第211話 眠り姫
本日2話目です!
俺がダンジョンから帰還してから3日が経った。
あの日、俺達に事の顛末を話した後、ガノン殿は次の街…四天王が統治する魔族領随一の貿易都市コウガについて色々と教えてくれた。
ん?ダンジョンの話がどうなったかって?
それは俺の思っていた通り、外部から何者かがダンジョンのシステムを弄ったと言っていたよ。
その何者かについては現在調査中と言っていたので、犯人の名前を教えてやると震えていたっけ
「ま、まさか創造神様がそのようなお戯れを……」
信じられません。というガノン殿には申し訳ないがマリアさんと連絡を取り裏は取ってある。
神界に来ますか?とマリアさんに誘われたが今は断っておいた。
何故なら俺が何もして来ないと思って油断したところでいきなり現れた方が面白い反応が見れそうだろ?(極悪)
こほんっ、冗談(では無い)は置いておいてこの3日間で俺は精神的な疲労を回復させ、リリア達も肉体的な疲労は完全に抜け切っていた。
なら、善は急げという事で明日、次の街へと転移させてもらう手筈となり、俺達は準備を進めている。
「あっ、ユウキくん!あのお店見に行こうよ」
「うん、いいぞ?それより双葉…今日は随分可愛らしい服を着てるな?」
そう、俺は何故か双葉とデートをしていた。
何故こうなったのか…
それは、ダンジョンから抜け出した日の晩に遡る……
あの日、俺はチミっ子軍団を寝かしつけ、久しぶりの夜空を堪能しようとガノン邸の屋根へと登っていると珍しいお客さんが来た。
「あれ、珍しいな?どうしたんだ双葉」
「え、えへへ…久しぶりにお話ししたくて…さっきまではルビーちゃん達にユウキくん取られちゃってたから」
あー、確かに落ち着いて双葉と話せてなかったな。
「そっか…隣座るか?」
「うん、失礼します…」
俺が隣においでと促すと、ちょっと恥ずかしそうに座りピタリと身体を寄せて来る。
「星が綺麗だね…」
「あぁ、そうだね」
ここで、「君の方が綺麗だよ?」なんて臭い台詞の一つくらい言えたら良かったんだろうけど、俺にそんな勇気はない。名前負けしてるな。
「……も、もう!恥ずかしいよぉ…でも、えへへ〜嬉しいな」
「………」
…どうやら口に出していたようだ。
久しぶりにやらかしたぞ!?
「そ、それよりも俺達がいない間は何もなかった?」
「ふふふ、まぁ…何も無かったと言うか…みんなユウキくん達のことが心配でずっと映像に齧り付いてたから…」
俺があからさまに話を逸らそうとしているのに気付いてるのか、可笑しそうに笑いながら話に乗って来てくれる。
なんだか余計恥ずかしい…
「心配かけたよなぁ…まさか、俺たちの行動が見られてるとは思ってなかったよ」
「私も見れると思って無かったからね。しかもガノンさんも予想外の出来事がたくさん起きてたみたいだし…あんまり心配させないで?」
俺の瞳をじーっと見つめながら何処か不安そうに話す双葉を見て俺は後悔した。
俺はみんなを守ると言っておきながら、こんなにも不安に思わせてしまっているのか……
帰って来てからルビー達も俺から離れたがらなかったしな…
俺は自責の念に苛まれたが、そんなものは後回しだ。
今は目の前に居る俺の大切な人を安心させてあげるのが先だろうが!
「双葉…」
「なぁに?って、はぅぅ……」
俺は無意識のうちに双葉を抱きしめていた。
そして……
「急にどうしたの…?も、もしかして!そ、その…は、初めては普通が…もにょもにょ…」
「……?いや、ただ双葉に安心して貰えるように頑張ろうと思って…って、顔赤いけどどうした?」
「な、何でもないよっ!うぅ……ユウキくんのばかっ……」
何故かいきなり罵倒されてしまった俺の頭の中は疑問でいっぱいだったが、とりあえず双葉を後ろから抱きしめるように座り直し、話を続ける。
「双葉、俺さ…みんなに心配ばっかかけちゃってダメダメだよな…」
「そんな事ないよ?ユウキくんが居てくれるおかげで、私は幸せだもん。あっ、でも今回みたいな時は、今度は私を連れてって欲しいかなとも思うけど…わがままかな…?」
「いいや、全然わがままなんかじゃないよ。今度は必ず双葉も一緒に行こう。いや、双葉だけじゃない。みんな一緒だ」
「……そうだね。みんな心配だもん!あっ、そうだ!一つわがまま言ってもいい?」
ん?なんだろう?本当に今日は珍しいな?
「もちろん、双葉のわがままなんて珍しいしな。何でも言ってごらん?」
「えっと…そしたら、この街を出るまでに私と2人でデート行こ?」
迷う素振りもせず、デートに行こう!と言う双葉の瞳は潤んでいた。
なるほど、最初からデートに行きたかったってことか……
やっぱ俺ってダメダメじゃんか……
もちろん俺の答えは決まっている。
「それは行こう!この街を出る前日とかどうかな?」
「わぁ〜っ!うん!うん!絶対だよ?約束だからね?」
「あぁ、約束だ!指切りしとくか?」
「うん♪」
と、こうしてデートの約束をした俺は、双葉を連れ立ってブレインの街を散策しているのであった。
「でも、なんか申し訳ないなぁ…」
「うん?何がだ?」
急に肩を落とした双葉に首を傾げていると、俺の腕に自らの腕を絡ませてぎゅっと側により…
「こうやってユウキくんを独り占めしてる事がだよ?」
と、耳元で囁いて来た。
俺はそんな双葉の仕草に終始ドキドキさせられっぱなしなんだけど……
「ユウキくんユウキくん」
「どうした?」
「えへへ〜、呼んだだけだよっ」
「……勘弁してくれ。死んでしまう」
今日の双葉が可愛すぎて死ぬ!!いや、いつも可愛いんだけどね!?
でもでも、今日は特別やばい!!双葉は俺を殺したいのか!?(錯乱)
「なぁ、双葉?」
「んー?なぁにユウキくん」
俺は意趣返しも込めて双葉を見つめる。
「…?どうしたの?」
「いや、双葉って何でこんなに可愛いんだろうと思ってね」
「ひゃいっ!?」
「特に今日は一段と可愛くて…愛おしくてしょうがないんだけど」
「はぅぅっ!?」
「こんな可愛い子が恋人で俺は世界一の幸せ者だよ」
「ふみゅぅ…」
「双葉…」
「は、はう?」
俺が再び名前を呼ぶと顔どころか全身を真っ赤にさせて双葉が、目を回しながら返事を返してくれる。
呂律が回ってないのもまた可愛い。
そして俺はトドメを刺すことにし、一気に耳元へと顔を寄せ一言。
「愛してるよ…双葉」
「ひゅっ………」
自分で自分が気持ち悪いと思う程の甘いボイスで囁くと双葉は死んだ(生きてる)
目を回してぶっ倒れそうになった双葉を抱き上げ、近くのベンチで休ませる。
もちろん今日は双葉をエスコートすることを忘れていないからな!
膝枕をして目が覚めるまで頭を撫でてあげていると、どう考えても目覚めているのにも関わらず狸寝入りを続ける双葉に苦笑いしつつ…
「おや?こんな所に眠り姫がいるなぁ……仕方ない」
俺はゆっくりと双葉を起き上がらせ、未だに目をギュッと閉じて微動だにしない双葉の唇にそっとキスをする。
「お目覚めの時間だよお姫様?そろそろデートの続きをしようか」
「はぅぅ……幸せすぎる…」
こうして息を吹き返した(?)双葉とデートを楽しんだ俺は、陰からこっそりと覗いていたリリア達にデートの際は同じ事をせがまれるようになったとさ……
次の更新は明日の0時頃になります!
突然の双葉……他の子とのデートも時々散りばめます!




