第33話 決意を胸に
前書きって書く事ないですよね…
今日もお読み頂きありがとうございます!
あれ?俺ってクズなのかもしれない…?リリアの告白も返事はゴタゴタが片付いた後で!とかカッコつけといて結局有耶無耶のまま旅に出てるし…しかも紅葉と雪姉のことも聞かなかったことにしてスルーしてるし、キープを作るだけ作ってるクズ男やんけ…
はっきりとクズだと自覚したユウキが頭を抱え「うぉぉぉお…俺はクズだっ…クズなんだぁぁあ!!」と呻いていると、え?何あいつやばくね?と言った視線がリリア達から突き刺さる。
「あ、あの〜ユウキさ〜ん…?どうしました…?」
「マスターがついに壊れたのです!ぶっ叩くのです!!」
「お〜?パパはクズじゃないよ〜?」
「うふふ〜ユウキさんはクズかもしれないわね〜?ニヤニヤ」
ミスティとローズさんの言葉が心にダメージを与えてくる…特にミスティ!俺はブラウン管テレビじゃないんだぞ!?昭和じゃなく平成生まれの薄型や!叩いても治らんわ!!
しかもローズさんは俺がなんで嘆いてるかわかってるし…これも看破の力なのか!?(絶対違う)
「気にしないでください…ちょっと風に当たって来ます…」
そう言い残し俺は席を外す。
ユウキが出て行った後、残されたもの達で男子禁制の恋愛トークに花を咲かせていた。
「ユウキさんはどうしたのでしょうか?」
「まぁまぁ、リリアちゃん気にしないで大丈夫よ?それよりもユウキさんは非常にモテそうだけど…実際どうなのかしら…?」
「むっ!?もしかしてローズママまでマスターの事狙ってるのです!?」
「い、いやいやそういう訳じゃなくてね?娘の好きになった人がどういう人なのか知りたいな〜って思っただけよ?」
「むぅ?それならいいのです!」
「あ、あはは…ユウキさんは元の世界でも知る人ぞ知るイケメン!って感じだったみたいですね…」
「へぇ〜?それは誰に聞いたのかしら?」
「えっと、モミジさんという方でして…ユウキさんのお友達…ですかね…?」
「その反応はもしかして…そのモミジさんという方はユウキさんの事を…?」
「はい…好きみたいです…というよりも私の目の前で大好き!と宣言されてました…」
「あぁ!それなら私も聞いたのです!とっても想いのこもった告白だったのです!聞いてるこっちが照れちゃうのです…」
「…?待ってミスティちゃん…もしかしてあの場にいたの…?」
「…?はいなのです!マスターと一緒に隠れてたのです!」
「では…ユウキさんも聞いてたって事ですよね…?」
その瞬間、リリアの雰囲気が変わりゴゴゴゴゴッ!!と負のオーラが立ち昇る。
「リ、リリアさん…ど、どうしたのです…?」
「マ、ママ〜リリアが怖いよ〜?びくびく」
「リ、リリアちゃん落ち着きなさい?ルビーこっちにいらっしゃい…」
「…ちょっとユウキさんとお話ししてきますね…」
「「「い、いってらっしゃい…」」」
ドスンドスンとリリアが歩くのに合わせミシミシと家の軋む音が聞こえる。バタンッと勢いよく閉まった玄関を見つめていた3人は、ユウキに頑張れ!とエールを送るのであった。
その頃のユウキはというと…
何故俺はこんなにダメ人間なんだろうか…リリアからの告白を後回しにして…しかも今の今まで忘れてるって…最低すぎるでしょ…
はぁ…と自分のクズ差に打ちひしがれていた。
俺はリリアを好きなのは間違い無い…だけど、紅葉や雪姉の事も…好きなんだろうな…俺ってこんなにチャラ男じゃ無かったはずなのに…俺はどうすればいいんだ…
とうじうじしているところに「ユ・ウ・キ・さーん…?(ニッコリ)」と、とても良い笑顔(?)でリリアが近づいてきた。
「ッッ!?なんだリリアか…凄い恐ろしい気配に感じたから一瞬誰かわからなかったよ…」
「ええ、私ですよ?それでユウキさん?先程ミスティちゃんから聞いたんですけど、あの場にいたんですね?」
「…?あの場って…?どの場?」
「あの場はあの場です、あの晩のバルコニーの話です…ここまで言えば私の言いたいことはわかるんじゃないですかね?」
リリアの言葉に内心、飛び上がる程驚いた俺は、なんとか作り笑いで誤魔化そうと必死に表情を取り繕う。
「あ、あはは〜なんの事かな〜?」
「誤魔化し方下手すぎません…?」
「ほっとけ!!…はぁ、そうだよ…俺は紅葉と雪姉が俺の事を好きだと言ってくれたあの場に居たんだ…」
「それでユウキさんはあの2人のことをどう思っているのですか?」
「……正直言うと俺も好きなんだと思う…直接言われた訳じゃないし、思わぬ形で2人の思いを知ることになったけど…それでも凄い嬉しかった」
俺はリリアが何かを言う前に言葉を続ける。
「俺はさ…元の世界で天涯孤独だったんだよね…」
「天涯孤独…ユウキさんにご家族は…?」
「一応両親と祖父が居たけど、両親は交通事故で2人とも一気にお陀仏…残された俺は祖父の家に引き取られたけど、その祖父も数年前に死んじゃったよ…」
「そんなことがあったのですね…その…ごめんなさい…」
「え?なんでリリアが謝るの?」
「いえ、だってその…話辛い事聞いてしまったと思いまして…」
「やだな〜俺が勝手に話し始めたんだからリリアは気にする必要無いって…それで話を続けるけど、俺の流派は祖父に習ったものなんだ」
「あっ、あの西音寺流っていうのをですか?」
「そうそれ!祖父は古今東西全ての武術をマスターして、それを組み合わせて一つの集大成と呼べる流派を作ったんだ…それが…」
「西音寺流…凄いお爺様だったのですね…」
「でしょ?俺にとっては両親よりも祖父と一緒にいる時間の方が長かったから、死んだ時は結構ショックだったよ…」
じいちゃんに会いたいな…と空を眺めながら涙ぐむ俺をリリアが後ろからそっと抱きしめてくる。
「ちょっ!リリアさん!?いきなり何を!?」
「すみません…あまりにもユウキさんが悲痛そうなお顔をされてましたので…咄嗟に抱きしめてしまいました…」
「そっか…それはごめんね、その…このまま聞いてくれるかな…?」
「はい…もちろん!ユウキさんの匂い…ぐへへ…」
こんな時でもシリアスになれないリリアさん…王女なのに残念すぎる…自分の欲望に忠実すぎるのもどうかと思う。
「そ、それで祖父から全ての武術を習って免許皆伝になったのは中学の終わり頃…丁度一年くらい前だったかな…?そこで祖父も他界して、俺は1人になったんだ…」
「1人…ユウキさんは私と同い年ですよね…?ユウキさんの話を聞いてると私がどれだけ恵まれて生きてきたのか…恥ずかしくなってきます…」
「そうかな?俺はリリアの生き方はそれはそれで大変だと思うけど…」
「そう…ですかね…?」
「そうだよ!だって俺は絶対にリリアの立場だったら逃げ出してたと思うよ?俺はね、全より個を重んじるタイプだから…」
「個…ですか?」
「うん、リリアは全…即ち王女としてアメジスティア王国に住む全ての人々を救おうとしてたでしょ?でも、俺はあそこに紅葉や雪姉や空、それにリリアが居なければきっとあの晩に王城に忍び込むことは無かった」
「そ、そんな事はっ!」
「無いとは言い切れないだろ?俺にとってあの場にいた人は赤の他人だからね…ぶっちゃけ誰が死のうが、俺の周りの人たちが生きてればそれでいい…リリアに出会うまではそう思ってたし、向こうの世界では、実際にそう行動していたからね」
「私に出会うまでは…?」
「そう、リリア…君に出会って俺の考えも変わったんだよね。初めて会った時、俺は君にとても酷いことを言った。あの時の事は今でも後悔してるし、最低だったと思う。でも、君は俺を見捨てようとしなかった…君の目を見た時に思ったんだ…」
「俺も…君みたいに生きたいって…そう思えたんだ」
「ユウキさん…」
俺は確かに昔は自分に関係のないことは見て見ぬ振りをしていた。だけどリリアと出会って、それじゃダメなんだって気付かされた。だから、そんなリリアに俺は…
「リリア…俺は紅葉や雪姉の事が大切で、きっと好きなんだと思う…」
「…はいっ…ぐすっ…だ、大丈夫です…私の事は気にしないでくださいっ…ぐすん」
俺に振られると思ってるのか、ばっ!と身体を離し顔を伏せ泣き始めてしまったリリアを今度は俺が正面から抱きしめる。
「リリア…勘違いしてると思うけど、俺は君の事が好きだよ?もちろんこの間の告白の答えはOKだ…だけど、紅葉や雪姉を放っておくことができないんだ…」
「よ、よかったっ…わ、私…ふ、振られると思って…ひぐっ…何も…言っでぐれないから…うぅ…よがったよぉぉ…」
安心したのか、完璧に泣き始めてしまったリリアを強く抱きしめて頭を撫でて落ち着かせる。
次第に落ち着いて来たのか、胸元に顔を埋めて泣いていたリリアだったが、顔をスリスリと擦り付けてくる。そのまま頭をポンポンと叩き声をかける。
「リリア?…落ち着いたかい?」
「ふぁい…でももう少しこのままで居させてください…それでもっと撫でてください…」
俺は、はいはい…と苦笑いしつつリリアが満足するまでひたすら撫で続けるのであった。
この甘い時間が永遠に続けばいいのに…そう思った俺は、この子を守るためにもっと強くならないとな…と新たにできた護りたいものの為に更なる高みを目指す事を決意するのであった。
はい!ようやくリリアとユウキがくっつきました!
まぁ、返事を返して無いだけで周りから見たら普通にカップルだったんですけど、それでも一応メリハリは付けるべきですよね!
って事で次回は、リリアとの会話の続きからになります!
次回の更新は明日の正午になりますが、日曜なので2、3話更新したいと思います〜




