第28話 エピローグ
本日から2話目になります。
2020/9/13 16時頃に誤字修正しました!
報告してくれた方感謝です〜!
澄み渡る空が人々の悲しみを吹き飛ばし、復旧作業に精を出す中、ユウキとミスティは宿に戻り一眠りして、アメジスティア城の跡地に出向き、エギル達と向かい合っていた。
「やぁ、陛下…いい天気だね」
「これはラピス殿よく来てくれた…昨夜はこの国窮地を救って頂き感謝する」
「うーん、本当に救えたのかな…?」
「何を言う!こうして皆生きて朝日を拝めたのは他でもない、ラピス殿のおかげだ!…確かにこの国の状況には目を覆いたい気持ちもあるが…命あっての物種、直ぐに元の美しいアメジスティアに戻して見せますぞ!」
一瞬悲しそうに遠くを見つめたのはきっと、あの人物の事も思い描いていたのであろう。
国王たるもの!とめんどくさい感じになったエギルを放っておいて、俺はリリアの元に向かう。
「リリア!ちょっといい?」
「ユ…ラピス様!今行きます!」
俺が呼ぶとユウキさま!と呼びそうになりつつぱぁっと顔を綻ばせ、小走りに近づいて来たリリアは、尻尾が生えてればブンブン振られていたであろう。それ程までに嬉しそうな様子を見て、俺も顔が綻ぶのを感じる。
「今から陛下にリリアを連れて行く話をするから一緒に来てくれないかな?」
「もちろんです!でも良いのでしょうか…アメジスティアがこのような状況にあるのに、私だけラピスさんと旅に出てしまって…」
「僕に任せておいて!考えがあるから!…それに今更リリアを置いてくって選択肢は僕の中にないよ?」
逃さないからな?と俺が言うと、頬を桃色に染めながら「もしやこれはプロポーズですか!?」とくねくねしてる残念王女を引き連れ、エギルの元に戻る。
「おや?ラピス殿何処に行っておられた?むむ、リリアも一緒か…」
「陛下、この城の跡地から全員退避させてもらえないかい?」
「ここからですかな?瓦礫の除去でもして頂けるのか?もちろん退避させますとも」
俺の言う事を無条件で聞くエギルの号令により、その場で瓦礫の除去作業に勤しんでいた騎士達が徐々に掃けて行く。
「うむ、ラピス殿全員退避したようだ…して、何をなされるおつもりか?」
「まぁ、見てからのお楽しみで!」
錬成…俺がそう呟き城跡にある瓦礫を一つの塊に作り上げる。それを城下町の方にゆっくり移動させ、どすんっ!と地面に下ろす。
そして、アメジスティア城があった中心点まで歩いて行き、俺が異空間収納から取り出した物を見て、リリアやエギルが「それは!?」と目を丸くする。
何を隠そう、俺がたった今取り出した物は昨晩王城へ侵入する為の隠し通路を探す為に創り上げたアメジスティア城の模型であった。
ユウキの能力であるイマジンリアリゼーションは精密な内部構造だけでなく、使われた素材や中にもともと備わっていた物も全て再現されていた。
俺はそれを思い出し、これをそのまま使っちゃうか!と思い至ったのだ。
「我願う、美しき白亜の城よ!ここに真の姿を解放し、顕現せよ!」
ユウキの能力により創り上げられたアメジスティア城は聖なる力を宿し、聖域となって邪なる物を寄せ付けない結界をこの国に張ることのできる力を手にしていた。
「こ、これは!?ラピス殿!?これはアメジスティア城ではないか!」
「うん、そうだよ〜?偽物だけど内部構造とか全て前のと一緒だから違いはわからないと思うけどね〜」
突如として現れた白亜の城に国中の人々が驚き、していた作業を中断し、どんどん集まってくる。
「こ、これは頂けるのか…?」
「当たり前でしょ…上げないのにここに顕現させてたら、僕はどんだけ性格の悪い奴なんだよ…」
俺の言葉にエギルを含め、アメジスティア城に勤務していた者達から歓声があがる。
「それに、そこに山になってる素材を城下町の復旧に役立ててね?後はこの種を上げる」
「??これはなんだ…見たことのない植物の種だが…エルよ、これが何かわかるか?」
「うーむ、陛下…このような種は見たことも聞いたこともありませんな…ラピス殿、これはもしかしてオリジナルの種ではないですか?」
「そうだね!宰相の言った通り、これは僕がさっき適当に作ってきた種だよ!」
その言葉に、ざわざわと人々が何を言ってんだこいつ?種を作る?なんの話だ?と騒ぎ出す。
「まぁ、見てて。これを地面に埋めて水を撒くと…」
俺が水を与えた瞬間、直ぐに芽を出した種は数秒で大樹へと成長した。
その光景に「えええぇぇぇぇ!?!?」と目が飛び出るんじゃないかと心配になるくらい驚いた人々に苦笑いしつつ説明を続ける。
「今見てもらった通り、この種は直ぐに成長するからね?間違っても種の上に立ったら駄目だよ?体を突き抜けて木が生えちゃうからね!」
ちょっと脅しをかけつつ、次の種の説明を始める。
「んで、こっちの種なんだけど…」
また同じように種を埋め水を撒く、すると今度は一瞬で作物が実る。
「これは一瞬で作物が育つ種だよ!何種類も作っといたから、バリエーションは豊富だと思うけど、2.3回で畑の養分を吸い尽くしちゃうから、その度に違う畑用意してね?」
もはや驚きすぎて固まってしまったエギル達はコクコクと頷きを返すだけで、壊れた人形のようになってしまった。
それよりも…とユウキがエギルとエル、それにアウリムを城の中にある応接室に連れて行く。
「…何故ラピス殿がこの城の内部を熟知しておられるのだ…?」
「まぁまぁ、今から話すから気にしないで?それと君たちは呼んでないんだけど…」
ユウキ達の後をつけるように追いかけてきたのは、紅葉と雪であった。
「いえ、私たちも話に参加させてもらいます!」
えぇ…とげんなりしながらも、まぁいいや…とすぐに諦め、応接間に通した俺の側を通る際に2人がニヤリと口元を歪めているのを見てしまった俺は、やらかしたか?と後悔した。
「…全員席に着いたね。んじゃ、ちょっと結界貼らせてもらうね〜」
俺は直ぐに防音結界を貼り誰にも聞かれないように警戒する。
「んじゃまずは…昨日何が起こったのか…それから説明していくね」
俺が説明を始めると皆一様に静かに耳を傾けていた。核心に触れる部分では、口惜しげに手を握りしめ肩を震わせていた。
そして、一通り説明を終え、エギル達の質問に答えた後で俺は本題を口にする。
「それで褒美の件なんだけど…」
「おぉ!そうであったな…して、ラピス殿は何を望む?アメジスティアの国王の座、とかだろうか?」
「いやいやいやいや、そんなの要らないから…僕が欲しいのは国王の座じゃなくて、国王の娘だよ!」
その瞬間、空気が凍りついた。
あ、あれ?おかしい…紅葉と雪姉から殺気が…!?と、謎のプレッシャーを感じつつエギルの反応を待つ。
「リ、リリアが欲しいと申されるか…その…ラピス殿は女性であろう…?流石に女性の元へ嫁がせるわけには…」
「ちょっと待って!皆誤解してるかもしれないけど僕は男だからね?」
え?と固まる王国の重鎮達
仮面をつけてるが見えている口元だけでも美少女だと疑っていなかった三人は、マジか…とマジマジとユウキの顔を見る。
「いや、そんなじろじろ見ないでよ…男に見られても嬉しく無いんだけど…」
「だ、だが!私には女性にしか見えない…声も女性としか思えないのだが…」
「あっ、なるほど…この仮面には声帯を変化させるスキルを付与してあるんだよ」
「そうであったか…男であることは承知した。だが私の国を救ってくれた者とはいえ、素性のわからない者に娘をはいそうですか、と渡すわけには行かぬ…その仮面を取って素顔を見せてもらえぬか…?」
まぁ、やっぱそうなるよな…
(マスター?どうするのです?)
(どうしようかな…確かに陛下の気持ちはわかるからな〜)
(私はこの人達ならマスターの秘密を守ってくれると思うのです!)
(うーん…まぁミスティの勘はよく当たるからなぁ…信じてみるか…)
「陛下、これだけは約束して欲しいんだけど、僕の正体を言いふらさない、この仮面をつけてる時はラピスとして扱う。これが約束できる?」
「そのようなことであるなら、この国を救った英雄の願いを反故する事など絶対に無い!この国の王である誇りを持って、ラピス殿の秘密は護ると誓おう!エルとアウリム…それにユキ殿とモミジ殿もよいな?」
4人が頷き、全員の視線が俺に集中する。
「はぁ…」と息を吐き、カチャリと仮面を外した俺は改めてエギルに挨拶をする。
「お久しぶりです陛下…」
「ま、まさか!?お主はユウキ殿!?」
「えぇ、そうですよ?驚いて頂けたようで恐縮です」
まさか!信じられない物を見たと言った様子の3人を放置し、俺は紅葉と雪姉に声をかける。
「2人も久しぶりだね…元気だった?」
「えぇ…ゆうちゃんも元気そうね?それより言うことがあるんじゃないかしら?」
「ユウキくん…久しぶり…で、言うことあるんじゃない??」
「え…?2人とも何!?ちょっ!そんな詰めてこないで!?怖いんだけど!!」
閑話休題…
紅葉と雪の怒りを必死に宥めることに成功した俺は、エギル達に向き直る。
「…それで陛下…リリア連れてっていいかな…?」
「…まぁ、ユウキ殿なら素性もしっかりしてるし良いのだが…本当に良いのか…?」
エギルの2回目の良いのか?は後ろに佇む2人のことであろう。
紅葉は頬をぷくーっと膨らませハムスターみたいになって、不満たらたらといった様子。
雪姉に関しては、リリアにどこで知り合ったのか?どこまでやったのか?とか詰問していた。
そんな2人の姿をチラッと一瞥し、冷や汗をかきながらも大丈夫だ!と言い切った俺にエルとアウリムから同情の眼差しが注がれる。
「ふ、お二方がいいと言うのであればリリアを同行させよう…それで良いかな?」
「あ、あぁ…問題ないです…リリアを案内役として連れて行きます」
「そうか…ユウキ殿、リリアを頼む!して、出発はいつになるのだ?」
「それなんだけど挨拶したい人達もいるし明日の朝一になると思う」
「あいわかった、ではそれまでにこちらもリリアと別れを惜しむとしよう。また明日ここまで迎えにきてもらえるか?」
「了解です。それじゃ俺は逃げ…じゃなくてやることあるので失礼するね〜」
仮面をつけ、その場から消えたユウキに紅葉と雪は、逃げやがった!!とプンスカしていたが、とりあえずリリアに尋問しようと2人で担ぎ上げ、2人にあてがわれている部屋に連行するのであった。
その場に残された3人は椅子に掛け直し、先程ユウキから聞いた内容についての会議を開始したのであった。
「マスターよかったのです?」
「ん?何が?」
「あの2人を放置して!なのです!」
あー、と現実逃避する様に遠くを見つめる俺はミスティに抱きつかれて現実に引き戻される。
「明日出発する前にきちんと話をした方が良いのです!じゃないとヤンデレになるのです…」
最後の方を聞き取れなかったユウキは、首を傾げながらも、「そうだな…」と話をしてから出発することを誓うのであった。
そして次の日の朝
アメジスティア城に赴き、紅葉と雪とそれぞれ話をし、リリアを迎え城を出る。
行って参りますー!と振り返りながら大きく手を振るリリアを引き連れ、一度仮面を外すために物陰に隠れた後、元々門のあった場所まで来るとリーファやベオトロなど、この国で知り合った人達がユウキのことを待っていた。
「ユウキお兄さん…うぅん…お兄ちゃん…またリーファに会いにきてくれる…?」
泣きながら抱きつき、上目遣いでユウキを見つめるリーファに「もちろん!戻ってきた時は必ずここに泊まるよ!」と頭を撫でる。
満足したのか、俺から離れたリーファの次にベオトロと握手を交わし、俺を冒険者にしてくれたリーファの姉であるリーシャとも別れの挨拶をし、後ろ髪を惹かれつつ次の目的地に向けて出発する。
「ユウキさん?最初はどこに向かうのでしょうか?エルフの国?それとも獣人族の国ですか?」
「いや、まずはゴブリンの森に行くよ」
?と首を傾げるリリア
「リリアは弱弱なので、まずはゴブリンの森でリリアを鍛えるのです!」
俺の代わりに言葉を濁す事なく言い切ったミスティに、ガーン!!と効果音が聞こえそうな程ショックを受けたリリアは、「私…弱弱…魔法学院で首席なのに弱弱…」といじけるのであった。
そんな一幕を挟みつつ、共に歩みを進めるユウキ達一行。
「2人とも早く来ないと置いてくぞー?」
「「待ってください!(なのです!)」」
慌てて近寄ってくる2人を待つために立ち止まり空を見上げる。
雲一つない青空はユウキ達の旅立ちを祝福するように澄み渡っている。
…次はどんな出会いがあるだろうか?とこれからの冒険の日々に心を躍らせるのであった。
第一章はこれにて閉幕となります…
拙い文章ですが、最後まで読んで頂きありがとうございます!
今後は文章力も上げていけたらいいな〜と思いつつ
来週からは2章に突入します!
そして、第一章の終わりと共にタイトルを変更します!
混乱される方もいらっしゃると思いますが、これからもお読み頂けると嬉しいでふ!
今日中に登場人物の紹介を挟み、火曜日から新しい章に突入します!
では、次の章でお会いしましょう!




