第212話 新たな四天王
双葉とのデートから明くる日、俺たちはガノン邸の一室に集められていた。
「では、皆さん準備はよろしいですか?」
ガノン殿が最終確認をする様に俺たちを見渡す。
「俺たちはいつでも大丈夫です。それよりも2週間近く世話になってしまって申し訳なかったですね…」
「いやいや、元はと言えば我々魔族のめんどくさい掟に巻き込んでしまっているのは此方の方なので…それに問題も有りましたし…次の街では何事も無いと良いのですが…」
「それについては問題ないですよ。知り合いの女神からイブに言い聞かせてもらったので」
「………ユウキ様の交友関係が怖いですね」
俺の言葉でこの場に集まる仲間達以外の人達が押し黙ってしまった。
仲間達も苦笑いしてるし、やはり気軽に神々と交信できる俺は異常らしい。
だがしかし、みんな忘れてるのかもしれないが目の前にいる俺も神の一柱なんだけど……
きっと昨晩の情け無い俺の姿を見たせいで忘れてしまっているのだろう。そうに違いない。
「こ、こほんっ!それではダミル、ユウキ様達の護衛は任せましたよ」
「おう!任された!!と言いたいところだが、本当に俺は必要なのか?」
「………」×全員
もちろん護衛という概念であるならば、悪いがダミル殿は必要ないだろう。
ただ、これから向かう街の案内を気軽にしてもらえる存在としては、非常に必要な人材だ。
それに人当たりも良く面倒見も良いダミル殿は、意外とうちのメンバーからも評判がよく、ちみっ子達も懐いていた。
し、嫉妬なんてしてないんだからねっ!!
………それは置いておいて、ダミル殿がいるかいらないかで言えば答えはついて来て欲しい。という方へと傾くのだ。
「ダミル殿が居てくれると心強いですよ」
「そうなのです!ダミルは面白いから好きなのですよ!」
「お、おぉ!そうかそうか!そう言ってもらえると嬉しいもんだな!ガハハッ!」
少し褒めると調子に乗るのが玉に瑕だが…まぁ、そんなところも含めてダミル殿の良いところだからな。
「それでは皆さん別れの挨拶も済んだようなので、これよりコウガへと転移させます」
「よろしくお願いします!ガノンさんお世話になりました!」
「リリア様…こちらこそアメジスティア王家と関わりを持てたこと、光栄に思います」
各々、数日間世話になったガノン殿へとお礼を告げ、いよいよ転移の時がやってくる。
「皆様、次にお会いするのは魔王城になると思いますが、何事もなく再開できることを心から願っております。魔法陣起動ッ!」
ガノン殿から注ぎ込まれた魔力が部屋に設置されていた大きな姿見。その縁に刻まれた魔法文字に徐々に魔力が送り込まれていく。
「では、またお会いしましょう」
魔力が満たされた姿見へとダミル殿を筆頭に足を踏み入れる。
俺が設置するゲートのようなものか…?
もちろん細部の作りは違っているが、読み解いた魔法文字の羅列を見ると、8割ほど俺の魔法と同じ分列になっていたなぁ…
後で同じものを作ってみるか?なんて事を考えながら最後に姿見へと足を踏み入れた。
そして、その先で待っていた人物がきっとこの街の領主であり、四天王の1人…
「やぁやぁ!君らが英雄一行かいな?ものすっごいオーラ漂ってるやないの!かーっ!ダンジョンでの闘いはうちも見させて貰うてたけど、生で見ると想像してた百万倍は強そうやなぁっ!」
……めっちゃ癖の強い人やないの!!
やべっ、釣られてエセ関西人みたいになってしまった!
じゃなくてこの人が四天王……なのか?
「どないしたん?そんなフリーズして…あっ!そいえば自己紹介がまだやったな!うちの名前はミュウラ!この貿易都市コウガの領主にして四天王の一人や!気軽にミッちゃんって呼んでな?」
「おーーっ!ミッちゃんよろしくー♪」
「ミッちゃんよろしくなのです!」
俺が反応に困っていると怖いもの知らずのルビーとミスティが代わりに返事をしてくれた。
「おー!ロリロリの子達はノリがええなぁ!」
「おっと、すみません…俺の名前はユウキです」
「リリアです!よろしくお願いします!」
「ローズよ。娘が失礼したわね」
「ふ、双葉です。ミッちゃんさんよろしくお願いします」
「ミッちゃんさんって…一華よ!よろしくお願いするわ!」
「フェイトです。ユウキ様のメイドをしております。それでこの子達が…」
「シロナです!」
「も、モモですっ」
「ひまりです!訛り可愛いですね!」
「リルと申します!」
「おぉっ!みなはんよろしゅうな!くーーっ!美少女ばっかでユウキはん羨ましいやないの!」
「何言ってるんですか?ミュウラさんも美少女だと思うけど…?」
「………」
………何故かシーンとなってしまった。
「……きゅ、急に褒めんでくれんか?照れてまうやん…」
あれ?さっきまでのハイテンションは何処へ?……褒められ慣れてないタイプかな?
急にもじもじし始めたミュウラさんに首を傾げていると…
「……あなた?何ナチュラルに初対面の女の子を口説いてるのかしら……?」
ハッ!?は、背後から殺気がッ!!
い、いや……背後だけじゃない……さ、左右からも……
俺は油を刺してないロボットのように首だけで後ろを振り返ると、そこには可視化出来る程の濃密な殺気を、身に纏う嫁達の姿が……
身体中から嫌な汗が吹き出し、緊張からか手が震える。
「………言い訳があるなら聞いてあげるわよ?」
「ス、スミマセーーッン!!」
俺は初対面の女の子の目の前で嫁達にジャンピング土下座を披露するのであった。
怒られて暫く経った後に気付いたが、別に口説いたわけじゃないのになんで俺は土下座をしなきゃならなかったんだ?
とりあえず謝れ精神は良くないなと思いました。
次の更新は、明日か明後日の0時頃になります!
関西弁っぽい喋り方にしたけど、本物の関西弁は聞いたこと無いので勘弁してください……ぽいなので!エセなので!




