼ばれる石を何個か取ってきて欲しいんだけど…お願いできないかしら?」
「いいですけど…ローズさんは行けないんです?」
「いいえ、本当なら私が行って取って来るのだけど…嫌な予感がずっとしてて、この地を開けるのに抵抗があるのよ…でも結界の維持に必要不可欠な物だからどうしても欲しいのよ…」
「なるほど…事情はわかりましたが龍結石なら俺の力で生み出せますけど…それじゃダメですかね?」
「うーん、一つ出してみてもらえる?」
「わかりました!幻想の具現化発動…」
俺が能力を発動すると、机の上にコロンっと一つの純白の石が生み出された。
「やっぱりこれじゃダメね…こっちが祠にある龍結石よ…違いがわかる?」
椅子から立ち上がり棚に閉まってあった龍結石を持って戻ってきたローズさんが、俺の生み出した石の横に本物を置く。
あー、確かにこれじゃダメだな。とすぐに気づいたのは俺だけで、リリアとミスティは??と首を傾げている。
ちなみにルビーはお腹いっぱいになって眠くなったのか俺の頭の上で寝息を立てている。可愛い
「ローズさん、なんでダメなんでしょうか?私には違いがわかりません…」
「私もわからないの…」
「うふふ、わからなくても仕方ないわ、見た目では何一つ違いはないのですもの」
「え?じゃあ何が違うのですか…?私にはさっぱり…」
「リリア、この石をよく見てみて、普通に見るのではなくて目に魔力を込めて見てみるとわかりやすいかもしれない」
「?目に魔力を…?わかりました、やってみます!」
俺のアドバイスにリリアとミスティは魔力で目を強化して石を見つめる。
すると謎が解けたのか、「なるほど!確かにこれじゃダメですね!」と2人とも納得したようだ。
「そう…この龍結石は祠の付近に集まる霊力を集める性質があるのよ、そしてそれは長い年月をかけて徐々に蓄えられる。だからユウキさんの石では結界を張る為の媒介には成り得ないのよね…」
「なるほど!わかりました!私達に任せてください!お世話になった御礼も兼ねて沢山取ってきます!」
「うふふ、ありがとう!でも、祠の周りは強大な霊力の影響で魔物も強いのがうようよといるから、気をつけないとダメよ?」
「望むところなのですっ!修行の成果を見せる時!なのです!」
やるぞー!とリリアとミスティが気合を入れてる声にびっくりしたのか、頭の上で寝ていたルビーが飛び起きて俺の首に縋り付いて来た。
「お〜?びっくしたよ〜脅かさないで〜?」
「「ご、ごめんなさい…」」
ペコペコ謝る2人にぷんぷん!と怒っているルビー、その光景に俺とローズさんは目を合わせぷっ、と吹き出してしまうのであった。
その後、準備を整えて祠に向けて出発した俺たちはおよそ半日かけ祠まで残りわずかのところで野営のための準備に取り掛かっていた。
元々往復で二日ほどかかる行程であったが出てくる魔物に苦戦することもなかった為、すんなりと目的の場所付近まで来てしまったのだが、これからの練習も兼ねて野営をする事にしたのであった。
「よし、じゃあリリアとルビーで力を合わせてこの前教えた魔物避けの結界を張ってくれ、ミスティは俺と一緒にテント貼るぞ〜」
「「「は〜い」」」
3人が手を上げて返事をする光景に、幼稚園かな?と園児を相手にしてる感覚に陥った俺だったが、和気藹々と準備を始める3人を見て、楽しそうで何より!とこちらまで嬉しくなってくる。
「ユウキさーん!終わりました!次は何をしましょうか!?」
「ルビーも手伝うよ〜?」
終わった!と、こちらに近づいてきた2人の頭を偉い偉いと撫で次の指示をだす。
なんか扱いが園児だな…と思った俺だったが、嬉しそうな2人を見て、まぁいいか…と気にしない事に決める。それにルビーは3歳だし、リアル園児だし、もーまんたいだな!
「よし、こっちも終わりっと…ミスティ?何してるの?」
「不平等は良くないと思うのです!」
頭を突き出してくるミスティに、そうゆう事ね…と頭を撫で回してやる。するとご機嫌になったミスティは、「リリア達を手伝って来るのです!」と走って行ってしまった。
思わぬ形で1人になった俺は、自分の作業を進めながら、ローズの言っていた嫌な予感という言葉を思い返していた。
(嫌な予感か…杞憂であればいいけど…ローズさんは結構鋭いからな…天啓的な何かで予感を感じてる可能性はあるし、俺たちがこうして出て行ってる時に何かないといいんだけど…でもおかしいな…ローズさんが感じてる物を俺が何も感知できてない…やはりローズさんの考えすぎなのか…?)
アールの行動を感知して、アメジスティアの滅亡を未然に防ぐことができた俺が何も危険を感じていないことに逆に不安を覚え始めた俺が原因を考えていると、何処からか視線を感じた俺は「誰だ!?」とその場にナイフを投げつける。
だが、その場には何者の姿もなく、投げたナイフは木に突き刺さっていた。
嫌な考え事をしていたせいで、少々敏感になりすぎてたのか?と思い、これはダメな思考回路に陥ってる事を悟った俺は何か別のことを考えようと、元の世界で見ていた漫画の続きの展開をこうなるはずだ!と一人で思い描き、盛り上がっていたのであった。
一人でニヤニヤしながら作業しているユウキの姿を見たリリア達は、ユウキさんもお疲れのようですね…と生暖かい目でその姿を見つめるのであった。
厄災がすぐ側まで迫っている。その事実に先に気づくことができるのか…それとも大切な者を失ってから気づくのか…
運命の歯車は既に回り始めていたのであった…
徐々に不穏な気配になってきました!
本日2話目になります!
そして、本日日付が変わる頃に割り込みで幕間を投稿しますので、そちらも是非ご覧ください!
本編の更新は、火曜日の正午になります!




