第34話 一時の平和と復興
本日1話目になります!
よろしくお願いします!
ひたすら頭を撫で回したおかげでリリアの幸せメーターが天元突破した。
「むふふ〜私はユウキさんの彼女♪婚約者〜♪一生一緒にいましょうね〜♪うふふふふ…」
なんかよくわからん歌を歌ってるぐらい機嫌がいいみたいだな…笑い方がちょっと怖いけど。
「あっ、ユウキさん?私を正妻にしてくれるならモミジさんとユキさんを恋人にしてもいいですよ?」
「えっ!?いいの!?ってか、そんなことできるの?」
「えぇ、この世界では一夫多妻は当たり前ですよ?寧ろ私の父が珍しいタイプですからね…」
「あっ、そういえば陛下は1人しか娶ってないんだっけ?…でもリリアが居なくなったら世継ぎ困るんじゃ…?」
「世継ぎ…?私は女ですので、そもそも王位継承権は無に等しいですよ?それは私の弟が継承するはずですので…」
「えぇぇ!?リリアって弟いたの!?!?」
「あれ?言ってませんでした?」
余裕で初耳である。衝撃の真実に度肝を抜かれた俺は暫し思考停止する。
「ユウキさーん?大丈夫ですか?」
「はっ!!?だ、大丈夫だよ…そうか…リリアに弟が居たのか…思えば俺はリリアの事をあまり知らないんだよな…」
「これから知ってください!私もユウキさんのこともっともっと知りたいです!」
「リリア…」「ユウキさん…」
俺たちは見つめ合い、徐々にお互いの顔を近づけリリアが目を瞑ったその時…
「あっーー!!リリア何してるですっ!!許さないのです!!」
突如として静かな森に響き渡ったミスティの声に「ひゃあ!?」と飛び跳ねたリリアは、違います!!なんでもないのです!!と慌てすぎてミスティみたいな口調になってしまっていた。
俺は、はぁ〜と一つため息を吐き、初キスはお預けだな…とドキドキしていた心を落ち着かせる為に素数を数えるのであった。
それから数日間は森でリリアとルビーの修行を手伝ったり、妖精たちと仲良くなる為に手料理を振る舞ったりと穏やかな日々が続いていた。
まさか平和な日常を脅かす存在がすぐ側まで迫ってることを知らずに…
一方その頃…
アメジスティア王国に居る紅葉達は魔法をメインで使う者と武器をメインで使う者に別れ、それぞれ次の闘いは役に立つ!という想いで必死に訓練していた。
「ふっ!!はぁ!…はぁ、はぁ…どうですかね?アウリム団長」
「ふぅ…最初に比べて随分と剣の扱いに慣れてきたな…流石勇者だけあって成長が早い!俺もすぐに追い抜かれるかもな!はっはっは!」
アウリムと模擬戦をしていた空は、良く言うぜ…全く勝てるビジョンが見えなかったわ!とまだまだ騎士団長の壁は遥か彼方だな…と実感させられていた。
前まではわからなかった事が段々とわかるようになってきた空は、改めてアウリムの技量に感嘆する。そして、アウリムですら勝てないと思わせた魔神はどれ程の強さなのか…と身震いする。
こんな時あいつがいればなんてアドバイスしてくれただろうか…と、ついついユウキの事を考えては、無事だろうか?飯食ってんのかなー?などと親友の身を案じて何かできないだろうか?と考える空の性格の良さが窺える。
「ふっ…またユウキ殿のことでも考えてるのか?ソラ」
「はい…あいつちゃんと飯食ってんのか心配で…昔聞いた話なんですけど、あいつ、1ヶ月冬の山に放置された時に3日に一度しか食事にありつけなかったんだよね〜とか軽く言ってくる奴なので心配して…」
「…ユウキ殿って一体何者なんだろうな…」
「さぁ?俺もまだあいつの事は謎ばかりなんで…だから一緒にいると飽きないんですよね…」
「確かにそんな友が居れば毎日楽しいだろうな…だがソラよ…今は自分の身を心配しろ、お前はもっと強くなってもらわないと困るからな!」
それだけ言い、がっはっは!と笑いながら他の生徒にアドバイスに行くアウリムを見送り、俺はもっと強くなって、次の闘いで必ずこの手で魔神を倒して見せる!と心に決めるのであった。
時を同じくして紅葉はというと、魔法特化のクラスメイトと共に、この国の宰相であるエルの元で魔法の特訓をしていた。
今やってる特訓は限界まで魔力を使い続けるという作業をひたすら繰り返している。
その結果、至る所で魔力切れを起こして地面に寝そべってるクラスメイト達に気力回復魔法をかけて回ると、こちらに気づいたクラスメイト達が「サンキュー!」とか、「ありがとう!」とお礼を言ってくれる。
「…あっ、も、紅葉ちゃ、ん…その…あ、ありがとうございましゅっ!」
「ふふ…元気になってなによりだよ双葉ちゃん! 魔法の方はどう?上達してきた?」
「えっと…その…け、結界魔法は使い手がいなくて…手探りだから…」
「そっか…なら私も手伝うよ!一緒に頑張ろう?」
「い、いいの?え、えへへ、紅葉ちゃんと一緒なら百人力だよ…」
私が話しかけた女の子は薔薇園双葉…一華の双子の妹で姉とは性格が真逆でちょっと大人しすぎるのが、少々心配な子だ。
基本的に姉の側を離れないので、クラスにあまり馴染めていない為、このように二手に別れた訓練は1人になってしまうので、私や雪先生が基本的に一緒にいる事が多い。
「そ、その…紅葉ちゃんは自分の魔法の特訓は大丈夫なの…?」
「私?私は回復魔法がメインだからね〜、双葉ちゃんが疲れちゃった時とかに魔法をかけるのが訓練みたいなものだから気にしなくて平気だよ!」
「そ、そっか…な、なら、双葉が、頑張って疲れるねっ…」
「いやいや、そんな無理する事はないよ?!焦らずゆっくりやってこう!」
今でこそ普通に会話になるが、この世界に来て最初の頃は酷かった…人見知りを拗らせすぎて、私が話しかけたら気絶してたし…ここまで来るのに膨大な時間がかかった分、今の会話で少し感動してる自分がいる。
「あう…紅葉ちゃん…に聞きたいことがあって…」
「ん?どうしたの?魔法の事?」
「ち、違くて…えっと…さ、西音寺くんのこと…」
「えっ!?ユウキくんのこと?どうしたの急に…」
「そ、その…ひ、1人で大丈夫なのかなって…紅葉ちゃん仲良かったから…心配じゃないのかなって…」
「そんなのもちろん心配だよ?でも、ユウキくんってあぁ見えて意外と強いからね〜きっとなんとかなってると思うよ?」
「そ、そうだね…確かに優しくて強かった…」
「ん?何?最後の方ちょっと聞き取れなかった!」
「う、ううん、なんでもないよ…気にしないで…魔法の練習する、ね…」
そういうと先程までおどおどしていた少女とは思えない程集中して魔法の練習に取り組み始める双葉に、「私も負けてられないな〜見ててねユウキくん!私頑張るから!」と遠く離れた地にいるユウキに想いを馳せるのであった。
その頃、雪は国王と共に城下町の再建を目指し復興作業に精を出していた。
「ユキ殿、今度はこちらもお願いできますかな?」
「了解です、氷の床」
雪が発動した魔法により凍らされた地面の上を資材を乗せたソリが滑って行く。
この様にして雪は復興の手助けを行っているのだが、先生だけあって生徒達よりも魔法を使うのに適応するのが早かった。
「いやはや…ユキ殿には足を向けて眠れそうにないですな。こうして順調に復興が進んでるのはユキ殿と、そしてユウキ殿の贈り物のおかげですな」
「いえ、私の力の使い方を復興に役立てられると言ったのは他でもない、ゆうちゃんでしたから…全てゆうちゃんのおかげといっても過言ではないですね」
「ユキ殿…彼は何者なのですかな?ユキ殿への的確な助言やそしてこの魔導具…国宝級の物を次々と渡された時は度肝を抜かれましたぞ…」
ユウキがエギルに渡した復興用の魔導具は、頭のおかしい代物ばかりであった。
まず、土砂を入れると勝手にレンガに変換してくれる装置や木材を均等に切り分ける装置。これだけでも復興が何倍ものスピードで行われているのに他にも色々と置いて行った。
「この腕輪も凄いですな…各地に散りばめた騎士達から念話が繋がるようにする腕輪と聞いた時は椅子からひっくり返ってしまったからな…」
エギルのつけている腕輪は、騎士達に身に付けさせているシルバーリングが子機となり、親であるエギルの腕輪とリンクし念話ができるようになる。そういう仕組みの魔導具であった。騎士達もお伽話の魔法に直に触れ、興奮のあまり寝付けなかったのは余談である。
「ゆうちゃんはこの国を救った英雄ですから…常識に囚われたらダメなんですよきっと…」
「そうだな…彼がいなければこの国は今頃地図から無くなっていた…いや、この国だけではなく隣国も消えていただろう…いくら感謝しても仕切れない…」
「陛下…その感謝を早くこの国を復興させることに費やして、ゆうちゃんが帰ってきた時に自慢できるような国を復興させましょう!」
「……そうですな、さぁユキ殿!次はこちらですぞ!」
そう言い、2人は完全なるアメジスティアの再建に向け、より一層力を入れるのであった。
次の更新は本日の夕方になります。
ストーリーが進行する話と、幕間を割り込みで第二章の始まりに投稿します。
見逃さないようにご注意ください!




